ノーベル化学賞!吉野彰さん なぜいま受賞?
吉野さんが現在の「リチウムイオン電池」のもとになる電池を開発したのは、いまから34年前の昭和60年。吉野さんは、なぜいま、ノーベル賞を受賞したの?。
「リチウムイオン電池」が、環境問題を解決する新しい未来の社会ができる可能性を切り開いたから。
東海道新幹線に来年の夏に登場する予定の新型車両「N700S」。
大きな災害などで停電したときでも、線路上の架線から送られてくる電力に頼らずに、車両が自力で走行できるシステムが、高速鉄道としては世界で初めて取り入れられています。
そのシステムを支えているのが「リチウムイオン電池」です。
ボーイング社の最新鋭機、「ボーイング787」。
この機体では、これまでエンジンの動力で動かしていたシステムを電気で動くように切り替えるなどして、燃料をできるだけ使わないようにしています。
それができたのは「リチウムイオン電池」があったからです。
これまでの電池と同じ重さで、およそ2倍の電気をためることができるとされています。
「リチウムイオン電池」広がる可能性
スマートフォンやパソコンなど身近なIT機器にも欠かせない「リチウムイオン電池」。いまの私たちの生活を大きく変えています。
世界の科学研究に詳しいJST=科学技術振興機構の調査役、古川雅士さんは、さらに、これからの可能性の大きさにより着目しています。
「リチウムイオン電池」の性能がさらに高まっていけば、いま深刻になっている環境問題を解決する上で、大きな役割を果たす可能性があると感じているのです。
「これまでよりさらに性能の高い電池をつくることができれば、電気自動車にどんどん取り入れられ、ガソリンなどの石油燃料に頼らない社会をつくることができるかもしれません。また、いまは時間帯によって発電できる量にばらつきがある太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーも、高性能な蓄電池をつくることができれば、発電した電気をためて必要なときに必要な量だけ使うことができるようになります。今回の吉野さんの受賞は、いまの社会を変えたことへの評価だけでなく、これからより重要になる環境問題に答えを出してほしいという期待がかけられています」。
“新しい未来の社会”への期待
ノーベル委員会は、今回の受賞理由の中で次のように話し、環境問題を乗り越えた新しい未来の社会を作り出すことへの大きな期待を示しました。
「リチウムイオン電池はあらゆるものに使われるようになっており、化石燃料が不要となる社会が実現する可能性を切り開いた」。
再生可能エネルギー さらなる普及を目指して
吉野さん自身も、未来の社会に向けて次のように話しています。
「再生可能エネルギーで発電する社会システムを作っていかなければいけないと思います。電気自動車が普及すれば、(電気をためてつかうという)巨大な蓄電システムが(社会全体に)自動的にできあがることになります。そうすれば、太陽光発電や風力発電ももっと普及しやすくなります。そうしたことが実現すれば、環境問題へのいちばん大きな貢献になると思います」。