平和賞

ことしの注目 アーダーン首相ってどんな人

差別や偏見を許さない強いメッセージを世界に発信

去年に続き、ことしもノーベル平和賞の候補として注目されているのが、ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相(40)です。

3年前に行われた議会選挙で政権交代を実現し、37歳の若さで首相に就任。就任の数か月後には妊娠を公表し、出産後には現役の首相として世界で初めて産休を取得して話題となりました。

アーダーン首相がノーベル平和賞の候補として注目されるようになったきっかけは、去年3月、南部クライストチャーチでイスラム教のモスクが過激な白人至上主義の思想を持つ男に銃撃され、51人が死亡した事件です。

事件が発生した直後、アーダーン首相は遺族と面会した際、スカーフで髪を覆ってイスラム社会への敬意を示し、信者の安全の確保と信仰の自由を守ることを約束。さらに、宗教や民族の違いを超えた連帯を国民に呼びかけ、国内外から高く評価されました。

また、凄惨な事件の様子を撮影した動画がSNSで拡散されたことを受けて、暴力的な思想や動画の投稿を排除するための対策を広く国際社会に呼びかけています。

事件の2か月後に開かれた国際会議では、各国政府とSNSの運営会社が暴力的な動画をネット上から排除するための法律や体制を整備することを確認した「クライストチャーチ宣言」が採択されています。

また、国内では、銃規制を強化するとともに政府による銃の買い取りを進め、これまでに6万丁以上を回収しました。

新型コロナ対応でも注目されています

アーダーン首相は、新型コロナウイルスへの対応においても、早い段階から入国規制の強化や外出制限などの厳しい措置に踏み切り、感染の抑え込みに一定の成果をあげたとして世界から注目されました。

アーダーン首相がノーベル平和賞を受賞すれば、性別や民族、宗教の違いを超えて互いを尊重することの大切さとともに、社会の分断をもたらしかねない事件や感染症に立ち向かう国のリーダーに求められる姿勢を、世界に伝えるメッセージとなりそうです。

シドニー支局長

青木 緑(あおき みどり)

2010年入局。釧路局、サハリン事務所、国際部などをへて2020年8月からシドニー支局。
オーストラリア、ニュージーランド、南太平洋島しょ国を担当。