JR東海 人事担当者に聞く

正解のない状況に想像力を

2020年02月13日
(聞き手:伊藤七海 勝島杏奈 鈴木マクシミリアン貴大)

日本の大動脈、東海道新幹線を運営するJR東海。2027年にはリニア中央新幹線の開業を予定しています。就活生にもなじみ深い企業ですが、今、変化への対応を迫られています。就活生が知っておくべきマストなニュースを聞きました。

台風19号

学生
伊藤

よろしくお願いします!さっそく、台風19号を選んだ理由を教えてください。

日本ってやっぱり災害が多いんですね。

JR東海
深谷さん

JR東海 人事課 深谷伸彦係長

台風19号は、NHKとかが命を守る行動を呼びかけるくらい、人の命が危険にさらされるレベルの災害でした。

「1000年に1度の災害」っていうことばが当たり前に言われるようになってるよね。

学生
勝島

はい。

鉄道においても、この前の災害では新幹線が浸水して水没してしまったんです。

台風19号の被害で浸水した北陸新幹線の車両 2019年10月

本当に想像が及ばないような、どんなに準備してもなかなか対応できないような災害が増えています。

学生
鈴木

台風19号で、JR東海の駅に被害があったりはしましたか?

設備が損傷するような大きな被害はなかった。

だけど、それでいいってわけじゃなくて、うちの会社でも起きるかもしれないので、どんどん安全対策を強化していこうとしています。

台風だけじゃなくて地震もあるし。

地震の対策にはどんなことがあるんですか?

例えば地震が起きた時に、緊急地震速報って流れるよね。

はい、流れますね。

あれは地震の波をいち早く検知して、知らせるものなんだけど。

東海道新幹線も似たようなシステムを導入していて、いち早く揺れを沿線の地震計から検知して送電を止めることで、自動的に緊急停止する。

さらに、揺れが直撃する場合にも備えて、脱線しないように脱線防止ガードなども含めた安全のための投資全体で、これまで32年間で約3.6兆円投資しています。

3.6兆円って、想像つかない。

それぐらいのお金を投資をして、万が一のことがあっても安全に止まれて、お客様がけがをしないようにと、ずっとやってきてます。

ただ、それでも1000年に1度の台風とか地震とかきた時、本当に予想外の事態が起きるかもしれない。

ということで当社がやってるのが、リニア中央新幹線なんです。

リニア中央新幹線

強力な「超電導磁石」を使用し、浮いた状態で営業時は最高時速500キロで走行。東京と大阪の438キロメートルを最短1時間7分で結ぶプロジェクト。東京・名古屋間は2027年の開業、2045年に東京・大阪の全線開業の予定。総事業費は9兆300億円。

なぜこれに力を入れているか分かりますか?

速くなるのかなって。

速い乗り物を作りたいっていうのも当然大事なんだけども、それだけじゃない。

災害リスクがある中で、今の東海道新幹線ってずっと海沿いを走ってますよね。

そうですね。

津波ハザードマップ上、影響がないとみられる場所を走っているんだけど、じゃあ、地震が起きたらちゃんと対応できるか。

もちろん対策はやってるんだけれど、何が起きるか分からない…だから、もう1本作る。

「二重系化」っていうんだけど、東海道新幹線だけじゃなくて山側にもう1本つくることによってリスクを分散します。

東海道新幹線とリニア中央新幹線の「二重系化」

リニア新幹線の防災対策ってどうなっているんですか。

リニア新幹線には、超電導リニアという技術を使っています。

超電導。いわゆる磁石で、10センチぐらい地上から浮いて走ってる。浮いてるので、鉄道と違って非常に地震に強いんですよ。

大きな災害が相次ぐ現状を、学生はどう捉えたらいいですか?

本当に予想ができる災害ってなくて、これって社会人として働くうえでも一緒で、何かもともと正解がある仕事ってない。

僕が働く鉄道の分野でも、サービスをどうやって向上させていったらいいのかというのは正解がない世界なんだよね。

正解がない状況で想像力を働かせて、どうすべきなのかというのを自分なりに考えて行動する。災害対応もそうだし、通常の仕事でもそこが大事だと思います。

世界的な環境意識の高まり

世界的な環境意識の高まり、こちらはなぜ取り上げられたんですか。

地球温暖化に対して、COP25の会議もあった。

ほかにも、イギリスのロックバンドが世界中から来る客が環境に与える負荷を考慮して、ツアーを中止するというニュースもありましたよね。

COP25

地球温暖化対策を話し合う国連の会議。2019年12月、190超の国と地域が参加してスペインのマドリードで開催され、対策強化を促すことを盛り込んだ文書を採択。一方、2020年から本格的に始まった「パリ協定」に必要なルールのうち、温室効果ガスの削減目標の引き上げを各国に促す記述などは合意されず。

世界中で環境問題を本気で考え始めている。

グレタさんも話題ですけど、飛行機よりも鉄道を選ぶみたいな、「飛び恥」ということばも最近聞きました。

グレタ・トゥーンベリさん

飛び恥

温暖化対策を訴えるスウェーデンの高校生、グレタ・トゥーンベリさんがきっかけになって生まれたことば。「飛行機を使うのが恥ずかしい」という意味。温室効果ガスを多く排出する飛行機はなるべく使わず、鉄道などの交通手段を使おうという動き。

おっ詳しいね。

鉄道って大量にお客様を効率的に運ぶことができる。1座席あたりのCO2排出量を少ない形で輸送できる手段でもあるし。

そういう意味で鉄道って持続可能な、これからの社会に不可欠な輸送手段だなと、鉄道をもう1回見直そうじゃないかっていう動きが出てきている。

そもそも、飛行機と鉄道ってどれくらい環境への影響が違うのですか。

 

実はここに書いてあります。

これが東海道新幹線と航空機で、これはCO2排出量。

航空機と比較をすると大体1座席あたり、12分の1って感じかな。

環境に関して、日本国内での取り組みはありますか?

やっぱり、今ある新幹線とか鉄道をより環境負荷の少ないものにしようという取り組みは、ずっとやり続けています。

例えば、車両を軽量化してより少ない電力で走れるようにする技術とか、ブレーキ時の運動エネルギーを電気エネルギーに変えて、架線を通して他の列車で再利用できるようにするとか。

東海道新幹線 N700A

技術開発を重ねることによって、環境負荷はこの30年で劇的に変わっている。

より、省エネになっているんですか?

例えば東海道新幹線には、昔300系という新幹線がありました。

今走っているうち最新のN700Aタイプでは、以前あった300系に比べて実は23%の電力消費量を削減して、省エネ化をしています。

会社として環境問題は意識しているんですか?

日本ではこうやって鉄道が普及して、非常に環境に優しい輸送機関として選ばれてきている。

もともとやっている事業にとって、この今の環境問題の流れは非常に追い風になるところかと思います。

訪日外国人旅行者の増加

最後のニュースは訪日外国人の増加ということで、なぜ選んだのでしょうか。

東海道新幹線を中心に、日本社会を支えている輸送機関として、やっぱり訪日外国人観光客が増えているところに対応していかなきゃいけない。

海外からのお客様の旅行先で、ゴールデンルートって聞いたことある?

ゴールデンルートですか?

まず東京に来ます。そこで観光して、例えば富士山を見て、名古屋、京都、大阪に行って、広島行くとかね。

東海道新幹線は観光の「ゴールデンルート」沿いを走る

それで、そのあたりの東海道新幹線沿線の観光地を観光して帰るお客様が非常に多い。

名古屋や大阪は需要が高いんですか?

そうだね。大阪なんて道頓堀なんかもうほとんど海外の方じゃないかって時があるくらい。

この流れは、今後どんどん進んでいくのかなって。東京オリンピック・パラリンピックもある。

海外のお客様が増えていく中で、よりサービスを良くしていく。そこは当社としても大事かなと思います。

どんな対策をしているんですか?

例えば、車内放送。車掌が英語で肉声放送をしています。

車掌が海外からのお客様と直接しゃべる機会も多いので、そういうところで対応できるようにということも込めて、肉声で放送しています。

そうなんですね。

あと海外のお客様って、今は日本に来てから切符を買って、指定席を取って移動していただいている。でも不安に感じるお客様も非常に多い。

だから旅行に出発する前に予約ができたらいいと、2020年からは海外の人でも英語でネットで東海道新幹線の予約ができるようにします。

ほかにも取り組みはありますか?

結構リピーターの海外からの観光客が増えていて、最初はゴールデンルートで東京と京都とか本当に主要な観光地を回ると思うんですけど。

2回目3回目の人っていうのは、「ここだけ行きたい」という方もいらっしゃる。

リピーターも多いんですね。

なので、例えば当社だったらちょっと狭いエリア、例えば名古屋から岐阜県の高山を周遊できる、地域を限定するようなパスを外国人向けに作って販売したりとか。

外国人旅行者向け「ツーリストパス」

いろんなニーズにあわせた商品を作る事で、いろいろなお客様に楽しんでもらう取り組みをしてる。

東京オリンピック後も、そういう需要は続くと思いますか?

オリンピックに限らず、やっぱり日本が旅行先として認知され始めているところなので。

継続的な取り組みをすることで、どんどんこれからも増えていくかなと思います。

そうなんですね。本日は、ありがとうございました!

編集:加藤陽平