なぜ大江健三郎さんが選ばれたの?

大江さんが描く“現代性”が評価されたから

堀川記者
大江健三郎さんの受賞は1994年、川端康成の受賞から26年後のことで、日本人でノーベル文学賞を受賞した作家は今までのところこの2人だけです。
当時発表された授賞理由は、「詩的な言語を使って、現実と神話の入り交じる世界を創造し、窮地にある現代人の姿を、見るものを当惑させるような絵図に描いた」というものです。
なんだかちょっと難しいですが、大江さんの文学が描く“現代性”が評価の理由になったようです。
“日本人の心の精髄を世界に知らしめた”という川端康成の受賞が、日本文学が世界に知られるようになる第一歩だったとすると、大江さんの受賞はもう一歩進んで、日本文学が同時代の物語として世界で読まれるようになったことの現れだったと言えるのではないでしょうか。
日本文学の本格的な世界デビュー

堀川記者
ちなみに、大江さんが受賞した年の選考資料が公開されるのは2045年の1月で、選考の経過が明らかになるのは、まだだいぶ先になります。
川端が受賞に至るまでに谷崎潤一郎や三島由紀夫も候補になっていたように、大江健三郎さんと同じ時期にほかの日本人候補がいたのかも気になるところです。

科学文化部
堀川 雄太郎(ほりかわ ゆうたろう)
2014年入局。山形局・鹿児島局を経て、2022年8月から科学文化部で将棋・囲碁や文芸・出版などを中心に取材中。鹿児島局では種子島のロケットや原発なども担当。