IHI 人事 採用担当者に聞く

“重くて大きい”会社 どうやって脱炭素?

2022年02月14日
(聞き手:白賀エチエンヌ 田嶋瑞貴)

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重工業ってどんな仕事か知ってますか?作っているのは車や船の部品、飛行機のエンジンやロケット、橋やダムまで。実は社会のあらゆるインフラを下支えしているんです。仕事の内容、直面する脱炭素へのチャレンジ、就活生が聞きました。

重工業の会社ってなに?その魅力は?

学生
白賀

重工業ってそもそも何ですか?

文字通り『重』が付いているくらいなので『重くて大きい』というイメージを持っていただいて間違いではないです。

IHI
劉さん

IHIが建設したトルコの「オスマン・ガーズィー橋」長さ2682mのつり橋 写真提供:IHI

火力発電、自動車、飛行機、鉄道、船といったものづくりに携わっている会社です。

IHI
武内さん

あとは橋やトンネルを掘る機械、ロケットもつくっています。

重工業の位置づけは、いわゆるBtoBのビジネスですが、皆さんが密接にかかわるBtoCのビジネスや非製造業を支える役割を担っています。

IHIの採用担当、左から武内佑介さん、劉辰さん

社会を下支えしているんですね。重工業ならではの大変さはありますか?

規模感や金額が大きくて、あと期間も長いものが多いんです。

だから巻き込まないといけない人がかなりたくさんいて、社内外含めて調整の範囲が広いというのが大変なところだと思います。

それでも、完成物を見たときのあの達成感っていうのはやっぱり半端ではないんですね。

脱炭素

脱炭素を1つ目のニュースとしていただいたのですが、なぜですか。

政府から『2050年までにカーボンニュートラルを実現しましょう』という話は出ていますよね。

2020年10月、当時の菅総理大臣が「2050年までの温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」と、脱炭素社会の実現を目指すことを表明しました。

われわれ、火力発電関連の事業もやっているんですよね。

火力発電って何が原料か分かりますか。

石炭ですか?

そうですよね、石炭・石油・天然ガスとか、化石燃料ですよね。

LNG=液化天然ガスを貯蔵するタンク(東北電力新仙台火力発電所)写真提供:IHI

それを燃やすわけで、二酸化炭素が出てしまいます。

燃やしてエネルギーをつくるのが生業なので、どうカーボンニュートラルにするか大きな課題です。

燃やすのが生業というなかで、どうやって脱炭素を目指すんですか。

代表的な例としてアンモニアを使った脱炭素の取り組みを紹介します。

学生
田嶋

アンモニア?

アンモニアって燃料になるんですけど、燃やしても二酸化炭素が出ないんです。

なので、今まで化石燃料を使っていたところをアンモニアに転換したいと考えています。

アンモニア(化学式:NH3)は燃える性質を持ちながら、二酸化炭素が発生しない特徴があります。一方で、燃焼すると有害な窒素酸化物を発生させるため、その発生を抑えることが課題となっています。

脱炭素といえば、いつも話に出てくるのが水素だと思うんですよ。

はい。

もちろん水素も大事な選択肢ですが、水素って貯蔵したり製造したり輸送するっていうところが整っていないんですよ。

でも、アンモニアって肥料などとしてすでに商用利用されているので、輸送や製造、貯蔵といったインフラが整っているんです。

早期にビジネス化することを考えると水素よりもアンモニアの方が早いだろうと着目しています。

アンモニア燃焼にも利用される試験設備(IHI相生事業所 兵庫県)写真提供:IHI

アンモニアを燃料にするというのは昔からあるやり方なんですか?

ないと思います。

今まではずっと化石燃料を燃やしてきたので。

でも実は、化石燃料にアンモニアを混ぜて燃やして二酸化炭素を減らすという技術開発をIHIはずっとやってきたんです。

そうなんですか。

アンモニア専燃研究に使うガスタービン 写真提供:IHI

アンモニアって混ぜれば混ぜるほど燃やすのが難しいんです。

まずは20%余りをアンモニアに変えられれば最初の商用ステージに乗ると思います。

ゆくゆくはアンモニアだけ燃やせるよう、徐々に技術開発をしながら実証しているのが今の状況です。

それってIHIだけで完結できるものなのでしょうか。

アンモニアを作って運んでとか、実際に燃焼させるまでのバリューチェーンは、我々だけでできるわけではないですね。

IHI資料を基にNHKで作成

アンモニアを本当に燃焼で使う場合、今まで肥料などで使っていたより桁違いな量が必要になってくる。

安価なアンモニアを大量に供給するための供給網作りをいろいろな企業と一緒に検討しているところです。

防災・減災

次に防災・減災のニュースですが、なぜ選んだんですか。

自然災害が多くなったと感じませんか?

感じます。

その中で我々が何をやっているかというと、事前に備える」とか、「壊れた時の復旧」というような一連のサービスをしています。

例えば橋や水門、今回は八ッ場ダムの話をご紹介しようと思います。

八ッ場ダム(群馬県 長野原町)写真提供:IHI

群馬県にある八ッ場ダムはIHIが建設に携わっていて、2020年6月に完成しました。

このダムの完成前の2019年10月、実際に水を入れて本当に漏れないか、地盤にトラブルが無いか試す試験湛水(しけんたんすい)をしていました。

その時、台風19号という大きな台風が来たんです。

2019年10月、台風19号が伊豆半島に上陸したあと関東から東北を通過し、広い範囲で記録的な豪雨になりました。国土交通省によると、国や都県が管理する河川で堤防が決壊したのは142か所、氾濫した河川の数は延べ325に上りました。

本当は3~4か月くらいかけていっぱいに水を貯めるんですが、それが一気に一晩で満タンになったんです。

洪水の被害を軽減できたのではないかと思います。

これが減災の取り組みなんですね。

そうです、じゃあ防災はというと、壊れないようにするメンテナンス、保全事業に力を入れています。

日本って市場が飽和しているので、もう新しく大きな橋を架けましょうという話はあまりないんです。

そこで、今国内に72万くらいある橋をどう安全に保っていくか点検しているんです。

重工業の会社が防災・減災まで携わっているのは意外でした。

もともとは「お客様に納めるまでが仕事」という考え方でした。

最近はライフサイクル全体で見ていくことを重視するようになっています。

いい性能のまま、お客様にずっと満足して使っていただこうという考え方になりました。

副業

3つ目は副業ということですが、なぜ選んだのでしょうか?

コロナによって働き方がどんどん多様化してきているので、我々も従来の働き方をがらりと変えて適応していかないといけないんです。

そこで2020年11月に社内副業、2021年1月に社外兼業をスタートさせたんです。

IHIの「副業」制度

社外兼業=週20時間以上のIHIでの勤務など条件を満たせば、他の会社での勤務を可能に。
社内副業=週8時間以下で所属部署とは異なる業務を行うことができる。

なんで始めたんですか?

社外兼業に関してはセカンドキャリアの形成に加えて、多様な経験を通じた人材の育成ですね。

どういう業界でもいいんですか?

自分で手を挙げる制度なのでどこでもいいんですよ。

本の執筆をしたり、学校で教えたりとかそういう方もいらっしゃいますね。

具体的な例を教えてください。

IT部門で仕事をしている社員が、学生時代の友人から「新しい企業を設立したので手伝ってみないか」と誘われて、副業を申請しました。

副業先の会社では再生医療分野で使うソフトの開発を手伝ったり、仕組みを作ったりしているようです。

社外兼業を行っている社員、井出 尭夫さん 写真提供:IHI

IHIだったら再生医療の話ってまず聞けないし新鮮で面白かった。業務やプログラミングをやっている中で自分のITスキルもかなり鍛えられた』と本人は言っていました。

今後の業務の幅も広げられると、期待もあるようです。

最後に、重工業業界ってどんな学生が目指したらいいですか?

そうですね、自分で何か「こういう風にしたい!」という思いを持っている人に来てもらいたいと思います。

ずっと同じ組織にいると同じ考えに固執しちゃう、考え方ががちがちになっていく。

若手の柔らかい頭でアイデアを出してほしいです。

自分のやりたいことをちゃんと言える人。

あと、重工業ならではの社会貢献につながる仕事に関心のある方。

結果までにいろんな難しい壁はあるんですけど、そこに屈せず大きなプロジェクトを仕上げたいという方にぜひ来てほしいですね。

ありがとうございました。

ありがとうございました。

編集:清水阿喜子 撮影:梶原龍