2022年の注目 「HRDAG」と「CANVAS」とは

2022年のノーベル平和賞の候補にあがっているのが、「HRDAG」(えいち・あーる・だぐ)と「CANVAS」(きゃんばす)という2つの団体です。

「HRDAG」は1991年に、当時内戦が続いていた中米のエルサルバドルで人権侵害を行ったとされる政府軍に関するデータベースを作成したことをきっかけにつくられた団体です。

現在はアメリカ西部のサンフランシスコに拠点があり、世界各地の紛争や当局による市民の弾圧などのデータを収集・分析し、人権侵害についての説明責任を促そうとしています。

このうち、中東のシリアでは当局によって拘束されている間に死亡した人の多くについて記録が残されていないことを明らかにしたほか、アメリカでは面識のない人に殺害された人の3人に1人が警察官によって殺害されたことを明らかにし、警察改革を促しています。

一方、「CANVAS」は2005年に旧ユーゴスラビアのセルビアでミロシェビッチ政権に抗議したメンバーなどによって設立され、強権的な当局に対する暴力を伴わない抗議活動や民主主義を促進するノウハウをまとめ、世界各地の若者などを対象としたワークショップを行ってきました。

これまでに世界の16000人以上にトレーニングを行い、中東のエジプトやレバノン、インド洋のモルディブなどでの民主化を求める運動に影響を及ぼしたとしています。

「HRDAG」や「CANVAS」がノーベル平和賞に選ばれれば、世界各地に強権的とされる国家が増える中、当局による情報統制に惑わされず真実や信頼できる情報を追求することや、非暴力の抗議活動を行うことの重要性を改めて強調するものになるとみられます。

小島 明

国際部記者

小島 明(こじま めい)

2014年入局。
前橋局、秋田局、国際放送局を経て国際部。「アラブの春」のさなかにエジプトに留学。

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