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2023年のノーベル物理学賞に、「アト秒」で光出す手法を開発した米欧の研究者3人

2023年のノーベル物理学賞に「アト秒」と呼ばれるきわめて短い時間だけ光を出す実験的な手法を開発し、物質を構成する細かな粒子の1つ、「電子」の動きを観察する新たな研究を可能にした、欧米の大学の研究者3人が選ばれました。

スウェーデンのストックホルムにあるノーベル賞の選考委員会は、日本時間の2023年10月3日午後7時前、2023年のノーベル物理学賞の受賞者に
・アメリカのオハイオ州立大学のピエール・アゴスティーニ教授
・ドイツのルートヴィヒ・マクシミリアン大学のフェレンツ・クラウス教授
・スウェーデンのルンド大学のアンヌ・ルイエ教授
の3人を選んだと発表しました。

ルイエ教授は、希ガスに波長が長く強い光を当てると、波長が短い光が発生することを発見しました。

この現象をもとに、アゴスティーニ教授は、実験で、「アト秒」というきわめて短い時間だけ続く光を連続的に発生させることに成功し、クラウス教授はさらにこの光をカメラのフラッシュのように1回だけ発生させて、利用しやすくすることに成功しました。

アト秒は、100京分の1秒というきわめて短い時間です。

3人の研究によって「アト秒」の光が利用できるようになったことで、極めて素早く動き回っている「電子」の動きも、写真を撮るように記録して観察できるようになりました。

3人を選んだ理由についてノーベル賞の選考委員会は「以前は観察することができなかった非常に速い動きについても研究することができるようになった。私たちはいま、電子の世界へのとびらを開くことができる。次のステップは、電子を利用することだ」として今後、電子工学や医学の分野で応用の可能性があると評価しています。

選考委員会
「私たちは電子の世界へのとびらを開くことができる」

ノーベル賞の選考委員会は3人の功績について「以前は観察することができなかった非常に速い動きについても研究することができるようになった」としています。

その上で「私たちはいま、電子の世界へのとびらを開くことができる。次のステップは、電子を利用することだ」として今後、電子工学や医学の分野で応用の可能性があると評価しています。

ルイエ氏「感動してうまく話せません」

ノーベル物理学賞に選ばれた3人のうちの1人、スウェーデンのルンド大学のルイエ教授はノーベル賞の選考委員会との電話でのインタビューで「授業の途中で連絡を受け、知りました。その後、授業に集中するのが難しかったです。感動してうまく話せません。受賞することができてとてもうれしいです」と話し喜びをあらわにしました。

また、今回の研究成果の可能性について問われると「1つは電子の性質を理解するなど基礎的なことです。もうひとつは実用的なことでこの技術は半導体産業などで役立ち実用化されつつあるということです」と説明しました。

さらに「私は80年代の終わりからこの分野に魅了され、何年にもわたって研究を続けてきました。いまでも研究が進んでいてだからこそおもしろいです」と話していました。

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