2023年02月16日
(聞き手:梶原龍 藤原こと子)
全国どこに住んでいても勤務が可能で出社は「出張」の扱いに。コロナ禍で働き方を大きく変えたNTT東日本の採用担当者に、通信・IT業界のイマについて聞きました。
NTT東日本と聞くと「電話の会社」というイメージがあります。
そうですね。実際、インターネットが普及するまでは、電話での収入がほとんどでした。
ただ、現在の固定電話の売り上げは会社全体の売り上げの4分の1程度です。
今は光回線をはじめとするネットワークやデジタル化をサポートするサービスの提供が主な事業となっています。
1つ目のマストなニュースについてですが、出社=出張ってどういうことですか?
私たちを含むNTTグループでは、去年7月からリモートワークを基本とする働き方が可能な組織を「リモートスタンダード組織」とし、その組織の社員は基本的に“自宅が勤務地”となりました。
オフィスに出社する場合は「出張」として扱われることになったんですね。
以前はリモートワークをする際、会社に申請が必要だったんですが、いまは逆に出社する時に申請をしています。
NTTグループ全体では約3万人が対象です。
へぇー!
これに伴って住む場所の制限もなくなりました。
どこでもいいんですか!?
インターネットさえつながれば、国内のどこに住んでいても大丈夫です!
だから、自分の趣味や家庭の都合にあわせて移住して、そこからリモートで仕事をするという社員も増えていますね。
転勤になった家族に一緒に付いていく際に会社を辞めないといけないことも今まではあったと思うのですが、
転居先からリモートで仕事をすることもできるので、ライフステージの変化にも柔軟に対応できる制度なのかなと思います。
また、遠方の勤務地に“転勤”になった場合でも、今の家に住んだまま仕事を続けることができるようになりました。
私は大学1年の頃からオンライン授業が多くて少し寂しい思いをしたのですが、リモートワークが進むことで、人とのコミュニケーションが希薄になってしまうことはないんでしょうか?
基本的には自宅が勤務地と言いましたが、この制度は必ずしもリモートワークを強要するものではなく、働く場所を選べるようにするためのものなんです。
例えば新入社員で入った時は、同期の人や近い先輩とのコミュニケーションもすごく大事ですよね。
地方に移住した社員も月1回は集まる日を作って、出社というか出張していますね。
そうなんですね!でも会社側にとってはどんなメリットがあるんですか?
社員のエンゲージメントの向上、つまり会社をより好きになってもらえるのではないかと考えています。
転居の不安を抱えながら仕事をする必要がないので、より仕事に集中しやすい環境を提供できているのかなと。
働く場所の都合で辞めざるを得なかった人も一定数いたわけなんですが、そういう人が継続して働き続けてくれるメリットも、すごく大きいです。
今後はこうした働き方が社会全体に広がっていくよう、お手伝いをしていくことも我々のミッションになるのかなと思っています。
働き方といえば、サッカーW杯 カタール大会の時に社員の方のSNSへの投稿がニュースになっていました。
まさかFIFA(国際サッカー連盟)にツイートされると思わず、びっくりしました!
サッカー観戦のために2週間も休みがとれることをうらやむコメントが多くついていたのを覚えています。
やりがいをもって仕事をするには、プライベートの充実が欠かせないと思っていますので、メリハリのついた働き方をしていくことが大切だと考えています。
私も去年のプロ野球の日本シリーズの時、東京で第1戦と第2戦を観戦した後、休みをとって大阪に第3戦を見に行きましたよ。
次の「地域の課題解決」ですが、なぜこちらに注目しているのですか?
地域(地方)は「課題の先進地」と言われています。
都市部との所得の格差が拡大したり、人口が減少して過疎地域が増えたり、といったさまざまな課題を抱えていますよね。
こうした課題を通信やICTを使ってどう解決していくか、ということに着目しているんです。
弊社としても固定電話の売り上げが減少していく中、新たな事業として力を入れています。
どのようなことに取り組まれているんですか?
これまでも電話やインターネットのサービスにひもづいた課題について要望をもらっていましたが、その幅がだんだんと広がってきていて。
最近ではインターネットや電話に直接関係のない要望ももらうようになりました。
例えば農業に関するものですね。
農業は専門性が高く、各地の自治体や農協の指導員が1つ1つの農場に足を運んで技術指導を行うことをしているんですが、やはり人手不足が大きな課題になっています。
こうした課題を解決するために、農家の方にスマートグラスをかけてもらい、見えている映像を確認した指導員が離れた場所からアドバイスする取り組みを始めています。
農家の方が見ている映像をそのまま送れるんですね!
ローカル5Gという通信技術を使うことで、すごく鮮明な映像を送ることができるんです。
ローカル5G
工場内や農地など限られたエリアで5Gの通信を使えるようにする技術。5Gでは高速・大容量の無線通信ができ、高精細な映像を遅延なく送ることができる。
収穫のタイミングを判断したり、野菜に病気が発生していることを見分けたりすることができるんですね。
農業を始めたばかりの人をしっかりとサポートすることもできるので、この技術を使って地域の農業を強くしていたいと考えています。
他には、どんな例がありますか?
文化芸術の分野でも取り組みを進めていて、葛飾北斎の絵画をデジタル化する事業をスタートアップ企業と連携して行っています。
これによって、どこからでも、本物の絵画を現地の美術館で鑑賞しているかのような体験を楽しむことができるんです。
この取り組みも地域の課題解決につながるんですか?
現地の美術館に足を運んでもらうきっかけになっているそうなんです。
デジタル化することで世界中に発信することができますし、現地を訪れる人が増えればその分、地域が潤いますからね。
こうして、地域の課題に沿うかたちでこの3年間で計10社を分野ごとに立ち上げ、地域の新しい価値を創造することを目指しています。
3つ目の「デジタル人材の育成」についてです。このテーマをマストなニュースとして選んだ理由は何ですか?
今、日本全体でDX=デジタルトランスフォーメーションを推進できる「デジタル人材」が不足している状況があります。
弊社グループでも2024年度までに5000人のデジタル人材を育成しようとしているところです。
デジタル人材って、どんなことができればいいんですか?
プログラミングをはじめたとしたデジタルのスキルを高めて専門性を保持してもらうことがまずあります。
その上で、しっかりと課題を見つけ、そのスキルを課題解決に向けて発揮していく力が求められるのかなと思ってます。
専門性を保持して、発揮する…。
いま、こうしたデジタル人材である社員を地方自治体に派遣する取り組みも進めています。
デジタル技術に詳しい職員が少ない自治体ではどんなデジタル技術をどう使っていいか発想が浮かばないことも多いそうなんです。
今年度は全国15の自治体に派遣していますね。
派遣された社員は自治体で何をやっているんですか?
自治体の職員に混ざって街づくりや業務のDX化などを進めています。
やはりそれぞれの市や町が抱える課題を解決するには、その業務をしっかりと把握しないといけないですからね。
例えば、山形県の南部にある長井市では地域のデジタル通貨の導入や市営バスの効率的な運行の手助けといったことをしています。
弊社では2025年度までに50自治体に社員を派遣することを目標としているので、そのためにもデジタル人材の育成は待ったなしというわけなんです。
最後に通信業界で求められている人物像について教えてください。
通信業界はすごく変化が激しい業界です。
だから、変化を「面白い。自分だったらどう変えるかな」と、プラスに転換できる人が求められています。
そして、新しいものをつくり出す時には必ず大きな壁が立ちふさがりますので、その壁を打ち破ることのできる情熱や強い意志も必要ですね。
変化が多い環境に楽しみを見出して、自分の価値を創造できる人は活躍できるはずです。
ありがとうございました!
撮影:本間遥 編集:岡谷宏基・中藤智晴
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