平和賞

ことしの注目 香港民主化運動

ことしのノーベル平和賞の候補ではないかと注目されているのが、香港の民主化運動に参加した市民や団体です。

香港では去年6月、容疑者の身柄を中国本土に引き渡せるようにする条例の改正に反対する市民の大規模なデモが起きました。

このうち6月16日に行われたデモには、主催者の発表で、香港に住む人の4人に1人にあたるおよそ200万人が参加し、1997年に香港が中国に返還されて以来、最大規模のデモになったとみられています。

その後も抗議活動は続き、香港政府は、去年9月、条例の改正案の撤回を表明しました。(写真は2019年8月16日の抗議活動)

一連の活動にカリスマ的なリーダーはおらず、デモに参加した人の多くがSNSでつながった若者たちでしたが、6年前(2014)、香港の民主的な選挙を求める抗議活動、いわゆる「雨傘運動」を率いたメンバーが、国際社会への支援を訴えるなど大きな役割を果たしました。

6年前の抗議活動は、警察が催涙弾を発射して抑え込もうとした際、雨傘を持って抵抗したことから、「雨傘運動」と呼ばれるようになりました。

この雨傘運動を率いた学生団体の当時の幹部で、去年から続く抗議活動でも積極的な役割を果たした羅冠聡(ら・かんそう)氏(27)や、黄之鋒(こう・しほう)氏(23)らが、雨傘運動から今までの活動を総合的に評価され、ノーベル平和賞の候補になっているのではないかという見方もあります。

彼らが受賞すれば、香港出身者としては初めてで、中国人としては10年前(2010)、服役中に受賞した劉暁波(りゅう・ぎょうは)氏に続く受賞となります。

香港では、ことし6月に、反政府的な動きを取り締まる香港国家安全維持法が施行され、言論や集会の自由などが一段と制限されるようになり、国際社会の批判が高まっています。

こうした国際社会の反応に中国政府は神経をとがらせていて、ことし8月には、中国の王毅外相が訪問先のノルウェーで行った記者会見で、平和賞を政治的に利用しないよう強くけん制しています。

今回、香港の民主化運動がノーベル平和賞を受賞すれば、中国政府や香港政府に民主化を促す強いメッセージになるとみられます。

国際部 記者

建畠 一勇(たてはた かずお)

2011年入局。宮崎局、和歌山局、大阪局を経て、報道局国際部に。
大学時代に中国を旅する。無類のパンダ好き。