これもノーベル化学賞?!
きゅうりの塩もみ
そこには生き物の大切な仕組みがありました
料理で使う「きゅうりの塩もみ」に、熱中症対策で飲む「塩分が入った飲料水」、ふだんの生活で当たり前のように使われていますが、こんなところにもノーベル化学賞を受賞した研究テーマが関係しています。それが「浸透圧」です。
この「浸透圧」の仕組みを解明したことで、1901年、オランダの化学者、ヤコブス・ヘンリクス・ファント・ホッフが栄えある第1回ノーベル化学賞を受賞しました。
例えば塩水とただの水を、水だけを通す特殊な膜で隔てると、何もしなくても水が塩水の方にしみ出していって、塩水を薄めようとします。この力のことを「浸透圧」と呼びます。
キュウリやナスを塩もみしたり、「青菜に塩」ということわざがあるように、野菜に塩をまぶしたりすると野菜はしんなりとします。
これは野菜の中の水分が浸透圧によって外にしみ出してきたからなんです。
浸透圧は私たちの体の状態を保つのに非常に重要なのよね。
気温が高いとき、熱中症対策として塩分が入った飲料水を飲みますよね。あれは塩分補給の意味もありますが、浸透圧をそろえるという意味もあるんです。
私たちの細胞や血液の中には塩分をはじめ、重要な成分がたくさん溶け込み、一定の濃度を保つことで生命活動を維持しています。
ところが、ただの水だけをたくさん飲んでいると、細胞や血液の中にどんどん水だけが入ってしまい、濃度が薄まってしまうのです。細胞の中の濃度が薄まるとけいれんなどが起こってしまいます。
ちなみに余談ですが、「ナメクジに塩をかけると水分が体内から出て死んでしまう」のも「浸透圧」の力です。
科学文化部
鈴木 有(すずき ある)
平成22年入局。初任地の鹿児島放送局では、島嶼部の人口減少問題や種子島のロケット取材などを経験。平成27年から科学・文化部で文部科学省を担当。科学、宇宙分野を取材したのち、現在はサイバー分野を担当しています。