経済学賞

経済学賞はノーベル賞ではない?!

ノーベル経済学賞は、実は、厳密にはノーベル賞ではありません。正式には「アルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン国立銀行賞」といいます。

ほかの5つの賞はアルフレッド・ノーベルの遺言に基づいて1901年から授賞が始まりましたが、経済学賞が始まったのは1969年からです。スウェーデン国立銀行が設立300年を記念して賞を提案し、設立されました。

ほかの賞と成り立ちは違いますが、選考は物理学賞や化学賞と同じ、スウェーデン王立科学アカデミーが、前の年の9月からおよそ1年かけて行います。

世界中の大学の教授や過去の受賞者など、およそ3000人に推薦状を送りふさわしい人物をあげてもらいます。

そして、推薦のあった人の中から250人から350人の候補者を選び、絞り込みが始まります。最終的に科学アカデミーのメンバーが多数決で受賞者を決めます。

ノーベル経済学賞は、経済活動を数式などを用いて理論的に説明したり、新たな実証研究の手法を切り開いたりした経済学者などにあたえられます。国全体の経済活動をテーマにした「マクロ経済学」、家計や企業の意思決定の仕組み、市場価格の変動などを研究する「ミクロ経済学」、経済学の理論に統計学の方法を用いて分析する「計量経済学」といった研究分野に加え、心理学的な要素を取り入れた「行動経済学」など、比較的新しい分野などにも賞が贈られています。

ノーベル経済学賞は、去年(2020年)までに86人が受賞しています。

近代経済学の第一人者といわれたアメリカのポール・サミュエルソン氏、新自由主義やマネタリズムの考えを押し広げたミルトン・フリードマン氏など、著名な経済学者のほか、「ゲーム理論」で知られるアメリカの数学者、ジョン・ナッシュ氏ら経済学者以外も受賞しています。

これまでで最年少は、おととし(2019年) 46歳で受賞したアメリカのマサチューセッツ工科大学のエスター・デュフロ氏です。

ただ、歴代の受賞者の大半は、アメリカやイギリスの有名大学の出身者で占められ、50人以上がアメリカ国籍をもつ学者です。

アジア出身の受賞者は、いずれもインド出身で1998年に受賞したアマルティア・セン氏と、おととし(2019年)受賞したアビジット・バナジー氏の2人です。

経済部 記者

渡邊 功(わたなべ いさむ)

平成24年入局 和歌山局から報道局経済部
国交省、外務省、銀行業界を担当。