医学・生理学賞

山中伸弥さんって どんな人?

体の組織や臓器になる“夢の細胞”を作った

日本人のノーベル医学・生理学賞受賞は、1987年に利根川進さんが受賞して以降、20年余りありませんでしたが、2012年に京都大学教授の山中伸弥(やまなか・しんや)さんが25年ぶりに受賞しました。

山中さんは、さまざまな組織や臓器になるiPS細胞(あい・ぴー・えす・さいぼう)を作り出したことで知られていますが、受賞の理由となったのは「細胞の初期化」です。

ヒトや動物の体は、1個の受精卵が分裂を繰り返して臓器や組織になっていきます。

そして、臓器や組織の細胞はいったん役割が決まってしまうともう受精卵のような状態にはならないと考えられてきました。

ところが、山中さんがマウスを使った実験で、皮膚の細胞の核に、ある4つの遺伝子を入れると、受精卵のような細胞にリセット、「初期化」されることを示しました。

それまでの生命科学の常識を覆したのね。

こうして初期化された細胞がiPS細胞で、ほんとうに受精卵のように、体のあらゆる組織や臓器に変わることができます。

山中さんはヒトのiPS細胞を作ることにも成功し、いまではiPS細胞を治療に生かすための研究が行われています。

国際放送局(元科学文化部)

石坂 冴絵(いしざか さえ)

平成20年入局、初任地の京都局でiPS細胞などを取材。
千葉局を経て、平成26年から科学文化部で医療担当。大村智さんがノーベル医学・生理学賞を受賞した際には、スウェーデン・ストックホルムで授賞式などを取材。