化学賞

これもノーベル化学賞?! ミントの香り

邪魔なものがまざらないようにするすごい技術よ

ハッカあめや歯磨き粉などに使われているミントの香り。私たちがミントの香りを気軽に楽しむことができるのも、実はノーベル賞を受賞した研究成果が関係しているんです。

2001年にノーベル化学賞を受賞した野依良治(のより・りょうじ)さんは「不斉合成(ふせいごうせい)」という分野で大きな成果を上げました。

以前は、化学物質を合成しようとすると、一緒に別の物質までできてしまうことが課題となっていました。できた化学物質を調べてみると、欲しかった物質は半分だけ、残りの半分は見た目はそっくりでも、よく見ると構造が鏡に映したように逆になった別の物質でした。

構造が違うと性質も異なります。例えば医薬品では薬として機能しないどころか害を及ぼすことすらありました。

ハッカあめや歯磨き粉に含まれるミントの香りの成分であるメンソールを合成しようとする場合も、一緒に香りもせず苦い別の物質ができてしまっていたのです。これらは混じり合っていますから取り除くのは大変手間がかかるため、大量生産の壁となっていました。

そんな中、野依さんは世界に先駆けて「不斉合成」という方法を確立しました。この方法を使うと、別の物質はできませんでした。化学合成の世界では画期的な発見です。

つまり、欲しいものだけを狙って作れるようになった。

そうです。

その成果によって、いい香りのミントだけを合成することが可能になりました。今あるミントの香りの多くがこの技術を使って合成されています。

もちろんミントだけではありません。工業用の薬品や医療に使われる薬まで、野依さんの業績はいろいろなところで使われています。

科学文化部

鈴木 有(すずき ある)

平成22年入局。初任地の鹿児島放送局では、島嶼部の人口減少問題や種子島のロケット取材などを経験。平成27年から科学・文化部で文部科学省を担当。科学、宇宙分野を取材したのち、現在はサイバー分野を担当しています。