平和賞

ことしの注目 イリハム・トフティさんとは

ウイグル族など中国の少数民族の人権を守ろうとしています

ことしのノーベル平和賞の候補の1人とされているのが、中国の少数民族、ウイグル族の人権擁護に取り組み、中国政府の民族政策を批判したことで収監された研究者、イリハム・トフティ氏(51)です。

自身もウイグル族のイリハム氏は、中国・北京の中央民族大学で経済学を教えながら、長年にわたってウイグル族など中国の少数民族の人権擁護の活動に取り組み、漢族との融和や相互理解を訴えたほか、ウェブサイトなどを通じて、新疆ウイグル自治区の実情を国内外に発信していました。

そうした中、テロ対策を名目に締めつけを強める中国政府の民族政策を厳しく批判したイリハム氏は、2014年に中国当局に拘束されました。

その後、国家の分裂を図った罪で無期懲役の判決を受け収監されましたが、アメリカやEU、それに国際的な人権団体などが中国政府の対応を批判し、速やかな釈放を求めています。

イリハム氏の活動は欧米では高く評価されていて、おととし(2019年)には、EU=ヨーロッパ連合の議会が、人権擁護に貢献した人に贈る「サハロフ賞」に選ばれ、フランスで行われた授賞式では、本人に代わってアメリカ在住の娘が賞を受け取りました。

イリハム氏がノーベル平和賞を受賞すれば、中国人としては11年前(2010年)、服役中に受賞した劉暁波(りゅう・ぎょうは)氏以来です。

中国におけるウイグル族の人権問題をめぐっては、民族などの集団を破壊する意図をもって危害を加える「ジェノサイド」が続いているとして、欧米などが批判を強めているのに対し、中国政府は悪意のあるねつ造だなどと強く反発しています。

また、来年冬の北京オリンピックの開催をめぐっても、新疆ウイグル自治区などの人権問題を理由に世界各地のおよそ180の人権団体が連名で各国政府にボイコットを呼びかけるなど、波紋が広がっています。

イリハム氏がノーベル平和賞を受賞すれば、中国政府に少数民族の人権擁護を求める強いメッセージになると見られます。

国際部 記者

建畠 一勇(たてはた かずお)

2011年入局。宮崎局、和歌山局、大阪局を経て、報道局国際部に。
大学時代に中国を旅する。無類のパンダ好き。