これもノーベル化学賞?! スマホのパネル
電気を通すプラスチックができたおかげよ
いまや多くの人たちの日々の生活に欠かせないスマートフォン。手のひらに収まる大きさながら電話だけでなく、インターネットからカメラまで、さまざまな使い方ができるこの高い機能性も、ノーベル化学賞の技術が支えています。
その技術とは、「電気を通すプラスチック」です。
画面に触れるだけでさまざまな操作ができる「タッチパネル」や、小型で大容量の「電池」などに欠かせない技術です。
その基礎を築いたのが2000年にノーベル化学賞を受賞した日本の研究者、白川英樹さんら3人です。
従来、プラスチックは、電気を通さない物質とされてきました。白川さんたちはその常識を覆したのです。
今から40年あまり前、白川さんが大学でプラスチックの作り方を教えていたところ、1人が薬剤の量を間違えてしまいました。
すると見たことの無い銀色の薄い膜のような物質ができていることに気がついたのです。
失敗したと思ったら、新たな発見があったのね。
白川さんはその物質に注目し、アメリカの研究者らとともに性質を調べました。
その結果、ポリアセチレンという化合物でできたこの膜に少しだけ不純物を加えることで、プラスチックが電気を通す性質を持つことを発見したのです。
電気を通すプラスチックができたことで今のタッチパネルや小型のバッテリーなどが次々と実現し、私たちの暮らしを一変させたのです。
科学文化部
黒瀬 総一郎(くろせ そういちろう)
平成19年入局。岡山局、福岡局を経て平成26年から科学文化部。海洋や天文のほか、現在は、サイバーセキュリティーやネット社会の問題を中心に取材