平和賞

ことしの注目
スベトラーナ・チハノフスカヤさんとは

独裁的な政権と対じして民主化や人権の保護を訴える

ことしノーベル平和賞の受賞に向けて期待が高まっているのが、「ヨーロッパ最後の独裁者」とも呼ばれるベラルーシのルカシェンコ大統領に対する抗議運動を率いる、スベトラーナ・チハノフスカヤ氏(39)です。

ベラルーシの反政権派のリーダーとして知られるチハノフスカヤ氏ですが、実は去年(2020年)8月のベラルーシ大統領選挙に立候補する予定だった夫が警察に拘束されたため、代わりに立候補したのが、政治の道に入るきっかけでした。

2児の母親でこれまで政治経験はなかったものの、大統領選挙に勝利したら、政治犯を解放し、半年後に公正な選挙を行うとした公約が市民の心をつかみ、ベラルーシでは異例となる数万人規模の集会を各地で開催するなど、大きな影響力を発揮します。

選挙の結果、チハノフスカヤ氏の得票率が10%にとどまったと発表されると、チハノフスカヤ氏の支持者たちは「選挙に不正があった」として大規模な抗議デモを展開。

ルカシェンコ政権の治安部隊と激しく衝突し、ベラルーシ全土に混乱が広がり、チハノフスカヤ氏は、身に危険が及ぶとして安全を確保するため隣国のリトアニアに活動の拠点を移しました。

そしてSNSなどでルカシェンコ政権に対する抗議運動の継続を呼びかけるとともに、人権や民主化の問題に理解が深いEU=ヨーロッパ連合やアメリカにベラルーシの反政権派を支援するよう訴えてきました。

こうした活動は欧米の政治家や国民を動かし、去年10月には、ヨーロッパ議会が人権擁護に貢献した人に贈る「サハロフ賞」を受賞しています。

ルカシェンコ政権が、ことし5月に反政権派のジャーナリストを拘束するため旅客機を強制的に着陸させたり、東京オリンピックに出場するため来日した陸上女子の選手に圧力をかけたりするたびに、チハノフスカヤ氏は鋭い批判を展開。

独裁的なルカシェンコ政権と対じし、ベラルーシの自由や人権を求める象徴として、国際社会で広く認められるようになりました。

チハノフスカヤ氏がノーベル平和賞を受賞すれば、ベラルーシだけでなく、その後ろ盾となっているロシア、さらには世界中の強権的な長期政権に対して、民主化や人権の保護をうながすメッセージになるとみられ、受賞への期待が高まっています。

ウラジオストク支局長
兼サハリン事務所長

高塚奈緒(たかつか なお)

2010年入局。北見局、旭川局、国際部を経て、2021年から現職。
ロシアや旧ソビエト諸国を担当。