まもなく選挙!これまでに何があった?
まずは、選挙戦が本格化してからのこの1年4か月を振り返りたい。
【2019年】
■6月
・トランプ大統領、立候補を正式表明。
■秋ごろ
・民主党候補者選び、本格化。
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■9月
・「ウクライナ疑惑」浮上、弾劾裁判まで発展。
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9月中旬から、徐々にトランプ大統領の支持率が下落。
疑惑に関する連日の報道や、抗議デモの広がりが影響したとみられる。

■10月
・ISの指導者、バグダディ氏がアメリカの特殊部隊の作戦によって死亡。
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【2020年】
■1月
・アメリカ国防総省、イランの革命防衛隊のソレイマニ司令官殺害を発表。
・ニューヨーク株式市場のダウ平均株価、3万ドルに迫る。
・12月の雇用統計発表で、失業率は3.5%、およそ50年ぶりの低い水準となる。
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「ウクライナ疑惑」以降、下落していたトランプ大統領の支持率が、好調な経済を背景に上昇傾向に転じる。
■2月
・「ウクライナ疑惑」弾劾裁判で、無罪評決。
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・大統領選挙の候補者選び初戦、アイオワ州党員集会の集計トラブルで混乱。
・新型コロナウイルスの感染拡大。
■3月
・ニューヨーク株式市場でダウ平均株価が歴史的な値下がりを記録。
新型コロナウイルスの感染が広がり始めた当初、株価の値下がりや、新型コロナウイルスに関して楽観的な発言を繰り返したことで、支持率は最低水準に。
しかし、3月下旬、連日のように記者会見を行ったことが功を奏したのか、支持率が上昇し、4月1日には過去最高の47.4%を記録。
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■5月
・中西部ミネソタ州で、黒人男性ジョージ・フロイド氏が白人の警察官に押さえつけられて死亡。抗議デモ広がる。
・新型コロナウイルスの感染拡大は、経済活動に影響を及ぼし、4月の失業率は14.7%となり、統計開始以来、最悪の水準に。
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■7月
・トランプ政権、WHOから来年7月に脱退と国連に通知。
経済への影響や抗議デモの広がりを受けて、トランプ大統領の支持率は下落したとみられる。

■8月
・共和党候補にトランプ氏、民主党候補にバイデン氏、正式指名。
・イスラエルとUAE=アラブ首長国連邦の国交正常化発表。
■9月
・最高裁判所判事、ギンズバーグ氏死去。
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■10月
・トランプ大統領が新型コロナウイルスに感染。
・ミシガン州知事の拉致を共謀して企てたなどとして、13人を訴追。
・連邦最高裁判所の判事にバレット氏が承認される。
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トランプ大統領が、早期の経済活動を訴えたほか、抗議デモでは、一部の略奪や暴力行為を「国内のテロ行為だ」と強く非難したり、「法と秩序」を訴えたりして、支持率が上昇。

選挙戦が本格化してからのこの1年4か月。
振り返ると、経済や社会、世界情勢に大きな影響を与える出来事がいくつも起きた。
そして、その時々の情勢でトランプ大統領の支持率も上下した。
劣勢と言われるが、世論調査を見ると…
今回の選挙では、全米の世論調査の平均値で、野党・民主党のバイデン前副大統領がトランプ大統領を一貫してリードしている。
選挙に大きな影響を与えるとみられるのが、「郵便投票の拡大」と「それに伴う期日前投票の増加」だ。
新型コロナウイルスの感染が収まらない中、今回、すべての州で、郵便投票が実施される。
西部オレゴン州やカリフォルニア州など10州と首都ワシントンでは、有権者登録を行ったすべての人に、事前に投票用紙が送付されている。
これを受けて、10月29日の時点で、全米で8000万人がすでに投票を済ませた。
投票率が上がるとみられていて、そうなると、バイデン氏にとって有利になるという指摘もある。
ではトランプ大統領の再選の可能性はないのだろうか。
歴史的にアメリカ大統領選挙では、現職が有利だと言われてきた。
第2次世界大戦後の選挙で敗れた現職は、10人のうち3人。再選率は70%に上る。
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アメリカの政治情報サイト「リアル・クリア・ポリティクス」によると、10月29日時点の全米を対象にした世論調査の支持率の平均値は、トランプ大統領が43.7%、バイデン氏が51.1%。その差は7.4ポイント。
しかし大統領選挙は得票数ではなく、各州に割りふられた選挙人を獲得した数によって決まる。
そこで勝敗を決するといわれる激戦州の世論調査を見てみると、全米を対象にした調査の数字よりもその差が小さいことが分かる。
(いずれも10月29日時点)
■東部ペンシルベニア州
トランプ:45.8%(-3.2ポイント)
バイデン:49%
■南部フロリダ州
トランプ:46.9%(-1.6ポイント)
バイデン:48.5%
■南部ノースカロライナ州
トランプ:47.6%(-0.6ポイント)
バイデン:48.2%
■中西部ウィスコンシン州(28日)
トランプ:43.9%(-6.4ポイント)
バイデン:50.3%
■中西部ミシガン州
トランプ:43.5%(-6.5ポイント)
バイデン:50%
■西部アリゾナ州
トランプ:47%
バイデン:47%
6つの激戦州の世論調査の平均値は、いずれも全米平均よりも差が小さい。
調査機関によっては、トランプ大統領がリードしていると分析しているところもある。
トランプ勝利の可能性はあるのか?
トランプ大統領の再選を目指す共和党が注目していることが2つある。
① 激戦州の有権者登録の増加
アメリカでは、選挙で投票するためには、地元の選挙管理委員会に申請して「有権者登録」を行う必要がある。
そして、その際に支持政党を明確にする必要があるところもある。
データを見ると、6つの激戦州のうち3つの州で、民主党支持者より共和党支持者の登録が増えていることが分かった(ウィスコンシン州とミシガン州は、データなし)。
例えば、ノースカロライナ州。

(2020年10月3日時点)
■共和党支持者:217万1498人
■民主党支持者:257万4523人
これだけを見ると、民主党支持者のほうが多いように見える。
しかし、前回2016年の同時期のデータと比べると、共和党のほうが増えていて、民主党支持者が減少している。
■共和党支持者:203万9585人(+13万1913人)
■民主党支持者:268万4243人(-10万9720人)
現地メディアは、共和党の有権者登録の増加について、新型コロナウイルスの感染拡大の中でもトランプ陣営が戸別訪問を行った効果だと分析している。
そして、共和党はこの動きが逆転への1つの鍵になるとみている。
ただ、民主党側は全体の有権者登録数では民主党のほうが多かったり、若い人たちの多くは支持政党なしとして登録しているとして、情勢を大きく変えるような事態にはならないと分析している。
② ヒスパニック系の支持層
共和党が注目しているもう1つのデータは、ヒスパニック系やラテン系でのトランプ大統領の支持率だ。
アメリカでは、ヒスパニック系の有権者が年々増えていて、その動向が重要になってきている。共和・民主ともに取り込みたいと重要視している層だ。
これまで、共和党は民主党に比べて黒人やヒスパニック系のマイノリティー層の支持の広がりに欠けるとされ、こうした層の支持拡大に躍起になっている。
ヒスパニック系にはカトリック信者が多いとして、人工妊娠中絶などをめぐるトランプ大統領の保守的な政策が賛同を得られると考え、大統領を支持するヒスパニック系の団体、「Latino for Trump」などが、戸別訪問や電話での呼びかけといった草の根の活動を展開している。
陣営もツイッターなどでヒスパニック層へのアピールに特化したスペイン語のメッセージを発信している。

一方、最新のデータからはバイデン陣営は前回4年前の選挙に比べ、ヒスパニック層の支持固めに苦戦している様子もうかがえる。
世論調査機関の「ピュー・リサーチセンター」によると、前回の選挙の出口調査では、ヒラリー氏に投票したヒスパニック系は66%だったが、10月時点で、バイデン氏の支持は63%となっている。
ヒスパニック層の全米の支持は、トランプ大統領29%、バイデン氏63%。
ただ、NBCなどが9月に発表した調査では、フロリダ州内の支持はトランプ大統領50%、バイデン氏46%という数字もある。
キューバや中南米の国々から移住してきたヒスパニック系やラテン系の人が多く暮らし、社会主義に根強い警戒感を持っていることから、社会主義を敵視するトランプ大統領の訴えが響いているのではないかという分析もある。
4年前、世界中が驚いたトランプ大統領の大逆転勝利。
それ以来、トランプ大統領は良くも悪くも次々に“サプライズ”を繰り広げてきた。
大統領選挙ではどのような“サプライズ”が待っているのだろうか。