平和賞

ことしの注目 「国境なき記者団」とは

世界各地で正しい情報がきちんと伝わっているか監視しています

毎年ノーベル平和賞の受賞者を予想しているノルウェーの「オスロ平和研究所」がことしの受賞者の候補に挙げているのが、世界のジャーナリストの権利を守る活動をしている「国境なき記者団」です。

フランスのパリに本部を置く「国境なき記者団」は、1985年に4人のジャーナリストによって設立されたNGOで、130か国のジャーナリストの国際的なネットワークを持っています。

毎年、各国での報道の自由度に関する分析を発表しているほか、政府によって報道の自由が侵害されていないかを監視しています。

「オスロ平和研究所」はノーベル平和賞の候補としている理由として、ことし1月、アメリカの大統領選挙の結果に不満を持つトランプ前大統領の支持者らがアメリカの連邦議会議事堂に乱入して死傷者が出た事件について「誤った情報がまん延したことが事件の背景にある」として、民主主義を守り社会の対立を解決するためには人々が正しい情報にアクセスすることが求められていると指摘しました。

また、新型コロナウイルスの感染が世界的に広がった去年(2020年)、「国境なき記者団」は、中国や中東のヨルダンなど少なくとも38の国で政府の意向に沿わない報道に圧力をかけるため、当局が検閲を行ったり記者を拘束したりしたと指摘し、国連に具体的な対応を求めました。

さらに最近では、アフガニスタンでイスラム主義勢力タリバンが実権を握ったことを受け、100人以上のジャーナリストが自身や家族への抑圧を恐れ身を隠さざるをえない状況に追い込まれていると報告し、「報道の自由が危機的状況にある」として、国際社会に支援を呼びかけました。

「国境なき記者団」がノーベル平和賞に選ばれれば、世界の紛争地や強権的な体制のもとでも報道の自由を守り正しい情報を発信する重要性を訴える、強いメッセージになるとみられます。

国際部 記者

山本健人(やまもと けんと)

2015年入局。初任地・鹿児島局を経て国際部。
幼少期にスペイン領カナリア諸島で育つ。離島めぐりが趣味。