オリックス人事担当者に聞く

時代の変化にあわせて進化する

2021年03月15日
(聞き手:石川将也 本間遥)

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ニュースでたびたび耳にする”新規参入”。業界の垣根を越えて事業を展開する企業はいまや少なくありません。新たなフィールドに挑戦しながら成長を続けるためには何が必要なのか?リース、不動産、水族館運営とさまざまな事業を手がけるオリックスに就活生が聞きました。

リースってどんな仕組み?

学生
本間

よろしくお願い致します。どんな事をされているのか教えて頂けますか?

オリックスは1964年、3つの商社と5つの銀行が共同で出資し、当時日本では新しい金融手法であったリースを祖業として誕生しました。

オリックス
川島さん

答えてくれたのは、オリックスグループ人事部採用担当の川島香織さん。

リース業って馴染みがないのですがレンタルとの違いってなんですか?

レンタルは、レンタル会社が持っている在庫の中から商品をお客様にお貸しします。

リースの場合は、お客様が選んだ商品をリース会社が代わりに購入してお貸しし、リース料として分割でお支払いいただく仕組みです。

取材はオンラインで行いました。

より希望に合ったものを借りやすいということですか?

そうです。またレンタルは、1週間など比較的短期間であることが多いですが、リースは3年や5年など中期的な取組みが多いですね。

リース

企業の代わりにリース会社が機械などの設備を購入し長期間、貸す仕組み。設備投資には多額の費用がかかるが、リースだと月々のリース料で設備の導入ができる。金融機関からの借入枠も温存でき資金調達力にも余裕が生まれるため、多くの企業が利用している。

レンタルと同じように、モノを所有しているのはリース会社で、固定資産税や動産の保険料などもリース料に含まれています。

事務手続きの手間を省くメリットもあり、パッケージ化して販売しているという意味では、現在の「サブスクリプションサービス」をイメージすると分かりやすいかもしれません。

学生
石川

どんなものをリースされてきたんですか?

小さいものだとパソコンから、大きいものは自動車や船、飛行機といったものもあります。

リースしている船や飛行機 写真提供:オリックス

リースは、モノを介してお金を貸すイメージで、銀行のような「金融機能」と商社のような「モノの価値を見定める専門性」が必要です。

私たちの会社では、リースを通じて培ったノウハウを生かして、融資、投資、不動産、環境エネルギーなど、ビジネスを多岐にわたって展開してきました。

リースを出発点にいろんな事業も行われているんですね。

そうですね。いまはリースを含む金融収益は、全体の2割を切るような収益構造になっています。

東京・墨田区で運営する水族館 写真提供:オリックス

東京や京都では、水族館の運営も行っています。

リースだけでなく、いろいろな分野の事業で構成されている会社なんです。

第5次産業革命

1つ目のニュースに、第5次産業革命をあげていただきましたが、そもそも第5次産業革命って何ですか?

第1次、第2次、第3次産業革命くらいまでは、学校で習う範囲かと思います。第4次産業革命は、IoTやビッグデータ、ロボットやAIを用いた技術革新のことを指しています。

写真提供:オリックス

いまは、そこからさらに派生して、第5次産業革命に向かっている途中です。第5次産業革命は、第4次産業革命にバイオテクノロジーを掛け合わせたものと言われています。

「第5次産業革命」

バイオテクノロジーと AI・ ITとの融合で、あらゆる「ものづくり」にバイオテクノロジーが用いられる 「バイオエコノミー社会」が世界的に到来しつつあると言われている。政府は2019年にバイオ戦略を策定し、2030年に世界最先端のバイオエコノミー社会の日本での実現を目標としている。

リース業界とはどんな関わりがあるんですか?

もともと第3次産業革命の時代に、リース事業が世の中に普及しました。1970年代の初頭だったと言われていますが、この時、コンピューターなどのリースが盛んに行われるようになりました。

リースした機械 写真提供:オリックス

昔のコンピューターは非常に高額で、会社で1台持つだけでも大きな資金が必要になりました。

それをリースという金融手法を使って、お客様には毎月のリース料をお支払いいただき初期投資負担を減らすことで、企業の設備投資を可能にしたのです。

へぇ~。

自動車のリースなどを行っているグループ会社では、第4次産業革命の技術を使ったサービスを行っています。

AI機能が付いたドライブレコーダーで、脇見などの不注意運転を検知してアラートを出すことで、交通事故の削減に貢献するサービスを提供しています。

導入されたドライブレコーダーとインカメラからの映像

別のグループ会社ではロボットのレンタル事業も展開しています。

工場で人の横に並んで組み立て作業を行える協調ロボットや、物を自動で運んでくれる物流ロボットなど、最新のロボットも導入しています。

ロボットも貸しているんですか!

ロボットのショールーム(東京・町田)

第5次産業革命ではバイオテクノロジーが主役になりますので、新たな発想で既存事業で活用ができる掛け合わせを考えて、派生させていかないといけないと考えています。

世の中が変わっていくのであれば、会社も変わらないといけません。

時代の流れとともに、柔軟にいろんなことをやっていこうという感じですか?

そうですね。私たちの会社に限らず、リース業界自体がリースにとらわれずに、多様な事業を展開している状況です。

これまで、時代に合わせて柔軟にビジネスを展開してきました。AIを活用したサービスを拡充し、ゆくゆくはバイオテクノロジーのような技術も自社の事業に取り入れていくことなどが考えられます。

脱炭素社会

さきほど環境エネルギーの話が出てきましたけど、次のニュースは脱炭素社会ですね。どんな社会なんでしょうか?

去年10月、菅総理大臣が所信表明演説で、2050年までにカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すと宣言し、最近よく脱炭素という言葉が聞かれるようになりましたよね。

地球温暖化が進んでいるので、CO2の排出削減に取り組んでいかないといけないのですが、「脱炭素」が先行しすぎると二酸化炭素を一切出してはいけないイメージになりやすいと思います。

そうですね。

将来的にはそこを目指すのですが、すぐにゼロにするのは難しいです。

そこで、私たちが出す二酸化炭素の排出量をできるかぎり削減し、どうしても削減が難しい部分と森林などの吸収量を均衡に保ちましょうというのが「カーボンニュートラル」です。

二酸化炭素を吸収する量を増やすって、発想の転換みたいですね。

そうですね。二酸化炭素を減らしつつ、一方で吸収量を増やす。この両方の考え方を持つ必要があります。

日本の企業や経済界にはどんな影響があるんですか?

EUなどの先進国では、以前からカーボンニュートラルを目指すと表明していました。日本が出遅れている状況のなか、企業が取り組まないわけにはいきません。

世界各国の投資家は、各社がどのような分野に力を入れるのかを見ながら投資をします。

カーボンニュートラルに力を入れない会社は将来的には底が見えているという見方もされかねません。

必要不可欠の要素っていう捉え方もできますね。

やっぱり国や世界が向かっている先へ向かえない会社は、どうしても取り残されていく部分があると思います。

取り残されてしまうと、会社自体がどんどん衰退してしまう可能性がありますので、会社がどのような方向性を持っているのかは、ぜひ見た方がいいポイントかなと思います。

どういう取り組みがあるんですか?

二酸化炭素の吸収量を増やすための技術開発など、産業や企業によって全く異なります。

オリックスでは環境エネルギー事業で、太陽光や地熱発電など、二酸化炭素をなるべく出さないような取り組みを進めたり、その事業に参画したいという企業のお手伝いをしたりしています。

お手伝いというのは、太陽光パネルのリースとかになるんでしょうか?

企業の屋根に設置した太陽光発電設備(岐阜・可児) 写真提供:オリックス

太陽光パネルのリースもしますが、例えば太陽光発電を導入したいという企業に、機器を選定しリースを行うことで導入を支援したりメンテナンスのサポートを行ったりしています。

再生可能エネルギーの事業に関する情報やノウハウを蓄積しているので、「こうすれば円滑に進めますよ」というアドバイスも含めて、トータルで手掛けています。

なぜ再生可能エネルギーなんですか?

日本の電力の多くは、二酸化炭素を排出する火力発電によるものです。

写真提供:オリックス

これを再生可能エネルギーに変えられれば、二酸化炭素の排出量を減らしていけますよね。

確かに太陽光や風力発電に変われば、かなり削減できますね。

今後、社会はどうなっていくと思いますか?

今は2050年までにカーボンニュートラルを目指し、脱炭素社会を実現していくのが国の方針であり、世界の方針でもあるので、まずはそこに則っていくのではないでしょうか。

新潟市内に建設した太陽光発電所 写真提供:オリックス

脱炭素社会が成熟していくのはまだ先の未来ですが、その過程では必ず何らかの新しい技術が発展していくはずです。

そのなかで、より良い社会生活を格差なく送れるようになったら一番いいのかなと思います。

鬼滅の刃

最後のニュースに『鬼滅の刃』を選ばれていますが、なぜでしょうか?

『鬼滅の刃』を法人に見立てて、会社を分析することができると思ったからです。意外とオリックスと共通点があるのではないかなと。

面白そうですね。

鬼を壊滅しようとする「鬼殺隊」の中には、「柱」といわれる強い9人がいます。それぞれ個性的で、強いポイントや弱点を持っていて、隊を支えています。

オリックスは、先ほど話したリースや銀行、保険など10の事業セグメント、いわゆる「柱」を持って経営を行っていて、それぞれに強みがあります。

柱がたくさんあるんですね。

金沢市内で開発した複合施設 写真提供:オリックス

例えば不動産事業セグメントでは、旅館業やホテル事業を行っていますが、新型コロナの感染拡大に伴って宿泊客が減少するなど影響を受けています

逆に環境エネルギーセグメントでは、太陽光発電はコロナの影響はなく稼働しますし、生命保険や銀行もオンライン中心のサービス展開をしているので、収益は前年よりプラスになっています

こうして、いろいろな事業で支え合うことでリスクを分散しているんです。

いろいろな事業をやっていることが、プラスに働いているんですね。

視点を変えてみると、いわゆる敵の「鬼」と似ている部分もあると思います。

へぇ~!

『鬼滅の刃』では、鬼の元祖が自分の血を使って新しく鬼を誕生させていますが、オリックスも祖業のリース事業を展開する中で培ったDNAや価値観を様々な事業に派生させて、いまの10の柱ができました。

なるほど。分かりやすかったです!

新しい事業を立ち上げるうえでの大変さって何かありますか?

専門性を学んだり、実際にやってみないと分からないリスクを回避していく方法を探ったりする難しさはあると思います。

どういうことでしょうか?

例えば太陽光発電を始めたときは、発電の仕組みについては素人同然でしたが、不動産開発の経験から、発電所を建設する土地の取得や手続きに関するノウハウやネットワークはありました。

半分知識はあるけど、半分ない状態です。

そこで、太陽光発電について専門的な知識を持った人を中途採用するなどして、一緒に新しいビジネスを作って、社内に新しいノウハウを蓄積していきました。

枕崎空港跡地に建設したメガソーラー 写真提供:オリックス

自前で太陽光発電ができるようになったら、同じ発電でも次は地熱発電にチャレンジしようという発想で、横に事業が広がっていくのです。

発電事業に関わらず、1つの事業で得たノウハウを基に、「隣へまたその隣へ」事業を展開してきたことが、今のオリックスに繋がっています。

川島さんは人事の前、どんな事業に携わりましたか?

私は最初に札幌支店で地場企業向けのリース営業をしました。そのほか、太陽光関連の事業や自動車リース、機器のレンタルなど、本当にさまざまな事業に携わりました。

チャレンジできる土台はたくさんありそうですね。

そうですね。お客様の話を聞いて、私という営業担当者がどういう答えを出すかによって、その会社に対しての提案が変わってきます。

やりがいはありますが、自分の知識の幅によって、お客様にとっては情報不足となりうるという怖さもあります。

いろんな情報を発信していける営業担当者になれたらいいなと思いながら仕事をしてきました。

これからの時代に求められるのはどんな人材でしょうか?

1つのことを極めるという考え方もありますが、それだけではなく、その周辺にある知識や事業について学び、吸収していく柔軟性が大切になると思います。

興味があることについて調べることで、新たに知識が得られますし、それによって見方が変われば、さらに成長につながっていきます。

新たな知識をつけることは大切ですね。

時代の流れが早くなっていて、さまざまなことがどんどん進化しています。

人も企業も変化し続けなければいけないし、考え方を世の中に柔軟に合わせられる”しなやかさ”も求められていくのではないかなと思います。

ありがとうございました。

カメラ担当:白賀エチエンヌ 編集:小宮理沙

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