三井住友信託銀行 人事担当者に聞く

信託ってナンダ?

2020年03月30日
(聞き手:伊藤七海 田嶋あいか)

就活生にとってあまりなじみのない信託銀行。そもそも、銀行と信託銀行ってどう違うの?銀行はこの先どうなるの?信託銀行どうしの統合で誕生した三井住友信託銀行が選ぶマストなニュースとは?(取材日2月17日)

銀行とどこが違うの?

学生
伊藤

さっそくですが、信託銀行ってあまりなじみがなくて・・・銀行とどう違うんですか?

信託銀行は、銀行の業務もやっていますが、お金以外のものも取り扱っているのが特徴です。

山岸さん

不動産売買を仲介したり、企業年金の制度設計をしたり、資産の運用や管理をしたりできるんです。

学生
田嶋

幅広いですね。

答えてくれたのは、人事部採用チーム長の山岸健太郎さんです。
併営(へいえい)業務は信託銀行等の信託兼営金融機関にのみ認められている。

店舗数やネットバンキングは、皆さんがよく知っているメガバンクのほうが充実しています。それは、お金をしっかり回す役割を持っているから。

銀行は、いろんな個人や企業から預金を通じてお金を集めて、そのコストとして預金金利を支払っています。

一方で、集めたお金を企業や個人に貸し出して、その対価として貸出金利を受け取り、預金金利との差額が銀行のもうけになるんです。

なるほど。

信託銀行は銀行業務に加えて、不動産など他の資産も扱うことができる信託業務があり、2つを両輪とした業務の幅広さが強みです。

ちなみに、信託って何ですか?

信託には、委託者、受託者、受益者という3人の登場人物が出てきます。

受益者は、委託者本人のケースと他者のケース(家族など)がある

信託銀行は委託者、お客様から財産をお預かりして、お客様に代わって財産を運用・管理・処分する。その利益を受益者に返すというのが信託の基本的な構造です。

そして、信託期間中は、所有権が信託銀行に移転することが特徴の一つなんです。

えっ、貸すだけじゃないんですか。

例えば不動産信託の場合、お客様が自分で不動産を持っているよりも信託銀行の専門性を生かして、より安全で効率的に資産の運用や管理、処分を実現することができる。

それだけの専門性が信託銀行には期待されているんです。

なるほど。

メガバンクと信託銀行
メガバンクは銀行業務が中心で、信託業務はグループ内の信託銀行が行っている。三井住友信託銀行は、信託銀行どうしが合併して誕生し、信託業務が業務の中心。

人生100年時代

2018年の日本人の平均寿命は、女性が87.32歳、男性が81.25歳でともに過去最高を更新。希望する人が70歳まで働き続けることができるよう定年の延長など就業機会の確保を企業の努力義務とすることを柱とした雇用改革の関連法案が、2020年2月閣議決定された。

寿命って何歳くらいだと思っていましたか?

70歳から80歳くらいですか。

そうですよね。それが今ではどんどん伸びている。人生100年時代ということばが、より現実味を帯びています。

今後は60~70歳で退職しても、そこからさらに30~40年生きることが当たり前という時代になってきて、老後の備えに対する重要性も高まっています。

しかし、60~70歳になってから老後の蓄えをスタートするのでは遅いから、それまでに準備が必要です。

私たちのような学生や新入社員にも関係してくるんでしょうか。

端的に言うと学生の方で信託銀行に口座を持っている人は非常に少ないと思うんですよね。

若い人に不動産投資や定年後の資産運用をと言っても、なかなか自分のこととして捉える人は少ないのではないでしょうか。

確かに。

お金を「使いたい」というフェーズの時は、信託銀行の役割はあまりないんです。

ただ、お金が増えて、ある程度まとまった金額になると、今度はお金を「守りたい」、「誰かのために使いたい」となってくる。その時が信託銀行の出番です。

貯めたお金を誰かのために残すための手段は、信託銀行が一番強みとしているところなんです。

お金貯められるかなあ。

お客さんはどちらかというと高齢者が多いんですが、若い世代にもアプローチするため住宅ローンにも力を入れているんです。

将来のお客様を作るために必要なコストだとして、金利を戦略的に低く提供するようにしています。30代で家を買う人たちにアプローチし、しっかり長いお付き合いをしていくと。

定年後も見据えると、すごい長い付き合いになりますね。

そうですね。信託銀行としては、人生100年時代にどうやって使ってもらえるか、どうやって付加価値を発揮するのかが重要なテーマの一つですね。

ただ、長く生きるからこその不安が出てくるという側面もあると思います。詐欺に遭うリスクや認知症になる可能性もでてきますよね。

例えば当社では、信託商品を通じてお金を振り込むときに事前に同意を必要とする仕組みを作ったり、万が一自分が認知症になった時に、あらかじめ誰に財産を任せるのかを決めておいたりできます。

お客さんのことを知っているからできる。

そうですね。お客様本人だけでなく、その家族のことも考えてご提案できることが信託銀行の特徴だと思います。

SDGs

SDGsは「Sustainable Development Goals」を略したもので、「エスディージーズ」と読みます。日本語にすると「持続可能な開発目標」です。

詳しくは、1からわかる!「SDGs」、こちらをご覧ください。

SDGsはどうして選ばれたんですか?

これまでは社会貢献と会社の利益は、一致しない部分もあったんです。社会貢献といえばボランティアが浮かびますが、ボランティアは無償ですよね。

でも、世の中が変わってきたなと思うんです。SDGsによって企業も自分たちのビジネスがどのように社会貢献しているのか、より具体的に示せるようになったんです。

実際、どんなことをしているんですか?

例えば、日本の木造住宅の多くは輸入材が使われ、日本の森林が有効活用されていません。

森林を持っていても、高齢化により自分では林業ができなくなったり、引き継いだ子どもが東京で働いていて管理できなかったりして、放置されてしまっているケースがあるんです。

地方では山林が荒れて大変だという話は聞きますよね。

そうですよね。そこで、森林信託というものを開発しました。

森林信託の舞台、岡山県西粟倉村

信託銀行が森林を預かって所有者となり、森林事業者に外注し、メンテナンスや伐採をしてもらいます。そして木材を売って得られた利益などを、元々の所有者の人たちに還元していくんです。

社会貢献にもなりますし、私たちも手数料をいただくのでビジネスになる。世の中に対して会社として何ができるのか、いろいろ取り組めるようになってきています。

超低金利下の金融機関

今、銀行はみなさんから、すごく不人気企業というイメージを持たれてると思うんです。

例えば、AIで業務効率化され必要人員が減るというニュースを見ると、退職者が増えるとか採用人数を減らすとか聞いて、働く場所がなくなるのではと魅力を感じられないのかもしれません。

また超低金利ということで、銀行がいくらお金を安く仕入れることができても、高く貸すことができないから、ビジネスとして儲からないと思われているのかもしれません。

マイナス金利政策

デフレ経済からの脱却を目指して、日銀が2016年2月に適用。この政策により、民間の金融機関が日銀に預けている預金金利がマイナスになり、預金者(金融機関)が金利を支払うことに。

企業への貸し出しや投資に資金を回すよう金融機関に促し、経済活性化とデフレ脱却を目指しているが、地方銀行を中心に利益をあげられくなり業績が悪化するところも。

厳しいんですね・・・。

でも、ピンチはチャンス。まだまだ銀行だって工夫したり、変わったりする余地はあると思うんです。

信託銀行でいうと、信託のビジネスは手数料収入だから、実は低金利の影響は受けにくいんです。

付加価値やサービスを提供して、その対価として報酬、手数料をお支払いいただく。つまり、お客様にどのように評価されたか、ご満足いただけたのかで水準が決まる世界なんです。

へー。

信託銀行は、収益の6割くらいが手数料収入です。もちろん手数料も安くして欲しいという人はいますが、それは低金利とは関係なくて。

信託銀行の業務の幅広さは、その分、収益源もたくさんあるということ。

いいサービスを提供できれば、まだまだ収益を上げる仕組みは作ることができるし、可能性もたくさんあると思います。

逆に利用者の立場として、この超低金利はどう見たらいいですか。

お金をどこに置いておくかというところは、変わりつつありますよね。

これまで日本では、銀行中心の金融システムを作り、経済が回っていました。だから、昔はお金を預けるときには、銀行の長めの定期預金に預けておけばよかったんです。

しかし、今の超低金利の環境のもとでは、普通預金との差もあまりありません。そして、特にこの20年で金融環境は変わりつつあります。

どう変わってきたんですか?

欧米ではすでに銀行ではなく、自分でお金をどこかに投資してリターンを得ることが普通になっています。

日本も遅ればせながらそのように変わりつつあります。昔に比べると投資信託をしたり、株に投資をしたりする人は増えてきている。

リスクの取り方は変わってきたなと思うし、これからもっと変わっていくんじゃないかと思います。

安全性を担保しつつ、リスクも取るっていうのがなかなか難しい気もします。

それはリスクという言葉をどう理解しているかということにもよるんだと思います。リスクは英語で「危険」と訳しがちですが、我々が使うリスクは正確にはそうではないんです。

「リスクが大きい・小さい」というのを違う言い方ですると、「振れ幅が大きい・小さい」

振れ幅・・・。

うまくいくときといかないときのリターンの振れ幅が、大きい資産か小さい資産かということです。振れ幅が小さいからリターンも小さいとかね。

安全か危険ではなくて、どの振れ幅までだったら許容できるのかという世界だと思います。

年金だけでは老後の不安が拭えない中、退職後のお金をどう準備していくかなど企業も社員の投資教育に力を入れ始めています。みなさんも世の中に合わせて変わっていくと思います。

そうなんですね。

みなさんが取れるリスク、許容できる振れ幅がこれから大きく変わってくると思うので、そうするとお金の流れも変わってくるし、金融機関の役割も変わってくると思います。

お客様にとっては選択肢が増えるということなので、さまざまな選択肢を提供できるよう金融機関も変化していかなければいけないですね。

お忙しい中、ありがとうございました。

 

編集 成田大輔