2022年の注目 ハーシュ・マンダーさんとは

宗教差別などの被害を受けた人たちを支援してきました

2022年の受賞者の候補の1人にあがっているのが、インドの作家で、宗教差別などのヘイトクライムの被害を受けた人たちを支援している、ハーシュ・マンダー氏です。

インドにはおよそ8割を占めるヒンドゥー教徒と少数派のイスラム教徒などが暮らしていますが、2014年にヒンドゥー教至上主義の団体を支持基盤とするモディ首相が就任してから、少数派への圧力が強まっています。

一部の州では、ヒンドゥー教が神聖視する牛を殺した場合の最高刑が終身刑に引き上げられたほか、ヒンドゥー教徒にイスラム教徒が集団で暴行される事件なども相次ぎ、宗教を理由とするヘイトクライムとみられています。

インド社会が不寛容になる中でマンダー氏は2017年、ヘイトクライムの被害者と連帯する「愛のキャラバン」という活動を立ち上げ、人々が抱える恐怖心や多数派の無理解といった問題について著作や映像などを通じて発信したり被害者の生活再建を支援したりしています。

マンダー氏は政府や与党の対応を厳しく批判していて、2021年、資金洗浄の疑いで捜査を受けた際には、当局による圧力ではないかという見方が広がりました。

マンダー氏がノーベル平和賞に選ばれれば、インド人としては2014年の人権活動家、カイラシュ・サティヤルティさん以来で、宗教の違いによる社会の分断を解消し、異なる宗教間での対話を促すメッセージになるとみられます。

横山 寛生

国際部記者

横山 寛生(よこやま かんせい)

2014年入局。札幌局、山口局などを経て現所属。
北海道では先住民族アイヌの人たちの置かれた状況を取材。

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