6人に1人が苦しむ学生ローン
大統領選挙の争点の1つが教育。
とりわけ、学生ローンは若者だけの問題ではなく、中高年になっても返済に苦しんでいる人が多く、社会問題となっている。
ニューヨーク連邦準備銀行によると、2017年にアメリカ国内で学生ローンを抱えた人は約5000万人と、国民の6人に1人を占めた。
返済額が10万ドル(約1080万円)以上の人は200万人、20万ドル(約2160万円)以上の人も60万人に上り、全体の負債額は2018年には日本円で170兆円以上に膨れ上がり、毎年高い伸びを示している。
学生を味方につけたい民主党
トランプ大統領も前回の大統領選挙の際、大学の学費を抑えるなどとしてこの問題を重視する姿勢を強調。
しかし民主党の候補者たちは、これまでの取り組みは不十分だとして攻勢を強めている。

例えばサンダース氏は、学生ローンを全額免除し、公立大学の無償化を目指すとしている。
ウォーレン氏は、富裕層への増税によってローンの免除を実現するとしている。
バイデン氏は、短期大学を無償化すると公約に掲げている。
教職員も不満
また、教職員の間で不満が広がっているのが、トランプ政権による教育予算の削減だ。
この中には州への補助金も含まれ、税収が少ない州には打撃となっている。
こうした中、各地で教職員が立ち上がっている。

去年10月、中西部イリノイ州・シカゴで、2万5000人以上が11日間にわたるストライキを決行し、待遇の改善を訴えた。
具体的には
- 賃金アップ
- 生徒に目配りできるよう1クラス当たりの定員縮小
- 図書館員や保健室の看護師の増加
などだ。
ストライキの多くは、共和党が議会の過半数を握っている州で起きている。
共和党は伝統的に「小さな政府」を志向し、減税を重視する一方、その陰で教育費が削られてきた経緯がある。
「自腹」で教材買う教師たち
教師たちは学校の本や消耗品などの教材を買うのに「自腹を切る」ことを余儀なくされているほか、州によっては学校近くの家賃の高い住宅に住むことが義務づけられているという。
アルバイトをして生計を立てている教師も多く、「生活できない」という悲痛な声も聞かれる。
教師は「1人で(生徒の保護者を含め)10人以上の票を持つ」と指摘する選挙分析の専門家もいるほど、大きな影響力があると言われる。
民主党の候補者たちは、教職員の待遇改善を訴えるとともに、その集票力にも期待をかけている。
(国際部記者 岡野杏有子)