2022年12月14日
(聞き手:小野口愛梨 徳山夏音)
私たちの生活の足として欠かせない鉄道。その歴史は、常に沿線の「まちづくり」とともにあるそうです。鉄道事業を軸に、暮らしに密着したさまざまなビジネスを展開してきた東急の人事担当者に、これからの「まちづくり」について聞きました。
鉄道会社って、デパートとかホテルとかさまざまなことを手がけている印象があります。
そうですね。鉄道会社と言っても、弊社はもともと渋沢栄一が作った「田園都市株式会社」というまちづくりの会社が源流にあります。
そこから公共交通機関と都市開発を両軸に多様なサービスを提供して、総合的なまちづくりを行っています。
始まりが鉄道事業ではないんですね!
いまでは、約230社のグループ会社があって、沿線を中心に幅広い事業を展開しています。
そんなにあるんですか。
鉄道事業を行うグループ会社としては、東横線、田園都市線をはじめ東京・神奈川で計8路線を運営する東急電鉄のほか、上田電鉄(長野県上田市)・伊豆急行(静岡県伊東市)がある。
例えば「街なか」のサービスだと、スーパーマーケットや百貨店、映画館、ホテル、それにフィットネスクラブなんかもやっています。
このほか、ケーブルテレビの運営や警備業・広告業、それに電力やガスの小売りも手がけていますね。
2022年3月時点の収益構造をみても、鉄道事業の売り上げは2割以下で、その他の事業が8割を占めています。
そうなんですね!
先ほど渋谷の話が出ましたが、渋谷のまちづくりにも関わっているんですか?
もちろんです。
渋谷駅やその周辺の整備はもちろん、まちの拠点となる場所の整備にも取り組んでいます。
渋谷ヒカリエや、渋谷ストリーム、渋谷キャストなどの複合施設は弊社が開発したものです。
渋谷スクランブルスクエアはJR東日本・東京メトロとの3社で開発した施設になりますね。
そうだったんですか!
1つ目のマストなニュースは「エンタテイメントシティ」。初めて聞いた気がします。
私鉄各社、それぞれ大切にしている拠点がいくつかあると思うのですが、弊社は創業以来、「渋谷」というまちを流行や文化の発信地としてずっと大切にしてきました。
さまざまなエンタテインメントが集積して誰でも楽しむことができる渋谷を、世界に誇れるさらに魅力的な街にしていくためのビジョンとして「エンタテイメントシティSHIBUYA」を掲げています。
エンタメのイメージ、あります。
誰が来てもワクワクできる、いろんな価値観を持つ人が新しいものを発信していく、このようなところが渋谷の特徴だと思っています。
こういう部分をより伸ばしていくためのお手伝いをしていきたいですね。
最近、渋谷の景色がどんどん変化している印象がありますが、これからも変わっていくんですか?
はい。どんどん変わっていきますよ。
いまは、100年に1度とされる大規模な開発のまっただ中です。
100年に1度!?
それだけ大きな規模だということですね。
例えば駅前の東側にある渋谷スクランブルスクエアって2019年11月に開業したんですが、実はまだ完成していないんですよ。
そうなんですか!
いま開業しているのは「東棟」と呼ばれる建物で、その横につながる形で新たに「中央棟」と「西棟」ができる予定です。
将来的には歩行者デッキも整備し、宮益坂上から去年オープンした「ヒカリエデッキ」や渋谷駅を経由して道玄坂上まで、一度も地上に降りることなく移動できるようになる構想もあります。
便利!
渋谷は国道や線路に分断されて行き来がしづらいという課題が昔からあって、単に建物を建てるだけでなくインフラ的な側面からも整備を進めています。
何年後ぐらいに完成するんですか?
「中央棟」と「西棟」は2027年度の開業を予定しています。
でも、開発には終わりがあるものではありませんので、時代のニーズにあわせてそのつど開発を続けていくことになると思っています。
2つ目のニュースは「クリーンエネルギー」をあげていただきました。
なぜ、こちらを選ばれたのですか?
今や世界全体で環境保全への取り組みが課題となっていますよね。
弊社としてもまちづくりを進めていくうえでは切っても切り離せないキーワードだと思っています。
具体的にどんな取り組みをしているんですか?
2022年4月から東急の全路線において、太陽光や風力などの再生可能エネルギーによって発電された電力で運行しています。
CO2排出量が実質的にゼロとなり、年間で一般家庭、約5万6000世帯分に相当するCO2の削減を見込んでいます。
全部、自然の力で発電した電気を使っているということですか?
そういうわけではないんですね。
再生可能エネルギー由来の発電量に応じて発行される「非化石証書」と呼ばれる証明書を購入することで、二酸化炭素の排出量がゼロとみなされる仕組みです。
さらに、省エネで運行できる新型車両を導入したり、駅の照明をLEDに替えたりなど日々の運行に使用するエネルギーの削減にも取り組んでいます。
鉄道事業以外でも脱炭素の取り組みは進められていますか?
二子玉川ライズという商業施設では多摩川流域の生態系を反映した生き物の生息環境「ビオトープ」をつくるなどして、生物多様性の維持保全にも取り組んでいます。
あとは、渋谷スクランブルスクエアの壁を緑化する取り組みもCO2削減の取り組みの1つですね。
さまざまなことに取り組んでいるんですね。
何かを犠牲にして便利な生活を得ることは持続可能性がありません。
弊社が目指す「住み続けられるまち」、「環境と調和するまち」を実現するためにも欠かせない取り組みだと捉えています。
3つ目のニュースは「新しいライフスタイル」ですね。
もともと弊社では沿線の生活者のニーズをくみ取りながら事業を展開してきました。
例えば電力・ガスの小売りが自由化された時に参入したり、小学校のプログラミング教育が必修になった際にプログラミング教室を開いたりといった形です。
そしてご承知のとおり、コロナ禍ではライフスタイル、特に「働く」スタイルが急激に変わったので、私たちもスピード感を持って対応している状況です。
コロナ禍のライフスタイルにあわせてどんな事業が生まれたんですか?
例えば、定額で全国の宿泊施設に泊まれるサービスです。
テレワークの普及に伴って、観光地などで休暇を楽しみながら仕事をする「ワ―ケーション」の需要が増してきたことにあわせて始めました。
ほかにもシェアオフィスの事業を手がけていて、2022年12月時点で全国に484店舗を展開しています。
こちらは、コロナ禍以前から始めていた事業なんですが、ニーズの高まりに合わせて店舗数を増やしている状況です。
新型コロナによるマイナスの影響もあったのではないですか?
そうですね。
特に2020年度は、緊急事態宣言が出されたり、不要不急の外出自粛が呼びかけられたりした影響などから、鉄道の定期券利用者が3割減少しました。
その一方、逆に巣ごもり需要でスーパーの収益が良くなるなど、幅広く事業をやっている事でリスクを分散することもできました。
この幅の広さが強みの1つなんじゃないかと思います。
さまざまな事業を手がけているとういことが分かりましたが、社員の方々はどういうキャリアを歩んでいくんですか?
東急株式会社で採用された方には、それぞれの事業を幅広く横断するようなキャリアを歩んでいただきます。
鉄道を運営する会社に行ったり、ホテルに行ったり?
そうですね。最終的には新規事業を立ち上げたり既存事業を革新したりという、グループ全体の成長戦略を担っていただくことを期待しています。
どんな人材を求めていますか?
新しい価値を提供することを一貫して目指してきたので、「新しいことにチャレンジしたい」という気持ちをお持ちの方や、社会の動きに敏感な方とぜひ一緒に働きたいと思います。
最後に、就活生へのメッセージを聞かせて下さい。
就活の時期って、企業が一個人に興味を持っている時期だと思ってぜひ大切にしてほしいなと思っております。
誰かと自分を比較するのではなく、しっかり自分自身と向き合う時間を持って、後悔のない選択をしていただきたいです。
あとは、会社がどんな事業を手がけているかもそうなんですが、考え方だったり社風だったりといった直感的な部分も自分にあった会社を見つけるうえでの大事な要素だと思います。
ぜひ、しっかり見極めていただければと思います。
ありがとうございました!
撮影:本間遥 編集:松原圭佑
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