ロシアを知るための10の基礎知識

国際ニュースの中心に再び躍り出てきたロシア。ネットではプーチン大統領のマッチョな姿や、美しすぎるコスプレイヤー、「おそロシア」なエピソードに関心が集まりがちですが、ロシアはこの10年ほどで大きく姿を変えています。
今月の大統領選挙の前に、さまざまなファクトやデータから「2018年のロシア」を見てみましょう。

①プーチン大統領のほかにも「大統領」はいる

プーチン大統領とタタールスタン共和国の大統領

ロシアの正式名称は「ロシア連邦」。日本に「県」や「道」があるように、ロシアは「州」や「地方」など83の「連邦構成主体」で成り立っています。中には日本よりもはるかに大きな面積の「地方」や、自分たちの地域の「大統領」を選ぶことが許された「共和国」も。4年前、ウクライナ南部のクリミアを併合したことによって、ロシアは連邦構成主体に「クリミア」と「セバストポリ」の2つが新たに加わったと、主張しています。

②地球上の陸地の8分の1はロシア

ユーラシア大陸の北部に位置し、西はヨーロッパ、北は北極海、東は太平洋に囲まれたロシアの面積は、1700万平方キロメートル余り。日本の45倍、アメリカの2倍近くにもなる「世界でいちばん広い国」です。なんと地球上の陸地の8分の1を、ロシアが占めている計算になります。

広大な国土をもつロシアは、隣接する国々と数々の領土問題を抱えてきました。しかしプーチン大統領は、中国やカザフスタンとの領土問題を交渉の末に解決し、2010年にはノルウェーとの間で北極海の大陸棚の境界線を画定。2014年にはエストニアとの国境も画定するなど、領土問題の解決に積極的に乗り出しました。

一方、クリミアを、武力を背景に併合した問題では、国際社会に厳しく非難されているにもかかわらず、一切譲歩しない構えです。ロシアが、外国の政府と「交渉中」と言えるのは、唯一、日本との北方領土問題だけです。

③モスクワはロンドン・パリを上回る大都市

ロシアの人口は2017年現在、1億4300万余りで、世界第9位となっています。1991年、旧ソビエトが崩壊したことで、ウクライナや中央アジア諸国などが独立し、人口は半分に減りました。その後、しばらく大きな増減はありませんでしたが、2014年のクリミア併合によって、ロシアは「人口が200万人余り増えた」としています。

ロシア最大の都市は、首都のモスクワで、人口は1222万とロンドンやパリを上回ります。今では日本のうどんチェーン店もモスクワに進出し、モスクワっ子たちに人気のスポットになっています。

④ロシアのGDPは3年で半分に

 

ロシアのGDP=国内総生産は1兆2831億ドルで、世界第12位(2016年)です。2013年には、2兆2971億ドルだったので、3年でおよそ半減しました。ロシアの通貨ルーブルが急落したことが、ドルに換算したGDPが大きく減る要因となっています。ルーブル安の背景には、原油価格の下落に伴い、石油や天然ガスの輸出に頼ってきた経済に大きな影響が及んだことに加えて、2014年のクリミア併合で欧米諸国などからの経済制裁を受けた影響があります。

国民1人当たりのGDPについても、ルーブル安の影響もあって8945ドルと、日本のおよそ4分の1、中国と同程度の規模にとどまっています。(物価やインフレ率を考慮すると、日本の3分の2、中国の1.7倍ほどの規模になります)。プーチン大統領は2020年代の半ばまでに1.5倍に増やすとしています。

⑤ロシアの「ビリオネア」は69人

金融大手の「クレディ・スイス」が2017年にまとめた「グローバル・ウェルス・リポート」によると、ロシアには資産総額が10億ドルを超える「ビリオネア」が69人いて、アメリカ、中国、ドイツ、香港に次いで5番目の多さです(ちなみに日本人のビリオネアは4人)。ロシアは、上位10%の富裕層が国の富の77%を占めていると言われ、貧富の格差は大きな社会問題となっています。

⑥ロシアの軍事費はアメリカの9分の1

選挙を前に行われた年次教書演説でプーチン大統領は、原子力を動力源にした巡航ミサイルや、マッハ10で飛行する超音速ミサイルなどを紹介し、アメリカへの対抗姿勢を鮮明にしました。

しかし公開されている2016年の情報によれば、実はロシアの軍事費はアメリカの9分の1程度。2014年のクリミア併合や、翌年に始まったシリアへの空爆、最近では北極圏での戦闘を想定した「北極旅団」創設といった「攻め」の政策が、ロシア=軍事大国のイメージを膨らませている側面もあるようです。

⑦「シャープ・パワー」と「ハイブリッド・ウォー」

近年ロシアは、インターネットで海外に情報を発信する国営メディアを強化。これに対して欧米は「ロシアがSNSなどで選挙に介入した」と批判しています。ロシアが、ソーシャルメディアなどを使って世論操作を図り、おととしのアメリカ大統領選挙に干渉した疑い、いわゆる「ロシア疑惑」は、今も米ロ両国間でくすぶり続けています。

外国の世論をインターネットを通じて直接操作したり、当局者や知識層に対する工作を行う外交戦略は従来の「ハードパワー」や「ソフトパワー」と一線を画すものだとして、最近は「シャープパワー」と呼ばれ、欧米では対策の必要性が議論され始めています。

一方、ロシアでは、通常戦力にサイバー攻撃や世論操作、さらに経済的圧力などさまざまな要素を加えた戦争を「ハイブリッド・ウォー」と名付け、安全保障戦略の要に据えています。

⑧ロシア人はビール>ウォッカ

ロシアといえば“ウォッカ”というのは、少し古い常識になりつつあります。1人当たりのウォッカの年間消費量が6.7リットルと、この10年間で半減しているのです。ウォッカの飲みすぎでアルコール依存症になる人も多いことから、ロシア政府は「ウォッカは人口減少の要因の1つ」として、8年前から販売する場所や時間を制限し、安すぎるウォッカを取り締まるといった対策に乗り出しました。ロシアのアルコール市場の現在のトップランナーは、ビールです。1人当たりの年間消費量は53.5リットルと、ウォッカの9倍近くに増えました。

⑨次のサッカーワールドカップはロシア開催

2018年は、サッカーワールドカップがロシアで開催される予定です。「強いロシアの復活」を掲げてきたプーチン政権は、スポーツの国際大会を通じて国際社会に存在感をアピールするとともに、会場の建設や鉄道・空港などのインフラ整備につなげてきました。

オリンピックなどで数多くのメダルを獲得してきたロシアですが、ピョンチャンオリンピックでは、国家ぐるみのドーピングがあったとして、国としての参加は認められませんでした。

それでもOAR=個人資格で出場したロシア出身の選手たちのうち、女子フィギュアスケートでは、15歳のアリーナ・ザギトワ選手が金メダル、18歳のエフゲニア・メドベージェワ選手が銀メダルを獲得し、スポーツ大国としての存在感を改めて示す結果となりました。

⑩78%が「ロシアと日本は友好関係」

メドベージェワ選手も大好きなのが、日本のアニメ。去年のエキシビションにはあの「セーラームーン」の衣装で演技に臨み、「月に代わっておしおきよ!」のセリフとともに決めポーズを披露しました。コスプレのイベントはロシアの地方都市でも盛況を見せるほど広がっています。さらに伝統的な和楽器の演奏や、村上春樹をはじめとする日本文学、和食の人気は「鉄板」と言っていいほどです。

外務省がおととし、ロシア人の日本に対する意識を調べたところ、日本とロシアが「友好関係にある」と答えた人の割合は78%。さらに日本のことを「豊かな伝統と歴史、それに文化を持つ国」と評価する人は84%に上ったそうです。

ことし2018年は日本とロシアの政府が定めた相互交流年。両国で文化行事や経済交流イベントなどが頻繁に開催され、これを機にロシアの若者の日本に対する好感度が、ますますアップすることが期待されています。