平和賞

ことしの注目 スーダンのアラアさんとは

民主化と女性の権利を守ることを訴えています

ノーベル平和賞の候補として注目されているのが、アフリカ、スーダンの女性活動家、アラア・サラーさんです。

アラアさんの名前が世界に知れ渡ったのは、去年4月(2019年)、スーダンで「独裁者」とも批判された当時のバシール大統領が、軍によるクーデターで失脚した時のことでした。

そのきっかけとなった反政府デモで、アラアさんは自ら先頭に立ち、30年にわたって権力の座についていたバシール大統領を批判し、変革を訴えました。

デモには大勢の女性が参加し、なかでも、スーダンの伝統的な衣装「トーブ」を身にまとい、車の屋根の上に立って演説するアラアさんの姿をとらえた写真が、SNS上で広がり、「革命の象徴」などと呼ばれるようになりました。

アラアさんは去年10月、女性たちの代表として国連の安全保障理事会に招かれ、演説しました。

アラアさんは「30年にわたって、女性の権利は規制されてきました。もし、和平交渉の場に私たち女性がいなければ、女性の権利は保障されないでしょう」と述べ、民主化を進める上で女性が主体的に関わることの重要性を訴えました。

バシール大統領の失脚後、スーダンでは、軍と民主化勢力が共同で統治を行うための新たな統治機構が発足し、女性の権利を認める社会へと少しずつ変わろうとしています。

スーダンではこれまで、女性がズボンをはくことや、男性の前で踊ることなどが法律などで禁止され、女性の行動が厳しく制限されていましたが、去年、こうした法律は廃止されました。

また、ことし7月に改正された刑法では、女性の性器を切り取るFGMと呼ばれる慣習が罰則付きで禁止され、女性の権利擁護を訴えてきた団体から評価する声があがっています。

アラアさんをはじめとする女性たちの活動が正しく評価され、女性の権利が尊重される社会を実現することができるのか。スーダンは、今まさに岐路に立っています。

アラアさんがノーベル平和賞を受賞すれば、その大きな後押しになることは間違いなく、世界各地の苦しむ女性たちを勇気づけることにつながります。

カイロ支局 記者

柳澤 あゆみ(やなぎさわ あゆみ)

秋田局、仙台局、国際部を経てカイロ駐在。
中東やアフリカの女性が直面する問題を継続して取材。