富士フイルム 人事担当者に聞く

激動の時代!「変われる企業」の見分け方とは?

2020年01月16日 (聞き手:伊藤七海 井山大我)

中核事業のカラーフィルムは、デジタルカメラやスマートフォンの出現で需要が激減。企業の存亡を揺るがす事態に富士フイルムは「化粧品」や「医療」など、一見無関係にも思える分野に事業を広げて乗り超えてきました。時代を越えて“変化し続けるために”人事担当者が選んだマストなニュースから、いまを読み解きます。

学生
伊藤

よろしくお願いします!
まず、「人生100年時代」ですね。このニュースを選ばれたのはなぜですか?

人生100年時代

2019年9月15日時点で100歳以上の高齢者は全国で7万1274人と、初めて7万人を超えた。49年連続で過去最多を更新。政府は、「人生100年」とも言われる時代に対応した医療福祉や雇用などの分野の政策強化を掲げている。

左から 富士フイルム人事部 平田さん/採用統括マネージャー 秋山さん/板垣さん

人生100年という言葉って結構最近聞くようになりましたよね。どうですか?

板垣さん

別の取材でも聞きました。

何社か取り上げてらっしゃいましたよね。実際100歳まで生きたい?どう?ぜひ聞かせてください。

うーん・・・

学生
井山

100歳まではいいかな(笑)

なんでだろう?

介護されることを考えると、人に迷惑をかけてまで長生きしたいとは思わないかな。。。

パワフルだったら、100歳まででも生きたいですけど(笑)

素晴らしいパスを頂きました(笑) まさに、私たちはそういう社会を作っていきたいと思っています。

いま、富士フイルムの中心的な事業が「ヘルスケア」で、その重要なテーマになっているんです

ヘルスケア事業が中心なんですね。

日本は世界有数の長寿の国と言われています。一方、「健康寿命」という言葉があります。それこそパワフルに人生を楽しめる期間のことですが、日本では何歳くらいまでだと思いますか?

60歳くらい?

もう少し楽観的で、男女ともに70歳ちょっとなんです。つまり、最後の10年くらいは、病気などが原因で人生を楽しむことができていない。国家的な視点で見ると、医療費の増大が財政負担となっています。

「医療費の増大」・・・日本では医療の高度化とともに高齢化が進んだ影響で、医療や介護にかかる費用が近年大幅に増加。75歳以上の後期高齢者は2030年にかけて増え続ける一方、少子化で社会保障を支える現役世代は急減し、国の財政を圧迫する大きな要因となっている。

お2人のように、年をとることに対してネガティブなイメージを持つ人もいます。僕たちはこれをひっくり返したいと思っているんです。そこで富士フイルムでは、「楽しい100歳」という言葉を掲げました。

どんな風になるんですか、楽しい100歳って?

同じ100歳を生きるなら、楽しいほうがいいですよね。富士フイルムは予防・診断・治療という3つの分野に取り組む世界的にも珍しい企業です。みなさんの健康を支えていくことで、楽しい100歳の社会を作っていきたいと思っています。

特に特効薬が存在しない病気の解決を目指していて、例えば認知症を治療する新たな薬を開発しています。

富士フイルムというと、カメラのイメージがありましたが・・・

そうですよね。私たちは、もともと映画や写真のフィルムの国産化を目指して1934年に事業を始めました。

秋山さん

でも、平成になって写真のデジタル化が進んでいくと、売り上げの大半を占めていた写真関連事業の中核を担うフィルムが使われなくなってきた。そこで、医療や素材などの新たな領域にも事業を拡大してきたんです。

実は、ヘルスケア事業のもととなる技術は写真から来ているんですよ。内視鏡などの診断機器にはカメラの技術が使われてますし、フィルムの開発で培ったコラーゲンの技術を生かして、化粧品にも取り組んでいます。

富士フイルムが開発した化粧品

フィルムとコラーゲンはどう結びつくんですか?

人間の肌の潤い成分はコラーゲンですよね。実は、写真のフィルムの主原料もコラーゲンなんです。

しかも、フィルムの厚さと、人間の肌の角層の厚さは同じくらいといわれています。実は僕らは、とても肌に近いものを研究し続けてきた会社だと気づいたんです。

出典:富士フイルム HPより

2人の赤ちゃんのころの写真はいまでも綺麗に写っていますよね?それは写真の酸化を防ぐ「抗酸化」という技術が使われているからなんです。

その技術を応用して、シミやそばかすを抑える化粧品を開発しています。

実は写真とつながっているんだ。

ところで、お2人は海外旅行は好きですか?

結構行きます。
この前タイに行きました!

東南アジアもそうですが、世界には医療水準が高い国ばかりではないんです。そこで僕たちは診断機器や画像解析の技術を生かして、健康診断のシステムを輸出するビジネスもしています。

現地に健康診断を根付かせていくために、技師をトレーニングするプログラムもつくっています。いろんな国の医療水準をあげていこうとしているんですね。

そうなんですね。

実はこのニュースを選んだのは裏テーマがあってメーカーというと製品を作って売るだけと思われがちなんですが、そうじゃないんだよと

どういう社会をつくっていきたいかを掲げて、必要だと思えば何でも自分たちでやっていいんだということを感じて欲しかったんです。

新元号「令和」に

「令和」は、なぜ選ばれたんでしょう?

元号が変わったことを、変化の象徴として選びました。いま、社会が大きく変化している時代と言われますよね。これまで、富士フイルムもいろんな変化を経験してきたんです。

ヘルスケア事業も、そのひとつですよね。

振り返ると、自分たちの強みを見つめ直して、培ってきたことを生かしながら新たな分野に挑戦してきたと思います。

就活生の皆さん風にいうと、自己分析しながら。

同じですね!

いま、「写ルンです」「チェキ」が再ブレイクしていますよね。

「写ルンです」は1986年に発売された使い切りカメラ。デジカメにはないフィルム独特の味わいがあると、若い世代を中心に再ブームとなっている。「チェキ」は、1998年に発売された、撮影した写真をその場で印刷できるインスタントカメラの愛称。縮小するカメラ市場のなかで売り上げを伸ばし続け、昨年度の販売台数は1000万台を超える。

フィルムを作っている会社がどんどん無くなってきたなかで、弊社はずっと作り続けてきた。その中で、自分たちにしか提供できない写真の楽しみ方ってなんだろうと考えてきました。

平田さん

シャッターを押したらすぐに写真が出てくることが、デジタルの時代に逆に当たり前じゃなくなった。世の中が変わったからこそ、一周まわって新しい感覚で楽しんでもらえているのかもしれません。

フィルムの事業は、なぜ続けてきたのでしょうか?

フィルムや写真に対する思いは、変わらず持ち続けています。色んな事に挑戦しているけど、ベースにあるのはカメラやフィルムで培ってきた技術を応用していることが多いんです。

変わっていくためにも、変わらない部分を大切にしています。

企業が、時代の変化に対応していけるかどうか、見分けるにはどうしたらいいでしょうか?

これから変化していきます!という会社よりも、これまでどんな変化をしてきた会社なのかに着目したほうがいいかなと思います。

変化は1回きりではなくて、必要に応じて変わり続けなきゃいけませんよね。では、変化するために、その会社が逆に大事にしていることはなんなのか、そこを見極めた方がいいと思います。

ラグビーW杯

最後は、ラグビーW杯ですね。

見てました?

僕は見てました!

このニュースを選んだのは、ラグビーというスポーツの特徴や、今回の日本代表が掲げていた精神が、うちの会社に似ていると思ったからなんです。

ラグビーは色んなポジションがありますよね。1人1人の個性や強みを生かしながら、ことしの日本代表のキーワードだった「ワンチーム」でトライを目指していく。

メーカーである富士フイルムも、研究職もいれば、商品企画や営業をする人もいます。それぞれが任された役割を担いながら、目指す方向にビジネスを進めていく姿が似ていると思いました。

富士フイルムが自分たちの風土を説明するときにオープン・フェア・クリアという言葉をよく使います。オープンにビジネスをして、フェアに組織運営をして、物事をクリアに判断していく。

そういう姿勢も、フェアプレーを大事にしたり、試合が終わったらノーサイドといってみんなで称えあったりするラグビーの哲学と似ているんじゃないかな。

富士フイルムにとっての「トライ」ってなんですか?

難しいですね(笑)

トライは短期的な目標ですよね。会社として目指す姿を実現するために、1人1人違うトライがあると思います。1人で走りきる人もいれば、パスを繋いだり、倒れても起き上がったりして、目標に近づこうとしていますね。

最後に、求める学生像を教えて下さい。

謙虚さがすごく大事だなと思います。能力やスキルではなく、学びたい!とか吸収したい!という姿勢ですね。同じ状況にいても、どれだけ学ぶことができるかは、人によって全然違うと思います。

いまと違って、昔の写真は撮り直しができませんよね。つまり、フィルムを買うということは、信頼を買って頂いていたんです。いまやっているヘルスケアも、人の命に関わる事業なので、信頼がすごく大事。

なので、人として誠実であることがいいなと思います。そういう人は謙虚な姿勢も持っていると思うし、この会社でいろんなチャンスを掴めると思います。

誠実に生きていこうと思います!きょうはありがとうございました。

編集:加川直央