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吉野さん 1000人を前に記念講演

2019年のノーベル化学賞の受賞者に選ばれた吉野彰さんが、スウェーデンのストックホルムで「ノーベルレクチャー」と呼ばれる記念講演を行い、「持続可能な社会は技術革新によってまもなくやってくる。電池はその中心的役割を担う」と述べました。

「ノーベルレクチャー」は、その年の受賞者が受賞理由となった研究の道のりや意義について、一般の人に向けて話すノーベル賞の伝統行事の一つです。

吉野さんは、日本時間の8日夜、ストックホルム大学のホールで約1000人の聴衆を前に『リチウムイオン電池の開発経緯とこれから』と題して講演しました。

吉野さんは、冒頭で「企業研究者として受賞したことに日本中が興奮した。また、支えてくれた家族への大きな贈り物になった」と感謝を述べました。

そして、みずからの生い立ちを振り返り、小学校の時にファラデーの「ロウソクの科学」を読んで科学に興味を持ったことや、旭化成に入社後、ノーベル化学賞受賞者の白川英樹さんが開発したプラスチックを使って電池の研究を始めたことなどを語りました。

また、リチウムイオン電池の開発に当たって安全性を高める実験を繰り返したエピソードを紹介し、「試作した電池に衝撃を与えても発火しなかった時にリチウムイオン電池の実用化を確信できた」と振り返りました。

さらに、リチウムイオン電池は持続可能な社会の実現につながる技術だとして、自然エネルギーで充電した自動運転の電気自動車が普及した吉野さんが思い描く未来のビジョンを動画で紹介しました。

最後にメッセージとして、「持続可能な社会は技術革新によってまもなくやってくる。電池はその中心的役割を担う」と締めくくりました。

講演が終わると、ノーベル化学賞を受賞する3人がそろって舞台に上がり、会場は大きな拍手で包まれ、吉野さんも満面の笑みを浮かべていました。