平和賞

ことしの注目 アレクセイ・ナワリヌイさんとは

いまの政権や国営企業の汚職をネット上で告発してきました

ことしのノーベル平和賞の候補ではないかと注目されているのが、ロシアでプーチン政権を批判する急先ぽうとして知られ、現在は刑務所に収監されている反体制派の指導者、アレクセイ・ナワリヌイ氏(45歳)です。

1976年、モスクワ州生まれのナワリヌイ氏は、2000年代初めからプーチン政権や国営企業の汚職を、主にインターネット上で告発する活動を続け、若者たちに人気のブロガーとしてその名を知られるようになりました。

2017年には当時のメドベージェフ首相の豪邸とされる建物を上空から撮影した映像を公開し、資産家から送られた賄賂の疑いがあると告発。

若い世代を中心に支持を広げ、プーチン政権を批判する反政府デモをロシア全土で展開するほど支持を拡大した一方、政権からは敵視され、何度も拘束されては罰金刑や実刑を科されてきました。

去年(2020年)8月には、ロシア国内を旅客機で移動中に突然、意識を失い、ドイツの病院に搬送されて一命を取りとめます。

この時、原因の究明にあたったドイツ政府は、ナワリヌイ氏が、旧ソビエトで開発された神経剤「ノビチョク」と同じ種類の物質によって攻撃されたと発表。

ロシア政府の関与が疑われる毒殺未遂事件として、世界に衝撃を与え、プーチン政権に対する国際的な批判が高まりました。

ナワリヌイ氏は、ことし1月、療養先のドイツからロシアに帰国した直後、過去の経済事件を理由に逮捕され、2月、刑務所に収監されます。

さらにナワリヌイ氏が率いる団体は、ことし6月、ロシアの裁判所から「過激派組織」に認定され、解散を宣言。

3年後の大統領選挙の前哨戦と位置づけられた、9月の議会下院選挙では、反体制派の候補者の立候補が次々と取り消されるなど、プーチン政権の弾圧は強まる一方です。

しかしナワリヌイ氏は現在も、支援者などを通じ、刑務所からSNSでプーチン政権を批判し続け、弾圧に屈しない姿勢を崩していません。

ナワリヌイ氏が、ノーベル平和賞を受賞すれば、ロシアでは、旧ソビエト時代の1990年に平和賞を受賞したゴルバチョフ元大統領以来で、ウクライナ危機やシリア内戦など、数々の紛争に関与してきたプーチン大統領に対して、強権的な政治姿勢を改めるよう求める、強いメッセージとなります。

モスクワ支局 記者

禰津博人(ねづ ひろひと)

横浜局、国際部、政治部、テヘラン支局、ワシントン支局、ウィーン支局を経て現職。ロシアや旧ソビエト諸国を担当。