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2023年ノーベル賞 10月2日-9日に発表
注目される日本の研究者は

ノーベル賞は、ダイナマイトを発明したスウェーデンのアルフレッド・ノーベルの遺言に基づいて、「人類に最大の貢献をもたらした人々」に贈られます。

2023年の受賞者の発表は、10月2日が生理学・医学賞、10月3日が物理学賞、10月4日が化学賞、10月5日が文学賞、10月6日が平和賞、10月9日が経済学賞となっています。

ノーベル生理学・医学賞

このうち、生理学・医学賞は、これまで5人の日本人が受賞しています。

毎年、注目されているのは、日本に有力な研究者が多い免疫学の分野で、過剰な免疫反応を抑える「制御性T細胞」を発見した大阪大学特任教授の坂口志文(さかぐち・しもん)さんや、免疫の働きを強める「インターロイキン6(シックス)」というたんぱく質を発見した大阪大学特任教授の岸本忠三(きしもと・ただみつ)さんがこれまでに国際的な賞を受賞するなどしています。

坂口志文さん(左)  岸本忠三さん(右)

また、病気の治療に貢献している研究者の中では、青カビが作り出す「スタチン」という物質が動脈硬化の原因となる血液の中のコレステロールを下げることを発見し、治療薬の開発に貢献した東京農工大学特別栄誉教授の遠藤章(えんどう・あきら)さんや、HIV(エイチアイブイ)の増殖を抑える化合物を発見し、後天性免疫不全症候群の世界初の治療薬を開発した国立国際医療研究センター研究所所長の満屋裕明(みつや・ひろあき)さんが注目されています。

遠藤章さん(左)  満屋裕明さん(右)

このほかの分野では、細胞どうしを結び付けて臓器などを形作る分子、「カドヘリン」を発見した理化学研究所名誉研究員の竹市雅俊(たけいち・まさとし)さんや、「小胞体(しょうほうたい)」と呼ばれる細胞の器官が、不良品のたんぱく質を修復したり分解したりする仕組みを解明した京都大学教授の森和俊(もり・かずとし)さんも国際的な学術賞を受賞していて注目されています。

このほか、脳で分泌される「オレキシン」という神経からの信号を伝える物質が睡眠の制御に関わっていることを発見した筑波大学・国際統合睡眠医科学研究機構機構長の柳沢正史(やなぎさわ・まさし)さんは、2023年9月にイギリスの学術情報サービス会社が今後、受賞が有力視される研究者として発表しています。

竹市雅俊さん(左) 森和俊さん(中央) 柳沢正史さん(右)

ノーベル物理学賞

物理学賞は、アメリカ国籍を取得した人を含め、これまで日本から12人が受賞しています。

2021年は、愛媛県出身でアメリカ国籍を取得している真鍋淑郎(まなべ・しゅくろう)さんが受賞。

気候をシミュレーションするモデルの基礎を開発し、地球温暖化の研究を切り開いた功績が評価されました。

また、研究の分野として「気象学」が物理学賞の対象となったのは初めてで、関係者には驚きが広がりました。

注目されている研究者としては、消費電力が極めて少ないコンピューター用の記憶媒体の実現につながる金属の化合物「マルチフェロイック物質」の特徴を解き明かした理化学研究所センター長の十倉好紀(とくら・よしのり)さんや、電力ロスが少ない次世代の送電線などへの応用も期待される「鉄系超電導物質」を発見した東京工業大学栄誉教授の細野秀雄(ほその・ひでお)さんが、論文の引用回数の多さなどから注目されているほか、100億年で1秒も狂わない極めて正確な「光格子時計(ひかりこうしどけい)」と呼ばれる時計を開発した、東京大学教授の香取秀俊(かとり・ひでとし)さんなどが注目されています。

十倉好紀さん(左) 細野秀雄さん(中央) 香取秀俊さん(右)

ノーベル化学賞

化学賞はこれまで日本から8人が受賞していて、ほかにも「ノーベル賞級」とされる成果を挙げている日本の研究者が多くいます。

このうち、水中の「酸化チタン」に紫外線を当てると、水が水素と酸素に分解される現象を世界で初めて発見し、有害物質の分解などに利用される「光触媒」の実用化の道を開いた東京理科大学栄誉教授の藤嶋昭(ふじしま・あきら)さんや、藤嶋さんとともに「光触媒」の研究に取り組み、汚れや有害物質のほか、細菌やウイルスを分解する力があることを明らかにした科学技術振興機構理事長の橋本和仁(はしもと・かずひと)さんは毎年、受賞が期待されています。

藤嶋昭さん(左)  橋本和仁さん(右)

また、東京大学卓越教授の藤田誠(ふじた・まこと)さんは、分子どうしがひとりでに結びつく「自己組織化」と呼ばれる現象の研究で国内外で高く評価されているほか、京都大学特別教授の北川進(きたがわ・すすむ)さんは「多孔性金属錯体(たこうせいきんぞくさくたい)」という特定の気体を貯蔵できる材料の合成で世界的に注目されています。

このほか、ナノマシンと呼ばれる極めて小さい物質に薬を乗せて狙った場所に送り届ける技術を開発した川崎市産業振興財団の副理事長の片岡一則(かたおか・かずのり)さんは、2023年9月にイギリスの学術情報サービス会社からノーベル化学賞受賞の有力候補にあげられました。

藤田誠さん(左) 北川進さん(中央) 片岡一則さん(右)

ノーベル文学賞

文学賞ではこれまで2人の日本人が受賞。

例年注目されるのは、作品が50以上の言語に翻訳され世界中で読まれている村上春樹(むらかみ・はるき)さんです。

チェコの「フランツ・カフカ賞」やデンマークの「アンデルセン文学賞」など、海外の賞を複数受賞していて、毎年、イギリスの「ブックメーカー」が行っている受賞者を予想する賭けでは“有力候補”の1人となっています。

また、長年ドイツで暮らし日本語とドイツ語で小説を執筆している多和田葉子(たわだ・ようこ)さんも、ドイツの「クライスト賞」や、アメリカの「全米図書賞」の翻訳文学部門に選ばれるなど、注目されています。

村上春樹さん(左)  多和田葉子さん(右)

授賞式や晩さん会は12月に

ノーベル賞の授賞式や晩さん会は、2023年12月にスウェーデンのストックホルムで開かれる見通しです。

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