NEW2018年01月24日

どうして2%?おしえて日銀の物価目標

日銀・黒田総裁が「異次元」の金融緩和を開始してまもなく5年になります。銀行が持っている国債などを空前の勢いで買い取って、世の中にお金をあふれさせる大胆な政策は「黒田バズーカ」とも称されました。何のために? 物価を2%上昇させるためです。…でも、なぜ2%を目指すのでしょうか。今さら聞けないけれど、ざっくり、わかっておきたいと思いませんか?

日銀の2%の物価目標。よく聞くけれど、実は、よくわかりません。

2%くらい物価が上がる世の中が望ましいー。そうなるように、お金の量や金利をコントロールしようというのが、今の日銀の金融政策。そもそも日銀の仕事は、法律で「物価の安定を図ること」と定められているの。今の日銀は2%くらいが「安定した状態」だと考えている、ということ。

いち消費者としては、できれば物価は上がってほしくないです。

それは確かにもっともな指摘。物価が上がりすぎれば生活は苦しくなるしね。

でも、物価がどんどん下がっていくのも問題ね。不況で値下げしてもモノが売れずに、企業の業績が悪化。給料カットやリストラで生活も厳しくなる。しかたないので、もっと値下げしても、やっぱり売れず、業績も給料もさらに落ち込む…。そういう悪循環は、いわゆるバブル景気がはじけたあと、デフレが続いた日本の姿と重なる。

日銀が目指す毎年2%くらい物価が上昇する経済状態というのは、景気は順調で、企業の業績も給料もちゃんと上がる。モノもそこそこよく売れて、結果として物価も上昇する…。そういうイメージを目指していると捉えればいいと思うわ。

でも、そうなっていないんじゃ…。

日銀の黒田総裁は、2013年の就任当初、2年で2%の物価上昇率を達成すると掲げたけれど、まだね。就任当時の物価が下落する状態からは脱したけれども、去年11月の最新データでも物価はプラス0.9%。本人も「残念だ」と話している。

何度も達成時期の見通しを遅らせて、今は2%程度になるのは2019年度ごろといっているわ。日銀が見ている消費者物価(生鮮食品をのぞき、消費税引き上げの影響も考慮)の年度ごとの推移を見ても、この20年余りの間、2%って実は一度も経験したことがないの。

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だったらまず現実的なところに目標を下げたらいいのでは。

そうもできない事情があるの。黒田総裁は「2%の物価目標を変更する必要があるとは全く考えていない」とはっきり明言している。2%はいわば世界共通の目標なの。アメリカのFRB=連邦準備制度理事会や、ECB=ヨーロッパ中央銀行も目標はやっぱり2%を掲げている。

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そんな状況で日銀だけ物価の目標を下げると、実は、円高になる可能性もあるの。なぜかというと…。

○ アメリカは物価が上がる → 1ドルで買えるモノが減る → 1ドルの価値が下がる。でも、○ 日本では物価が上がらず → 100円で買えるモノ同じ → 100円の価値変わらず。となるの。つまり、ドルの価値 < 円の価値になるということ。

その結果、稼ぎ頭の輸出企業が望まない形で、円高を招いてしまうという理屈ね。

でも、延長また延長といつまでも続けられるのかな?

副作用を心配する声は、確かに出始めているわ。銀行の預金金利は、ほぼゼロ。預金者にとって、利息収入をほとんど期待できないまま。その一方で、銀座の地価がバブル期を超え、日銀からあふれ出た緩和マネーが、局地的にバブルのような現象も引き起こしているの。

空前の勢いで国債を買い進めた結果、日銀が保有する国債などの総資産は、およそ3倍に膨らんで500兆円の大台を突破。すでに日本国債の4割を日銀が抱え込んでいるの。しかも、さらに増えていくわ。

今ここで金融緩和をやめるわけにはいかないけれども、「今の調子で続けていけるの?」「物価が2%の水準にほぼ達したとき、元の状態にどうやって戻すの?」 これから日銀と私たちが経験する事態も、まさに「異次元」ずくめになるのは間違いなさそうね。