2022年の注目 香港の民主化運動
ここ数年、ノーベル平和賞の候補として注目されているのが、香港の民主化運動を率いてきた市民や団体です。
香港では8年前(2014年)、香港政府トップの行政長官を選ぶ選挙をめぐり、中国に批判的な候補の事実上の排除を決めた中国に学生や市民が反発して幹線道路への座り込みを始め、2か月余りにわたって中心部を占拠しました。
抗議運動は、催涙弾を発射する警察に対して学生たちが雨傘を持って抵抗したことから「雨傘運動」と呼ばれ、当時、学生団体の幹部だった▼羅冠聡(ら・かんそう)氏(29)や▼黄之鋒(こう・しほう)氏(25)、▼周庭(しゅう・てい)氏(25)らが主導しました。
また、2019年には容疑者の身柄を中国本土に引き渡せるようにする条例の改正をめぐり、主催者の発表でおよそ200万人が参加するデモも行われ、この時も「雨傘運動」を率いたメンバーが国際社会への支援を訴えるなど、大きな役割を果たしました。
香港では2020年、反政府的な動きを取り締まる「国家安全維持法」が施行されて以降、民主化を求めるデモや集会を行うのが困難になり、民主派団体の幹部や中国に批判的な論調で知られる新聞の創業者などが相次いで逮捕されるなど、言論統制が強まっています。
民主化運動を率いた羅氏らが受賞すれば香港出身者としては初めてで、中国人としては12年前(2010年)、服役中に受賞した劉暁波(りゅう・ぎょうは)氏以来となり、民主的な運動への締めつけを強める中国政府や香港政府に対する強いメッセージとなります。
国際部記者
建畠 一勇(たてはた かずお)
2011年入局。宮崎局、和歌山局、大阪局を経て、報道局国際部に。
大学時代に中国を旅する。無類のパンダ好き。