2022年06月08日
(聞き手:小野口愛梨 田嶋瑞貴)
身近なコンビニの変化、気づいていますか?容器がプラスチックから紙に。レジがセルフレジに。店のスタッフに外国籍の方が増えたような。どんどん変化しているコンビニ業界で働くとは?就活生が気になるニュースを聞きました。
新卒で入ると、どんなふうにキャリアを積むか教えてください。
そもそもフランチャイズビジネスってわかりますか。
ちょっと分からないです。
よく学生の皆さんから全店舗のローソンで、社員が店長として店頭に立ってるんじゃないかって言われます。
そうじゃなくて、ローソンは98%がオーナーさんに担っていただいているフランチャイズ店舗です。
個人の方や企業と契約を結ぶ形です。
私たちは最初1年間は残る2%の直営店で店長の下で働き、商売を覚えるんです。
そうなんですね。
次に登用試験に受かったら今度は自分が店長になって、また新入社員が入ってくるっていう感じです。
それから「スーパーバイザー」という1人あたり8店舗ぐらいの加盟店を担当し、一緒にビジネスを盛り上げていく担当をします。
そこから先はさまざまな部署に分かれて、キャリアを築いていくんです。
それではコンビニ業界として気になるニュースを伺わせてください。
1つめにSDGsを選んでいただきましたが、なぜですか。
大学の授業でSDGsについて学んだりしますか。
はい。
授業の中でも出たかもしれませんが、日本国内でプラスチックの廃棄物が※2017年に863万トン発生しています。(※一般社団法人 プラスチック循環利用協会 調べ)
その流れの中でコンビニ業界も削減に力を入れていかないといけないと思っているんです。
国内のプラスチックごみの量は2020年に822万トンに。人口減少や、ゴミ問題への意識が高まったことなどで近年は減少傾向ですが依然として高い水準で、企業や個人の取り組みが求められています。
コンビニ業界としてはどう対策しているんですか?
弊社の中長期的なプラスチックの削減目標は2030年度に2017年対比で30%削減。
2050年度にはオリジナル商品の容器を包装するプラスチックを環境配慮型の素材100%使用にすることを目標にしています。
具体的にどうしているんですか?
店内調理のお弁当の容器をプラスチックから紙に変えたり、アイスコーヒーのカップも紙にしたりとさまざまな取り組みをしています。
そうなんですね。
スプーンやフォークのプラスチックの削減にも取り組んでいて、木のタイプかプラスチックか選んでいただけます。
プラスチックでも、短くなっていたり穴が開いていたりするので、プラスチックの量は減らせます。
これで年間67トンのプラスチック削減につながります。
67トン!
確かに穴が開いていても問題ないですよね。
知らないうちに変わっていて、それがプラスチック削減につながってるんですね。
そうですね、思いっきり不便になってしまうとあまりよくないですけど、「そういえば」みたいな変化が多いと思いますね。
2021年度には19.3%まで削減ができています。
コンビニの市場では、ローソン単体でも1万4500店舗あります。
そこで身近にできることをしっかりやっていきたいですね。
他にもSDGsの取り組みをされていることってありますか
ローソンのロゴってよく見たらどんなマークがついているかわかります?
あっ、牛乳瓶!
そうなんです。実は弊社のルーツは牛乳なんです。
アメリカのオハイオ州でローソンさんという人が牛乳販売をしていたのがスタートでした。
なので、そもそも牛乳に対してのこだわりが強くて、生乳の大量廃棄の問題があった際には牛乳の半額セールを行わせていただきました。
2021年から2022年の年末年始、生乳が大量廃棄される恐れがあった。新型コロナウイルスの影響で乳製品や牛乳の需要が減少したことや、学校が冬休みに入り給食での消費もなくなったことが原因。
こうした食品ロスにもいろいろと取り組んでいます。
たとえば、最近コンビニで値引きシールが貼られているのを見られたかと思います。
「お客様の数」、「天候の変化」などから、これくらいの値引き幅にすると売り切れるのではというのをAIが提示するシステムも、これから全国で導入していく準備に入っています。
AIも使っているんですね。
ほかにも、そもそも廃棄が発生しないように冷凍の商品を増やしたり、スイーツやベーカリーでも冷凍食品で商品化する技術革新もいま進めています。
それでも廃棄することになれば、もうゴミとして捨てるしかないんですか。
そうですね、時間になればルールにそって廃棄せざるを得ないんです。
でも廃棄するもののうち58%くらいはリサイクルとして動物園向けの飼料にしたり、肥料にしたりと取り組んでいます。
2つめに新型コロナウイルスですが、やっぱり売り上げって減ってしまったんですか。
ようやく戻りつつはあるものの、コロナ以前には戻りきれてはいません。
外出は自粛になって、リモート勤務に急きょ切り替わって、どんどんお客様の行動の範囲が狭くなっていったのがコロナの大きな変化でした。
コンビニを使う時って、出かけた先で「あっ!なんか買い忘れた」みたいな『緊急購買』が多かったと思うのですが、そういった需要ががらっと変わってしまいました。
コンビニに来る目的が変わったんですか?
そうなんです。
「近くのコンビニで全てまかなえるなら、コンビニで済ませてしまいたい」という需要が非常に高まりました。
ニーズの増えた商品はどんなものが?
生鮮食品もそうですし、あとは日用品、ティッシュとか。
強烈なインパクトで伸びたのはお酒でしたね。
緊急事態宣言で飲食店が営業停止する状況で、家飲み需要が引き上がりました。
お酒との買い合わせが見込めるおつまみの商品も提案しながら、売り場の改善をしました。
店舗の大きさは変わらない中で、何を減らしたんですか。
当時はパック飲料などの冷蔵ケースの一部を転換しました。
ふだんだったらお昼ご飯とか朝食の需要で買われていたのが、外出する機会が少なくなったので、おにぎりなど主食のカテゴリーも影響が出ていましたね。
時代のニーズをキャッチして対応されているんですね。
コンビニ業界自体が常に「今求められているものは何?」っていうのをキャッチアップしながら成長してきた背景もあります。
「変化対応業」と言われるくらいで、コロナ禍であっても変わっていきやすいのが強みかもしれないです。
3つ目のニュースは人手不足ですね。
人手不足とは書かせていただいたのですが、そもそも日本って人口が減っていくっていうニュースを聞きますよね。
よく聞きます。
この人口減少、少子高齢化に対して何ができるのかをいま取り組んでいるんです。
店舗でもITを活用し、人でしかできないことに関してはそのまま人で、機械やITで出来ることは対応させ、お店の人が働きやすい環境を構築しています。
セルフモードを搭載したレジを2017年から順次、今では全店で導入しています。
セルフモードのレジというのはなんですか。
普段は従業員の方がレジの操作ができますし、ボタン一つでお客様がレジを操作するモードに切り替えられるレジです。
コロナ禍で従業員との接触を避けたい方も多くいらっしゃり、セルフモードの稼働が一気に進みました。
そういった取り組みで人手不足って、実際に対応できるものですか。
ずっと模索をしながらやり続けている状態ではあります。
高齢者の方や外国籍の方も働きたいニーズがあると思うので、働き方を工夫しながら取り込みたいと思っています。
外国籍の方はどのくらいいるんですか?
非常に増えてきていて、ローソン全体のアルバイトさんの中で8.7%は外国籍の方々です。
これはイレギュラーですけど、私自身が店長をしていたお店のアルバイトさんの8割がネパール国籍の方々だったこともあります。
8割!ことばの問題もあったのでしょうか?
そうなんです。そのときは、より丁寧に伝えるっていうのをずっとやって来ましたね。
当時はありませんでしたが、現在はいろんな国の方々が安心して見ていただけるようなマニュアルがあります。
さらにはレジの操作でも、ミスした時にポップアップが外国語でちゃんと表示をされるようなシステムも導入しています。
コンビニなので24時間の営業だと思いますが、人手不足の点では難しさってありますか。
そうですね、もちろんあります。
ただ、我々も24時間365日営業に必ずこだわるということではないです。
経営をされるオーナーさんにとって、この商売のしかたが難しいのであれば相談してほしいというスタンスで、創業時からずっとやらせていただいています。
24時間開けるのって、やっぱりかなり需要があるんですか?
そうですね、もちろん日中に比べるとお客様の数がぐっと減ってしまう。
それでも、夜間働かれているお客様は必ずいるわけで、ニーズがある以上お応えをしていく必要はあるのかなと思います。
また、夜間にお店が開いてることで防犯に役立つ面もあります。
ただ、時代の流れで24時間営業が必要なくなってくるのであれば、もちろん切り替えていく必要があると思っています。
最後に、求める人材像をお聞きしたいです。
この変化の多様な業界だからこそ、みずから考えて実行に移していける行動力のある方と一緒に働いていきたいなと思っております。
コンビニって身近だからこそ、自分が困ってることとか「こんなものあったらいいのに」っていうものがすごく反映させやすいと思っていて、すごく面白いですよ。
ありがとうございました!
撮影:阿部翔太郎 編集:清水阿喜子
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