2022年03月03日
(聞き手:堤啓太 徳山夏音)
日本が世界をけん引するゲーム業界。就活生にも人気の業界です。でも実際、ゲーム会社にはどんな仕事があるの?どんなふうに働いているの?気になるゲーム業界の実情、バンダイナムコエンターテインメントに聞きました。
学生
堤
具体的にはどういう仕事をするのでしょうか?
ゲームって聞くと、プログラミングとかデザイン、イラストを描いたりしていると想像する方が多いと思うんです。
バンダイナムコエンターテインメント
鈴木さん
実はゲーム業界にはゲームを販売する「パブリッシャー」と、ゲームを制作する「デベロッパー」があって当社はパブリッシャーの⽴場なんですね。
プロデューサーやマーケティング、プロモーションのほか法務・知的財産などの職種があります。
プログラミングしているわけじゃないんですね。
はい。プロデューサーはお客さまに価値を提供し喜んでいただくためのゲームを企画し、ビジネスプランを立てます。
そして開発会社のデベロッパーさんたちとともに開発を進め販売・配信までもっていく、船でいうと船⻑みたいな⼈です。
マーケティングはプロデューサーと企画段階から並走し、市場の動向を調査します。
そしてお客さまの理解を深めて最適な体験価値を描くための戦略を⽴てる⼈です。
プロモーションはどういう方たちに向けてどんなコミュニケーションをすべきかを考えながらCMを作ったりPVを作ったりイベントを企画したりしていますね。
学生
徳山
では、デベロッパーは?
バンダイナムコグループにはバンダイナムコスタジオというゲーム開発会社があります。
ここはデベロッパーのお仕事として、プランナーをはじめプログラマーやデザイナー、サウンドクリエイターなどが多数所属しています。
じゃあ例えばゲームのデザインとかプログラミングをしたい学生は、パブリッシャーではなくデベロッパーにいったほうがいいですか?
その方が将来どのような⽴場でどのようなことを実現したいかで変わってくると思います。
例えばプログラミングスキルを持っている学⽣がエンジニアとしてゲームを開発したいのであれば、デベロッパーを選択いただくと良いと思います。
一方でパブリッシャーの立場から、開発会社のエンジニアの⽅と一緒に課題解決が行えるプロデューサーになることもできると思います。
ゲーム業界で働くやりがいを教えてください。
ゲーム業界あるあるなんですけど、⾃分が担当した家庭用ゲームの発売⽇にはどんなに忙しくとも家電量販店の売り場へ足を運びます。
お客さまがにこにこしながらゲームを⼿に取ってレジに並ぶ姿を陰から⾒るのがうれしくて、最初に担当したゲームでは本当に泣きました。
次のタイトルではもっとお客さまににこにこしてもらおうって思うんです。
泣かれるくらい感情があふれるんですね。
⼈間ってふだん感情をどこか抑えていると思うんです。
でも、エンタメを楽しんでいる時、人間は感情を爆発させられると思っています。
そういうものを作れたときが最高の瞬間なんです。
1つ目に選んでいただいたのは本物志向、ですか?
昔は国内のゲーム市場自体が成長していて、少し語弊がありますが「出せば売れる」というような時代もありました。
けど、今は世界中のお客さまが本当におもしろいと思う良質なコンテンツを提供しないと⽣き残っていけないと感じていますので、本物志向を挙げさせていただきました。
本物ってなんですか?
例えばアクションゲームだったら爽快感、シミュレーションゲームだったらいかに頭を使って楽しめるかなど、お客さまの体験価値をどれだけ高められるか。
お客さまが本当に求めているものって何だろうって考え抜いたうえで、求められている期待を超えて提供できるものが本物かなと思います。
その背景は何ですか?
私自身の体験でもありますが、どれだけメンバーができることはやったと思っていても、結果としてお客さまの期待に応えられなかった、良い反応をいただけなかったと感じることがあったんです。
ユーザーからはどんな声があったんですか?
⾃分が期待していたキャラクターがゲームに出なかったとか。
思っていたよりもアクションが気持ちよくなかったとか。
ストーリーを楽しめなかったとか・・・。
お客さまに喜んでいただけるかっていう目線を持って、良質なコンテンツを提供するのがいかに大事かを痛感しています。
ユーザーの期待により応えていくのが本物っていうことですね。
例をあげると、去年発売したRPGシリーズの最新作が、まさにお客さまの期待を超えるべく取り組んだプロジェクトでした。
お客さまの体験価値の向上のためにリサーチなどを通じて動向を確認し、長い開発期間の中で細部にこだわっての制作進行やお客さまとのコミュニケーションを行いました。
結果、世界中からいい反応をいただくことができ、ゲームを表彰する世界の祭典で賞もいただきました。
クオリティーにこだわった結果っていうことですね。
あとは10年ほど前とは違って、今ってゲームを売って終わりじゃなくて、後日コンテンツを追加で配信するなど⻑期で楽しんでもらい続ける仕掛けをどう作るかも重要になってきています。
まさに運営ですね。
ゲーム機器の性能が向上して、できることが昔と違ってとても多くなっています。
幸いお客さまが世界中にいますので、多言語対応も必要です。
さらにPC向けやさまざまなゲーム機器を含むマルチプラットフォームでの提供も活発です。
それぞれのお客さまに向けてプロモーションを行うことも含め、ゲーム開発・販売にかかる費用も⼤規模化しています。
なので、1本1本がきちんとお客さまに喜んで手にとっていただけるように、確度を上げていくことがとても重要になっています。
次のトピックに多様性の時代を選んだ理由についてお願いいたします。
皆さんは若い世代なので当たり前かもしれないですけ ど、ダイバーシティ&インクルージョンなどさまざまな考え⽅が尊重されていますよね。
エンターテインメントも同様に、⾮常に多様化してきたなと思っています。
エンタメの多様化ですか?
例えばTikTokって数年前まではなかったですし、YouTuberが注⽬されてこれだけ盛り上がっているのって、ここ10年ぐらいの話ですよね。
個⼈でゲーム制作もできますし、動画も配信できちゃうし、エンタメって1⼈で作って発信ができてしまう時代なんです。
ツールも媒体もあふれていて個⼈の趣味趣向が⼤事にされるようになったことも背景にあると思います。
多様化にどうして対応していかないといけないのでしょうか?
そもそも現在はエンターテインメントの選択肢がたくさんあります。
価値を提供する出口がゲームだけではお客さまが離れてしまうかもしれない。
求められているエンタメが1つだけではないんですね。
ゲームだけじゃなくて常識にとらわれない多彩なエンターテインメントを⽣み出し続けファンの熱量を高めていくことが重要です。
こうしたことから、2015年に社名も「バンダイナムコ“ゲームス”」から「バンダイナムコ“エンターテインメント”」に変更しました。
ゲームに閉じずに多様化していくお客さまのニーズに応え続けたいと思っています。
多彩なエンターテインメント、具体的にお聞きしたいです。
例えばここ1~2年の環境変化で⽣配信や配信イベントが多くなったので、去年5⽉に大型4⾯LEDパネルを使用したスタジオを本社オフィス内に作りました。
まるでゲームやアニメの世界に入り込んだかのような没入体験を実現する拠点として、ライブや撮影、配信などをほぼ毎⽇実施しています。
ほかにも、東京ドームで複数のアニメやゲームなどのキャラクターが一堂に会すライブイベントを2⽇間にわたって開催したり。
ライブイベントですか
お目当てのゲームやアニメがあって来てくださるお客さまが、イベントを通じて聞いた歌を⼊り⼝に、その後ゲームに⼊ってくれた⼈もいるんです。
ほかにも、バスケットボール男子のBリーグに所属するチームの経営権を取得してスポーツエンターテインメントにも参入しています。
バスケチームの経営権というのは?
まだまだ試行錯誤中ですが、ホームゲームで試合会場にゲーム機を置いてバスケファンに遊んでもらう、会場演出にこだわるなどしています。
試合そのものはもちろん試合会場自体がエンターテインメントだと思っていただけるような取り組みを行っています。
最後の3つ目のトピックは成人年齢の引き下げですね。
成人って1人で契約ができるなど、責任が伴うことなんですよね。
お⾦のことももちろん、社会への責務など、そのあたりのことって学校では教えてくれないじゃないですか。
そうですね。記憶にないですね。
つまり、若いうちから「自律的に学んで成長が求められる社会」になっていくってことだと捉えています。
これはエンタメ業界も一緒なんです。
何か人に言われてやるのではなく、しっかり自分の好奇心を持って常日ごろから自律的に情報収集する癖が必要なんです。
やっぱりそれがないと厳しい仕事なんですかね。
本当に変化が激しくて流動的なんですよね。
きのうはやっていたものがきょうはやっているかは分からない。
業界でもしっかり好奇心が強くて何でも自然に情報を吸収していく⼈が求められていると思います。
スニーカーでもいいしジーパンでもカブトムシでも何でもいいんですけど、何か1つ語らせたら負けないものを持ってほしいです。
それはなぜ重要なんですか?
そういう人は好きな理由を分解して向き合うことができる人だと思っています。
すると、ある作品があったときに「私だったらもっとこうするのに」とか、こだわりを持てるはずです。
こだわりですか。
本当にいいものをつくっていかなきゃいけないときに、こだわりは大切です。
ここは絶対に妥協しないっていう気持ちから本物が生まれてくるものです。
好奇⼼を強く持って⾃律的に学ぶと新しいものを発想できる幅の広がりにつながっていくと思います。
就活生に向けて何かメッセージがあればお願いします。
就職活動はすごい大変だと思うんですけど、エンターテインメントだと思って楽しんでもらえればなと思っています。
世の中、⾃分語りができる場って限られるじゃないですか。
でも面接って人生で自分語りをいくらでもしていい場なんですよね。
そう考えると楽しくなってくるかなと思います。
楽しむんですね。
ありがとうございます。
撮影:白賀エチエンヌ 編集:鈴木有
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