2023年の注目候補
片岡一則さん
「ナノマシン」開発

ノーベル賞の受賞が有力視される研究者の1人、片岡一則さんは東京都生まれの72歳。

東京大学大学院を修了後、東京女子医科大学の助教授や東京理科大学の教授を経て、1998年から東京大学の大学院で教授を務めました。2015年からは川崎市産業振興財団ナノ医療イノベーションセンターでセンター長を務めています。

片岡さんは、2万分の1から10万分の1ミリメートルほどの「ナノマシン」と呼ばれる小さな粒に薬を包み込み、体内の狙った組織に取り込ませる技術を開発しました。

片岡さんが開発したナノマシンはそれまでのものと比べて小型で、体が異物として認識しにくくなるため、より効率的に体内で薬を運べるようになったということです。

副作用が少ない、がんの治療薬や、効率よく脳に届くアルツハイマー病の治療薬など、さまざまな新薬の研究開発に応用されています。

2023年9月にはイギリスの学術情報サービス会社「クラリベイト」が、今後、受賞が有力視される研究者として片岡さんの名前を発表しました。

2023年9月19日 引用栄誉賞の受賞会見

クラリベイトの引用栄誉賞の受賞について片岡さんは「大変名誉なことであり、私の研究に興味を持っていただいた世界の研究者に感謝したい。『将来的に患者さんのためになることをする』というみずからのミッションを果たすための『種』を研究を通して、今後も供給していきたい」と話しました。

また、インパクトのある研究成果を挙げることができた理由について、「化学」と「医療」という異なる2つの分野にまたがる研究に取り組んできた点を挙げました。

片岡さんは「自分の専門知識や考え方が、ほかの分野の課題の解決に結びつくいうことがある。分野を超えて、今ある領域を超えた研究を続けることで、領域がさらに広がり、気がついたらインパクトのある研究になっているということだと思う」と話しました。

「長期的な視点で研究サポートを」

最近の日本の研究力について片岡さんは「『種』となる研究をやって、それを展開して世界の注目が集まるところまで仕上げていくという息の長い研究が日本は弱いと感じる。30代後半から40代前半ぐらいの研究者に思い切り研究をやらせることが大事で、研究費や雇用など、長期的な視点で研究をサポートする制度が必要だ」と述べました。

そのうえで、「インターネットやSNSの普及で、科学技術への関心が高まり、ある意味では、科学者にとって幸せな時代だ。一方で、自分たちに、どう役立つかというプレッシャーも高まっている。科学者は、それをきちんと受け止めて丁寧な説明をしていくことも大切だと思う」と話していました。

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