2021年ノーベル物理学賞に真鍋淑郎さん
二酸化炭素の温暖化影響を予測

2021年のノーベル物理学賞の受賞者に、大気と海洋を結合した物質の循環モデルを提唱し、二酸化炭素濃度の上昇が地球温暖化に影響するという予測モデルを世界に先駆けて発表したプリンストン大学の上級研究員で、アメリカ国籍を取得している真鍋淑郎(まなべ・しゅくろう)さん(90)が選ばれました。

日本人がノーベル賞を受賞するのはアメリカ国籍を取得した人を含めて28人目で、物理学賞では12人目になります。

真鍋さんは現在の愛媛県四国中央市の出身で、東京大学で博士課程を修了後、アメリカの海洋大気局で研究を行いました。

そして、大気と海洋を結合した物質の循環モデルを提唱し、二酸化炭素が気候に与える影響を世界に先駆けて明らかにするなど地球温暖化研究の根幹となる成果などをあげてきました。

真鍋さんは現在、アメリカのプリンストン大学で上級研究員を務めていて、アメリカ国籍を取得しています。

そして、アメリカのノーベル賞といわれる「ベンジャミン・フランクリン・メダル」を2015年に受賞し、スウェーデン王立科学アカデミーが選ぶクラフォード賞を2018年に受賞しています。

そして今回、真鍋さんはドイツとイタリアの研究者とあわせて3人で受賞しました。

日本人がノーベル賞を受賞するのはアメリカ国籍を取得した人を含め28人目で、物理学賞では2015年の梶田隆章(かじた・たかあき)さんに続き、12人目になります。

真鍋さん単独インタ「気候変動での物理学賞 びっくりしている」

ノーベル物理学賞の受賞が決まった真鍋淑郎さん(90)は、日本時間の2021年10月5日午後8時ごろからニュージャージー州の自宅前でNHKの単独インタビューにこたえ「気候変動で物理学賞をもらうとは思っていなかったので、びっくりしています。また非常に光栄に思っています。好奇心ではじめた研究でした。本当におもしろい研究というのは、好奇心から出るのが大事です」と話しました。

ノーベル賞の選考委員会「現代の気候の研究の基礎となった」

真鍋さんの受賞理由について、ノーベルの選考委員会は「現代の気候の研究の基礎となった」としています。

地球の気候は、人類にとって極めて重要な複雑系のシステムで、真鍋さんは大気中の二酸化炭素の濃度が上がると、地表の温度上昇につながることを明らかにしたとしています。

そして、1960年代には地球の気候に関するモデルの開発をリードし、地表面が太陽から受け取るエネルギーから宇宙に逃げていくエネルギーを差し引いた「放射収支」と、空気の縦の動きがお互いにどう影響し合うか、世界で初めて解明したとしていて、真鍋さんの研究は現在の気候モデル開発の基礎となったと評価しています。

同じ分野の研究者「真鍋さんは大気と海洋のモデルをくっつけた」

真鍋さんと同じ分野の研究をしていて親交がある東京大学大学院理学系研究科の東塚知己(とうづか・ともき)准教授は真鍋さんの受賞決定について「受賞に値するすばらしい研究をされてきた。本当にうれしい」と話しました。

その上で、研究成果について「だれも当時やっていなかった大気のモデルと海洋のモデルをくっつけたシミュレーションをつくり、研究を進めたことだ。真鍋先生が開発されたモデルは温暖化の研究だけでなく気象庁の予報のモデルにも応用されていて、私たちの生活に密接に関わっているものだ」と述べました。

気候分野がノーベル物理学賞の対象となるのは初めて

これまでノーベル物理学賞の受賞の対象となっていたのは、天文学と宇宙物理学や原子や分子、それに、物質を構成する素粒子物理(そりゅうしぶつり)など、大きく3つの分野から選ばれてきましたが、気象や気候の研究分野をノーベル物理学賞の対象とするのは初めてです。

物理学の専門家は気候の変動が社会的な大きな関心事になるなかでこれまでにない分野を対象にしたのではないかとしています。

江崎玲於奈さん「私と同じ世代 渡米した研究者多かった」

昭和48年にノーベル物理学賞を受賞した江崎玲於奈(えさき・れおな)さんは、電話での取材に対し、「90歳の真鍋さんと96歳の私は同じような世代で、そのころはアメリカに渡った若い研究者が彼や私のように大勢いました。当時、二酸化炭素が気候に与える影響というのはおそらく注目されていない研究分野で、今回受賞が決まったことには率直にお祝いのことばを申し上げたい」と話していました。

各賞一覧へ