平和賞

ことしの注目 香港の民主化運動

2019年8月16日に香港中心部で行われた抗議活動

ここ数年、ノーベル平和賞の候補にあがっているのではないかと注目されているのが、香港の民主化運動を率いてきた市民や団体です。

香港では7年前(2014年)、香港政府トップの行政長官を選ぶ選挙をめぐり、中国に批判的な候補の事実上の排除を決めた中国に学生や市民が反発して幹線道路への座り込みを始め、2か月余りにわたって中心部を占拠しました。

この抗議運動は、催涙弾を発射する警察に対し、学生たちが雨傘を持って抵抗したことから、「雨傘運動」と呼ばれました。

当時、学生団体の幹部だった羅冠聡氏(28)や黄之鋒氏(24)、周庭氏(24)らが抗議活動を主導しました。

おととし(2019年)には容疑者の身柄を中国本土に引き渡せるようにする条例の改正をめぐり、主催者の発表でおよそ200万人が参加する大規模なデモも行われました。

参加した人の多くがSNSでつながった若者で、カリスマ的なリーダーはいませんでしたが、ここでも「雨傘運動」を率いたメンバーが国際社会への支援を訴えるなど、大きな役割を果たしました。

こうした活動が総合的に評価され、ノーベル平和賞の候補にあがっているという見方がでています。

羅冠聡氏はイギリスに亡命し、国際社会に対して香港の民主化運動への支持を訴える活動を続けていて、香港の捜査当局に指名手配されたと伝えられています。

黄之鋒氏は無許可の集会に参加した罪などで実刑判決を受け、現在、収監されています。黄氏はさらに、国家政権の転覆を狙ったとして、香港国家安全維持法に違反した罪でも起訴されています。

周庭氏は無許可の集会への参加をあおった罪で服役し、ことし6月に出所していますが、かつて香港国家安全維持法違反の疑いでも逮捕、保釈されていて、この事件については今も捜査が続いているとみられています。

こうした人たちが受賞すれば、香港出身者としては初めてで、中国人としては11年前(2010)、服役中に受賞した劉暁波氏以来です。

香港では去年(2020年)6月、反政府的な動きを取り締まる「国家安全維持法」が施行されて以降、民主派団体の幹部や中国に批判的な論調で知られる新聞の創業者などが相次いで逮捕されています。

今回、香港の民主化運動がノーベル平和賞を受賞すれば、民主的な運動への締めつけを強める中国政府や香港政府への強いメッセージになります。

国際部 記者

建畠 一勇(たてはた かずお)

2011年入局。宮崎局、和歌山局、大阪局を経て、報道局国際部に。
大学時代に中国を旅する。無類のパンダ好き。