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2020年ノーベル平和賞授賞式
WFP=世界食糧計画が受賞

2020年のノーベル平和賞の授賞式が12月10日、行われ、平和賞を受賞したWFP=世界食糧計画のビーズリー事務局長は「世界で2億7000万人が飢餓に向かっている」と述べて現状に強い危機感を示し、国際社会にさらなる支援を呼びかけました。

2020年のノーベル平和賞には、世界各地で食糧支援を行う国連機関のWFPが選ばれ、授賞式は現地時間の12月10日午後1時、日本時間の12月10日午後9時から始まりました。

授賞式は例年、ノルウェーの首都オスロに受賞者を招待して開かれますが、2020年は新型コロナウイルスの影響で、イタリアの首都ローマにあるWFPの本部でメダルと賞状が渡され、その中継映像がオンラインで公開されました。

受賞のスピーチでWFPのビーズリー事務局長は「食糧を通じて飢餓と闘い、平和と安定をもたらす私たちの仕事を認めてくれたことを感謝したい」と述べました。

また、現状について「世界で2億7000万人が飢餓に向かっている」と強い危機感を示し「世界中の多くの友人や指導者が『あなたは何百万人の命を救う世界で最もすばらしい仕事をしている』と言うが、私は、救った子どもたちのことではなく救えなかった子どもたちのことを考えて泣きながら寝る」と述べました。

そのうえでビーズリー事務局長は必要な支援がなければ「どの子が生きてどの子が死ぬかを決めなければならない」と訴え国際社会にさらなる支援を呼びかけました。

イエメンの人々の命つなぐWFP

ノーベル平和賞を受賞するWFP=世界食糧計画が真っ向から立ち向かう課題の1つは紛争がもたらす飢餓です。

その最前線、中東のイエメンでは、政権側と反政府勢力との間で5年以上にわたる泥沼の内戦によって農業生産が落ち込み、物流が寸断されるなどして深刻な食糧難に陥り、「世界最悪の人道危機」と言われています。

そのイエメンでWFPは1300万人に食糧支援を行っています。

国連が12月3日に発表した試算では、国民の半数に当たる1600万人余りが飢え、このうち4万7000人が特に危機的な状況にあると警鐘を鳴らしています。

イエメン中部にある国内最大規模の「ジュファイナ・キャンプ」には戦闘を逃れたおよそ4万人が身を寄せ、WFPが食糧支援を行っています。

このキャンプで家族10人と逃れているイブラヒム・ジャドゥルさん(68)です。

イブラヒムさんは西部ホデイダ県の小さな町に住み、農場で働いて生計を立ててきましたが、食糧や燃料の補給港があるホデイダ県をめぐって両勢力による奪い合いの戦闘が激しくなり、2019年10月、故郷から260キロ離れたキャンプに避難して以来、簡易テントで過ごしています。

WFPからは月に1度、小麦や豆、砂糖や塩などの食糧を受け取っていますが、野菜や乳製品などの生鮮食料品は価格が高騰していて、買うことができないといいます。

このため家族の栄養不足は深刻な状況で、イブラヒムさんの手足は痩せ細り、3人の幼い孫たちはWFPから支給されている栄養剤に頼っています。

イブラヒムさんは「WFPの支援は本当にありがたいが、これだけでは足りないのも現実です。ただ、お金もなく、自分たちでは入手できません。幸せな生活を送ってきたのに、戦闘ですべてを失いました」と話していました。

WFPイエメン事務所のアナベル・シミントンさんは「イエメンの人たちの栄養状態はさらに悪化している。国際社会には、ノーベル平和賞をきっかけに、イエメンが置かれている厳しい現実にもっと目をむけてほしい」と支援を呼びかけています。