平和賞

ことしの注目 アーダーン首相ってどんな人

差別や偏見を許さない強いメッセージを世界に発信

ニュージーランドで3人目となる女性の首相、ジャシンダ・アーダーン氏が注目されています。

2年前に、37歳で就任しました。その数か月後の去年(2018年)1月に妊娠を公表し、出産後には、現職の首相として世界で初めて産休を取得し、話題となりました。

アーダーン首相が、ノーベル平和賞の候補と言われるほど評価されるようになったきっかけは、ことし3月に起きたある事件の際にとった行動です。

事件が起きたのはニュージーランド南部のクライストチャーチで、イスラム教のモスクが銃撃され51人が死亡しました。過激な白人至上主義の思想を持つとみられる男が逮捕されました。

事件の直後、アーダーン首相は、イスラム教徒の女性のようにスカーフで頭を覆って、遺族やイスラム教徒たちと面会し安全や信仰の自由などを約束。国民にも連帯を呼びかけ、国内外から高く評価されました。

また、事件の様子を撮影した動画がSNS=ソーシャルメディアで拡散されましたが、アーダーン首相は暴力的な思想や動画の投稿を排除するための対策を各国政府やSNS運営企業に働きかけたほか、国内では、銃規制の強化も進めてきました。

思いを伝える行動力がすごいのね。

インターネット上ではアーダーン首相にノーベル平和賞を贈ろうという署名活動が複数、行われ、その1つでは、これまでに8万人以上が賛同しています。

差別や憎しみをあおるヘイトクライムは世界各地で課題になっています。人種や宗教が異なる人たちを偏見に基づいて見下し、暴力で排除してもいいんだという考え方は本当に危険です。

これに対し、民族や宗教にかかわらず、互いを尊重していくことが重要だと感じている人も増えています。

アーダーン首相がノーベル平和賞を受賞するなら許しがたい事件があとを絶たないなか、責任ある立場にいる人たちがとるべき姿勢を世界に伝えるメッセージになると思います。

シドニー支局

小宮 理沙(こみや りさ)

平成15年入局。金沢局、国際部などを経て、シドニー支局に赴任。