2022年02月03日
(聞き手:石川将也 佐藤巴南 本間遥)
働く人のための作業服の会社なのですが・・・今や女性をターゲットにしたアパレル企業としても注目されるワークマン。有名モデルを起用したファッションショーまで開いていますが、実は“作業服”という軸を貫くからこその成長だそう。就活生が気になるニュースを聞きました。
学生
石川
どんな製品を扱っているんですか?
名前の通り、働く人のための作業服、作業用品の専門店です。
ワークマン
宮下さん
もともと群馬県の会社で衣料品販売をしていたのですが、1980年にワークマン第1号店を作りました。
なぜ作業服に目を付けたんですか。
作業服の専門店ってほかにピンとくるところありますか。
正直、出てこないですね。
それぐらいニッチな、競争相手が少ないブルーオーシャン(未開拓市場)なんですよね。
なのでこの市場で専門販売をしてきたんです。
学生
本間
どんなこだわりを持って作業服を作ってきたんですか。
作業する人にとって必要な品質と機能を用意することと、作業服は消耗が早いので低価格帯で出し続けることです。
全国各地に店舗がありますが、社員の方は店舗で働かれているんですか。
実は販売職は募集していなくて、本部で働く社員を募集しています。
店舗はコンビニと同じフランチャイズチェーンで、販売は外部の方にお任せする。
そして社員は現場の経営者さんたちを支える本部スタッフとして指導にあたったり、企画を考えたりしているんです。
社員の方は全く販売を経験しないんですか。
社員には入社してから2年間、現場を学んでもらうために直営店舗で店長経験をしてもらいます。
いきなりですか!?
いきなりです。
あくまで現場をよく知る、加盟店さんと同じ目線に立つことを学ぶ研修として行っていて。
研修を終えた人たちが、お店の指導をする仕事や、本部での仕事に就いたりというのがキャリアアップの流れです。
では、3つのニュースに入っていきたいと思います。
まず、低価格スーツ。なぜこちらを選ばれたんですか。
みなさんは就職活動でリクルートスーツを着る機会が増えていくと思います。
ただ、コロナ禍で紳士服業界がダメージを受けているので、スーツは今後どうなっていくんだろうというのは気になっています。
学生
佐藤
でも、作業服のお店なので関係ないんじゃ…
実は私が着ているこのスーツ、リバーシブルで、裏返しにすると…
作業服として使うことができるんです。
へー!!
「スーツの仮面をかぶった作業服」として低価格で売ったところヒットしました。
作業服とはかけ離れているイメージがあるんですけど、どうしてスーツに着目したんですか。
大きい理由の1つがコロナです。
コロナ禍で電車通勤をやめて自転車通勤に切り替えてる人がいますが、急な雨に見舞われることもあるじゃないですか。
そこで、撥水機能があってスーツスタイルになる製品があれば、自転車通勤のお客さんも動きやすいかなと。
なぜスーツでも低価格を維持するんですか。
ほかの商品にも影響が出てくる可能性があることが理由の1つです。
上下で数万円するスーツを広告に載せると、「ワークマンってほかの商品もこれぐらいの値段するのかな」という感覚になってしまうんじゃないかなと。
だから、無理して高い付加価値を付けて利益率を上げて販売するというやり方ではなく、これまでと変わらない販売価格を選んだんです。
ブランドイメージを維持することにしたんですね。
これまでと異なる分野に乗り出す中で、売り方はどのように工夫されているんですか。
今、力を入れているのは「アンバサダーマーケティング」です。
コアなファン=アンバサダーと共同開発して、使い心地などをSNSで発信してもらっています。
そのSNSとリアルを結ぶ新業態店舗としてオープンしたのが、2020年10月に新しく作った「#ワークマン女子」なんです。
#ワークマン女子
店舗の名称や内装デザイン、製品展示にいたるまで女性のアンバサダーの意見を反映した店舗。店内にはSNS発信をねらったフォトスポットも設置されている。
アンバサダーさんたちがSNSで情報発信してくれて、新規のお客様がご来店されて映えスポットで写真撮って、それがまたアップロードされて。
新しいお客様がどんどん来店してくれるっていうような。
次世代型店舗ですね。
デザイン性と作業服としての機能性を伝えようと、強風と大雨を再現しながらの「過酷ファッションショー」も開催。モデルの土屋アンナさんを起用し、インスタグラムでライブ配信も実施して女性層にアピール。
どうして「女子」に着目したんですか?
どうしても作業服屋さんじゃないですか。
ハードなイメージが強くて、なかなか入りづらいなっていう女性のお客様が多くて。
女性が入りやすい、女性目線のワークマンを何とか作れないかと。
ちょっと想像が難しいのですが、女性の作業服のニーズってどこにあるんですか?
作業服のほかに、厨房やキッチンで履く「コックシューズ」も扱っていますが、これがヒントになりました。
特殊な靴底で、水や洗剤で汚れている厨房の中でも滑りにくい仕様なのですが、それがすごく意外な使われ方をされていて。
妊婦さんとか子育て中のお母さんが…
転ばないように!
そうなんですよ。雨の日に転ばないように履く。
それもママさんブロガーの方が発信してくれて、そこから広がって妊婦さんや子育て世代が買ってくれるようになったんです。
自分たちじゃ気が付かなかったです。
2つめのニュースですが、アウトドア人気ってどういうことですか?
SNSやアニメをきっかけにアウトドアブームに火がついて、更にコロナ。
密を避けられて、1人や少ない人数で出かけられるのでもうカルチャーに近いと感じますね。
アウトドア人気が作業服にどう関係しているんですか?
作業する人とアウトドアに行く人には共通点があって、どちらも屋外で長時間体を使うじゃないですか。
そのための機能は作業服にもともと備わってるので、ちょっと工夫すれば簡単にアウトドアにもおすすめできるんですよ。
アウトドアウェアのブランドとどこで勝負しているんですか?
一番大きいところは価格だと思ってます。
作業服としての値段設定なので、他のアウトドアブランドと比べると、圧倒的な低価格で機能性ウェアの販売が実現できます。
なるほど。コロナの話が出ましたが、アパレル業界全体はコロナでどのような影響を受けたんですか?
コロナが全世界を襲って、デザインで勝負するアパレル会社は去年、海外のブランドが撤退するなどかなり不況に陥りました。
特に1回目の緊急事態宣言の時はショッピングセンターに出店しているブランドは全然営業できなくて、軒並みダメージを受けたんですよね。
アパレルブランドってたくさんあるのに…。
本当にどこも苦しかったです。
ワークマンはどうだったんですか。
実はワークマンは前年度から200億円以上売り上げがアップしています。
えっ、そうなんですか。
宣言中でも働く人たちがいる限りは閉めるわけにはいかないということで、臨時休業や時短営業を認めていた時期がありつつも、原則店を開けてたんです。
作業する人たちからの変わらない需要に加え、低価格な機能性ウェアがアウトドアブームなどのニーズに合ったんだと思います。
客層を広げる中でもこだわっている部分はありますか?
作業で使える機能を大事にってところですね。
うちはいろんな商品を出してますけど、全部作業服であることに変わりはないんですよね。
作業服で喜ばれてきた機能をしっかりと使うっていうところにこだわる。ここはブレていないですね。
最後にDXなんですけど。
DXというとシステムとかを作って…という企業が多いイメージですが。
私たちは特別な装置を入れたりAIを導入したりするのではなくて、全社員がエクセルを使った分析をするんです。
なじみのあるツールで比較的簡単にデータ分析を行う、そしてそこから経営をよくしていくことを意識してます。
なぜエクセルに注目されたんですか?
使い方が分かれば誰でもできるっていうところが大きいですね。
あと、AIって過程が分からずに結果だけ分かるので、自主的な考えに至らない。
エクセルは過程もしっかり残りますから、自分でアレンジを加える事ができるんです。
エクセルを使うことで、社員の方々の考える力を養っているんですね。
考える力ってどうして必要なんでしょうか。
すごいお恥ずかしい話なんですけど、私たちは約30年以上ほぼ経験と勘だけでやってきていて。
えええ!!!
販売数とか在庫量、季節ごとの変動というようなデータを全然取っていない会社だったんですよ。
目立ったライバルがいない業界で、しかも取り扱ってるアイテムも、はやり廃りがない作業服。
だから経験と勘だけで成長してこれちゃったんです。
なるほど。
でも、成長の限界地点が見えてきて、今後の成長のために客層を広げていこうとなった時に、経験や勘だけだと一般のお客様に通用するわけがないと。
そこで、さまざまなデータから検証して次の行動に出ようとなったんです。
一般のお客さんを取り込もうと。
今後の成長のために、作業服のノウハウだけでは太刀打ちできなかった部分に入っていく手がかりを探したいなと。
エクセルのデータは具体的にどう活用しているんですか。
自分の店舗で工夫をしてみて数字が伸びれば、別の店でも水平展開できますし。
逆に自分のお店でよくないデータが取れた時に、原因を考えるきっかけにもつながります。
店舗のためにどうすればいいのか、細かい目線で考えられるんですね。
よほど地域性がないかぎりはどこかのお店でうまくやれたことって、他のお店でもやれるんです。
だからこそ、数字を使った解析・仮説・検証を繰り返していくことが会社の成長につながると思います。
なるほど。
あと、経験や勘だけの会社だったら確実にトップダウンになってしまうんですよ。
若い社員がものを言っても、確証がないから意見がはじかれちゃう。
確かに…。
若手は販売の現場にいますよね。
お客様の購買行動を基に、データを活用した若手のアクションこそ経営の意見を変えられる。
そうすることで、今の新しいお客様に対応できているのかなと思います。
今後の事業展開はどのように考えているんですか?
根本はブレずにいきたいですね。
作業服屋として作業服の機能をちゃんと守りながらさまざまな消費者ニーズに合う製品をどんどん作っていきたいと思います。
軸を貫き続けるんですね。
大幅にがらっとチェンジする会社もあると思いますが、変えない良さも絶対あります。
自分たちの武器はちゃんと持ちつつ、お客様の声のするほうに伸びていきたいです。
ありがとうございました。
撮影・編集 谷口碧
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