NTTデータ 人事担当者に聞く

"うわべだけで「社会貢献したい」と言ってほしくない"

2019年03月07日
(聞き手:勝島杏奈)

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電子マネーの決済システムや官公庁の防災システムを手がけるNTTデータ。最新の技術で社会の仕組みを作るダイナミックな仕事に、学生からの人気も高い企業です。その人事本部の髭直樹部長は「学生には、うわべだけで“社会貢献したい”と言ってほしくない」と。その言葉の裏には、どんな思いがあるのでしょうか?

AI人材の獲得競争

自動運転やロボット開発に欠かせない「AI人材」の獲得競争が激しさを増している。政府は、AIやビッグデータを扱う「先端IT人材」については2020年に5万人、IT人材全体では、2020年に30万人、2030年に60万人が不足すると試算している。

学生
勝島

1つ目に選んで頂いたニュースは、「AI人材の獲得競争」に関するニュース。なぜこのニュースが重要なのでしょうか?

データって、今までは「どうやって蓄積するか」という時代だったんですけど、今はそれを「分析して活用していく時代」に変わってきているんです。

髭さん

自動運転の車ですと、「走行距離」「タイヤの振動」「アクセル」「ブレーキ」すべてがデータとして蓄積できます。スマホを使っていても、閲覧履歴に応じてすぐレコメンド広告が来ますよね。

一人一人の行動がすべてデータになる時代です。そのデータを、AIを使って分析、活用、予測することが広がっていて、我々にとっても成長領域のビジネスになっています。

AIはよく耳にしますが、「AI人材」という単語は初めて聞きました。AIを作ることができる人材、という意味でしょうか?

「AI人材」とひと言で言っても、プログラムを作る人、データを分析する人、AIでどんなビジネスを作るのか考える人、それぞれの領域で人が必要で、それらを全部AI人材と呼んでいます。

大学時代に統計を学ぶなど、分析スキルを持っている人材だと、もう入社1年目から即戦力になりうるんですが、そういった学生は少なくて、企業間で取り合いになっている、というのが今回取り上げたニュースです。

取り合いに・・・御社も「AI人材」を採用したいと考えているのでしょうか?

もちろんです。ただ、争奪戦になっているので、弊社では、もともと大学で情報技術を学んでいた人を採るだけじゃなくて、「採用した後にAI人材に育てる」という取り組みもしていて、学ぶ意欲がある人、素養のある人を、入社後に育成していくプログラムを作っています。

でも、AIと聞くと、どうしても理系のイメージが強いんですが・・・。文系でもAI人材になることはできるのでしょうか?

AIに限らず、ITのプログラミング技術って、語学とかスポーツとかと同じで最初はできないけど、やってるうちにできるようになってくるものだと思うんですね。専攻って何ですか?

私は商学部でビジネスの勉強をしています。

そういうのも、大学に入った時って語れなかったですよね?2年間ちゃんと勉強すると、それなりに話せるようになるじゃないですか。英語も、最初はしゃべれなくても毎日コツコツ勉強することでできるようになるし、スポーツもそうですよね。

プログラミングも一緒で、自分がちゃんと勉強して努力していけば、理系でも文系でもそんなに大きく違わないところもあります。僕も経済学部卒で文系だけど、入社したら銀行のシステムの開発から仕事が始まりました。

そうなんですね・・・文系だと、やっぱり苦労しましたか?

最初は全然分からなかったです。20年前の就活生って、就活のために初めてパソコンを買うような時代だったんですよ。もちろんスマホもまだないし、当然プログラミングなんかやったことなかったけど、会社に入って一生懸命やってたらできるようになりました。

学生に知ってほしいのは、1つは、IT以外の業界に入ったとしても、データをどう扱うか、どう活用するかは絶対に避けては通れない時代だということ。

もう1つは、AIは理系の人たちだけのものではなくて、AIをどう使っていくかを考えることはどの人でもやらなきゃいけないことになるので、敬遠しないで興味持ってほしいな、と思っています。

キャッシュレス決済 高齢者にも広がる

電子マネーやクレジットカードなど、キャッシュレス決済が拡大している。日本は諸外国に比べて現金支払いの割合が高く、政府は2025年までにキャッシュレス決済の割合を40%にするという目標を掲げている。最近では、キャッシュレス決済を利用する高齢者の割合も拡大している。

二つ目のニュースについて、電子マネーと高齢者って一番かけ離れている関係だと思っていたので意外でした。

意外ですよね。就活生に考えてほしいのは、新しいビジネスを作る時に”固定観念を捨ててみる”ということです。今までの常識を疑ってみるっていうのは大切なことなんじゃないかなと思ったんですね。

たしかにおじいちゃんおばあちゃんは電子マネーは使わないだろうなと思っていました。

キャッシュレスは若者が利用するもので、高齢者は現金主義、と思いがちなんだけど、そこの発想を転換させるニュースだと思いました。ITのビジネスを作る時に、世の中のニーズとどう重ね合わせるかはすごく大事で、お客さんの目線に立って、どんな体験を求めているのかを徹底的に考えることが求められます。

たとえば高齢者にとってキャッシュレス決済のメリットは何があるのか考えると、支払いのときに小銭を出さなくていいとか、おじいちゃん、おばあちゃんがスマホで孫にお年玉をあげて、これをきっかけに子どもや孫とのコミュニケーションができるとか。

単なるスマホを使った決済じゃなくて、これをきっかけに世の中のあり方を変えることができる、そういうインパクトの与え方もあると思うんですね。

なるほど!そういう考え方もできるんですね・・・。ご自身は何か電子マネーをお使いになっていますか?

使っています。PayPayも、LINE Payも。とりあえず、使ってみる。ネットバンキングもすごく便利です。そういう新しいものにとりあえず食いついてみて、そこからビジネスの発展を感じたり、類似のサービスとの差は何なのか考えてみたりすると視野が広がると思います。

新しいことを取り入れている学生の方が印象が良かったりするんですか?

新しいことに興味を持つのはすごく大事なことで、好奇心は人を成長させる1つのドライバーだと思ってるんです。

プログラミングを学んだ学生ではなくても、最新の技術に興味がありますとか、いいアプリはどんどん使いたいとか、ユーザー目線でいろいろ言えますよとか、そういう学生さんは、この仕事は向いてるかなとは思いますね。

SDGs(持続可能な開発目標)に注目集まる

SDGsとは、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された、2030年までの国際目標のこと。「誰ひとり取り残さない、持続可能で多様性と包摂性のある社会」の実現のために、貧困問題やエネルギー問題の解決など、世界が目指すべき17のゴールが設定されている。

3つ目のニュースは、「SDGs」について。初めて聞いたとき、全然わかりませんでした・・・。これはどういう理由から選ばれたんですか?

ビジネスの世界では、「SDGs」と「ESG」というのがここ数年クローズアップされています。

SDGsというのは国連が2015年にまとめた「持続可能な開発目標」のことで、2030年までに世界が達成するべき17個の目標を挙げています。

ESGというのは、「環境」と「社会」と「ガバナンス」の頭文字をとったもので、これからの企業評価のものさしとして注目されています。

SDGsを知らなかったので、難しい!と感じてしまいましたが、ほんとにかみ砕いて説明していただきました。

どちらも法律で決まっていたり、守らないから罰則があったりというものではないのですが、そういうことを企業経営やビジネスに取り入れていく姿勢が求められていて、弊社も積極的に取り組んでいます。

SDGsとESG・・・。初めて聞きました。

なぜこれを学生に知ってほしいと思ったかというと、社会課題とか社会のニーズに目を向けてほしいからです。これからみんなが出て行く未来にどんな課題があって、日本や世界がどう解決していこうと考えているかを知ってほしい。

NTTデータを受ける就活生で「社会貢献したい」という人が多いんですけど、うわべだけで社会貢献って言うなと。

仕事を通じてどんな社会を作っていきたいのか。本当に自分がとりくみたい社会課題は何なのか。キーワードを表面的に捉えるんじゃなくて、深いところまで本質を見て、その先どんな社会を作りたいかを、夢を持って語ってほしい。

ただそう言うのではなく、自分が実現したいことを深く考え抜いてほしいということなんですね。

はい。そして、就活のなかでは、企業がどんな視点で未来の戦略を立てているか着目してほしいです。ここ1年、2年のビジョンだけじゃなくて、10年、20年の時間軸で考えた時に、その企業はどういう社会課題を解決しようと考えているのか。

この先の日本って、いろんな予測があるじゃないですか。2030年って、皆さんだと多分会社に入って10年ぐらいたって、30代前半ぐらいで組織のエースとか中核としてバリバリやってる頃だと思うんです。その時の日本ってどうなってるのか、イメージしたことありますか?

一回もないです…。

この先、人口減少とか、経済成長が停滞するというネガティブな予測もあるんですけど、一方でテクノロジーが進化するとか、若者はグローバル化していくとか、ポジティブな予測もたくさんあります。どういう道のりにするかは、これからいくらでも作れる。

○○テックという言葉をよく聞くと思うんですが、たとえば金融と結びついた「フィンテック」、農業だったら「アグリテック」のように、テクノロジーは何かと結びつかないと力を発揮できないんですよね。

これからは1つの分野とだけ結びつくんじゃなくて、ITを中心にして複数の分野を結びつけていくと、新しいビジネスがどんどん生まれて経済成長もしていくし、住みよい社会をつくることができるんじゃないかと思っています。

ITはよくわからなかったのですが、興味がわいてきました。採用に当たって、どのような学生を求めていますか?

求める人材像として、自分で考えて周りを導く「考導力」と、新しい技術を使って変化を起こす「変革力」と、多様な仲間と目標に向かう「共創力」という3つを挙げています。

変化が激しい世の中を生き抜いていくには「変化に対応する力」が必要で、問いとか課題を自分で設定できて、失敗を恐れないで行動する人。自分が頑張るだけじゃなくて、人の心に火をつけられるような人がすごく欲しいと思っています。

企業がどんな視点で未来の戦略を立てているか。情熱にあふれた夢のある話だと感じました!

最初は難しいと思っていましたが、お話を聞いてなぜこれらのニュースが重要か、とてもよく理解できました。ありがとうございました!

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