化学賞

これもノーベル化学賞?! 地球環境問題

思わぬ落とし穴を見つけたの

人間の便利な生活のせいで、地球環境が破壊され生命が危険にさらされる…。

今、地球が直面している難しい問題を、最初に指摘したのはあるノーベル化学賞を受賞した研究でした。

地球をとりまく大気の中にわずかに含まれるオゾンの層。オゾンというのは酸素の分子が変化したものです。このオゾンの層が太陽から届く、有害な紫外線を吸収することで、地上の生命が守られています。

ところが、このオゾンの層が「フロンガス」によって破壊されている可能性が高いことが分かったのです。

アメリカのマリオ・モリーナとシャーウッド・ローランド、それにオランダのパウル・クルッツェンの3人が1995年、ノーベル化学賞を受賞しています。

かつてフロンガスは安全なガスとしてスプレー缶や冷蔵庫に用いられ、むしろ環境に理想的なガスとされていたんです。

このフロンガスが大気の上層に運ばれると紫外線にあたって分解し、塩素を出してオゾンの層を破壊する、1974年に3人が発表したのはそんな研究でした。

それまでみんなが思っていたこととは反対のことを発表したのね。

この指摘通り、南極の上空でオゾンの層が極端に減って穴のようになる「オゾンホール」が観測されました。

その結果、フロンガスをはじめとするオゾンを破壊するガスの放出を禁止する国際的な対策につながりました。

今では、エアコンや冷蔵庫なども代替品のガスが使われています。

ちなみに、世界各国が対策に取り組んでいる「地球温暖化」を最初に提唱したのも、ノーベル化学賞を受賞した研究者でした。

スウェーデンの科学者、スヴァンテ・アレニウスは、水中のイオンの研究で1903年にノーベル化学賞を受賞しましたが、これに先立って氷河期の研究から地球の大気に含まれる二酸化炭素の濃度が高くなると気温が上昇する、地球温暖化の仕組みを提唱していました。

それから100年、地球温暖化は今、国際社会の最大の関心事の1つとなっています。

科学文化部

黒瀬 総一郎(くろせ そういちろう)

平成19年入局。岡山局、福岡局を経て平成26年から科学文化部。海洋や天文のほか、現在は、サイバーセキュリティーやネット社会の問題を中心に取材