東宝 人事担当者に聞く

今の「その先」考えて

2019年11月29日 (聞き手:勝島杏奈 鈴木M貴大 高橋薫)

映画「ゴジラ」などのコンテンツを配給する、映画大手の東宝。
人事部担当者に、就活生が知っておくべきマストなニュース3本と変化を読み解くキーワードを聞いてきました。

学生
勝島

3つのニュースについてお聞きする前に、まず、どんな事業をされているのか教えて下さい。東宝といえば「映画」のイメージが強いのですが。

左から東宝人事部の東端祐子さん 富田玲実さん

東宝は事業の柱が3本あります。映画の事業と演劇事業、それに不動産経営の事業です。

富田さん

不動産は意外でした。知らなかったです。

少し前までは、1つの映画館には1つのスクリーンだけで、色んな街の繁華街に映画館があったんです。

今は「シネコン」といって1つの映画館に行くとスクリーンが沢山ありますよね。スタイルが変わっていくなかで、街の一等地にある土地を有効活用しようと、商業施設やホテルなどとしても活用できるように物件を見直していったんです。

東端さん

不動産系事業は、今は収益の重要な基盤となっています。

国連気候行動サミット

国連気候行動サミット・・・2019年9月に開かれた温暖化対策を話し合うための国際会議。この会議に招待されたスウェーデンのグレタ・トゥーンベリさんは航空機は温室効果ガスの排出量が多いとして使用せず、ヨットで移動したことで話題になりました。

学生
高橋

では1つ目のニュースについてお聞きしたいと思います。「国連気候行動サミット」を選ばれた理由を教えてください。

「国連気候行動サミット」そのものの内容というよりは、メディアで大きく取り上げられたグレタ・トゥーンベリさん。

話題になりましたよね。

10代のスウェーデンの活動家の方で、スピーチもすごく話題になりました。

グレタ・トゥーンベリさん

私が驚いたのが、飛行機を使いたくないのでヨットで来たと。調べたところ「フライトシェイム」って言われるらしいんです。

環境意識が高い欧州の若者の間では、飛行機は環境負荷が高いので『時間がかかっても他の交通手段で移動する』というような意識の変化、新しい選択がでてきているんだなと。

なるほど。

『時間がかかってもいい』というのは結構大きい価値観の変化ですよね。

なるべく早くとか、便利にとか、効率的にとか、そういう考えが社会を高度に発展させてきた1つの考え方だと思うんですが、選択をする上で「自分の価値観」を最初の基準にするっていう世代が既に生まれてきている。

これからは「価値観・自分の生き方ファースト」で選択していくお客様が増えていくと思います。

これまでとは大きく変化するんですね。

映画演劇って余暇をどう使おうかって考えたときに初めて生まれてくる選択肢だと思うんです。

皆さんの時間の意識が変わっていく中でどうエンターテインメントの世界がお客様に寄り添っていけるのか、意識していかないといけないと思っています。

学生
鈴木

学生も、時間の使い方の変容には注目しておいた方がいいのでしょうか?

時間の使い方や人の価値観が潮目を迎えている、パラダイムシフトが起こりそうだなというのは、あくまで今の我々の感覚です。学生の皆さんが社会人になるころはまた違う変化があると思うんです。

なので、時間の使い方だけに注目するというよりは、ニュースを出発点にその先に社会で何が起こりそうか、そういうのをちょっと想像するっていう視点でニュースを見てほしいですね。

東京の再開発

それでは2つ目、東京の再開発を重要なニュースとして挙げられた理由を教えてください。

つい最近、東京都中央区が東京高速道路を緑地化する計画を発表しました。ニューヨークのハイラインを目指して緑のプロムナードをつくります!と。

うちも「日比谷ブロードウェイ」っていうのを掲げているのでこのニュースを挙げました。

そうなんですね。

東宝は日比谷が創業の地で、映画演劇の街として親しまれてきました。

いま一度、人が賑わう映画演劇を楽しむエンターテインメントのまちにしていこうと構想しています。

東宝が取り組む街づくりの代表的な例は、新宿のゴジラヘッドがある新宿東宝ビルです。

TM & © TOHO CO., LTD.

昨日ちょうど新宿に行って、ゴジラをみました(笑)

そこには、もともとは「新宿コマ劇場」があり地域に親しまれてきました。

歌舞伎町って数年前までは、若い女の子が1人で歩くとこじゃない、みたいな感じでしたよね。

ビルを建て直して、行政や地域の力も借りてあの辺り全体を整備する一大プロジェクトを行いました。映画演劇をやる会社だからこそできる街づくりかなと思います。

こんどこの近くのツインタワーを建て替えるって記事を読みました。

下は商業フロアにすることになっていて、この街の、日比谷ブロードウェイの玄関口として、今よりもっとオープンに、人がにぎわう場所にしようとしています。

今まさに私たちがいる「日比谷シャンテ」も最近リニューアルされました。このあたりの再開発を通して街の変化は感じられていますか?

変わりましたね、家族連れが増えたと思います。

三井不動産さんの「ミッドタウン日比谷」の「日比谷ステップ広場」や当社の「ゴジラスクエア」といった広場など、人が集う空間が生まれた良い街になったなあと。

新宿などは普段遊びに行ったりして、日常生活で接点があります。学生目線でこのニュースをどうとらえたら良いですか。

『あの街ってこうだ』といった今あるイメージは、いろんな仕掛けで変えられます。

常に変化の可能性を見つけるという視点を持っていると毎日が面白くなるんじゃないかなと思います。

情報を得るヒントみたいなものはありますか。

我々社員って、街中を目見開いて歩いてるんです。

例えば広告があったとして、「この広告にこの俳優さんがいる、なんでだろう」って考えるんです。

それ考えたことないですね。

ひとつの広告の裏で実はたくさんの人たちがコンセプトを決めたり、考えたりしてるんです。

例えば女優さんや俳優さんはほかのドラマでこういう売り方をしてるからこの商品イメージにぴったりだとか。

ひとつのポスターにいろんな文脈があったりするので、ぼーっと情報を流しているだけじゃもったいない。

電車に乗るときも、ゲームするより、中吊り広告を見るだけでも得られる情報量は全然違います。

そうやって得た情報を私たち学生はどう生かしたらいいですか。

東宝がよく学生さんに言ってる言葉で「引き出しとアンテナ」っていう言葉があります。

社会に対して広くアンテナを張っていろんな情報をキャッチし、かつ、それをいつでも引き出せるような形に自分の中にストックしておくことです。これができるのは人としてすごく強い要素だなと思います。

若手スポーツ選手の活躍

最後は「若手スポーツ選手の活躍」。なぜこのニュースを選ばれたか教えてください。

2020に向けて各種メディアがパラ競技の選手やマイナーな競技の選手を取り上げています。日本に実はこんな選手がいてこんな活躍してるんですよと。

そんな才能にスポットライトをあて、応援することで力になるという意味で、弊社の事業とも通じるところがあります。

例えば、去年から「GEMSTONE」(ジェムストーン)というプロジェクトを行っています。

GEMSTONEとは「原石」っていう単語で、平たくいうと才能発掘、才能の支援を行っています。

TM & © TOHO CO., LTD.

あるテーマについて幅広い作品を募集し、入選された方については一緒に企画開発など、その先につなげていこうという事業です。

こういうことをやられていたのは、知らなかったです。

例えば第一回テーマの「ゴジラ」で入賞した「ゴジばん」。

人形劇が本当によくできていておもしろいんです。

早速、映像事業部というコンテンツの二次利用を専門にしている部署がサポートし、東宝公式として配信がスタートしています。

夢がありますね、誰にでもチャンスがあるような。

才能に注目して一緒に進めていくという意味で、スポーツとエンタメで分野は違うけれど、近いものがあるかなと思っています。

そういった観点でスポーツを見るのも結構ヒントになるということですか?

若手のスポーツ選手の方たちも、メディアが応援することでみなさんの目にふれてはじめて力になると思います。

先日のラグビーW杯では”にわかファン”というワードが有名になっていたかと思いますが、にわかファンがつくだけでもラグビーって大きく変わりましたよね。クリエイターも同じように、応援することで、大きく飛躍してもらえるよう考える仕事をしていきたいと考えています。

実際に、社員の方はインプットの量がすごいというか、映画をずっと見ていましたとか、演劇を毎週見ていますとか、そういう方が多いんですか?

もちろん映画をみてきた社員、演劇をみてきた社員はいますが、大半の社員は会社に入ってから観始めています。

強いて言えば、本を読んでいる社員は多いかもしれません。その本のジャンルも小説から経済まではもちろんのこと、幅広いです。

例えば、世代も性別も越えて少女漫画の話でひとしきり盛り上がることがあるんですけど、多分よその会社では、あまり見かけない光景かなって。なかなかいないですよね?

そうですね(笑)

あとは何にでも自分に天井を設けない、チャレンジ精神がある社員は多いですね。

会社入ってから新しくこの資格をとりましたとか、スポーツを始めましたとか、何にでもチャレンジする社員が多いかな。

とはいえ、入社試験を受けるとなったら、ある程度知識がないと、何もわからない状態だと、正直落ちるんじゃないかなという印象があるのですが…。

映画・演劇を正直全然見ていませんでした、みたいな人もいますし、あんまり見ている作品の量の多さ少なさをネックに感じないでほしいです。

そんなに詳しくなくても、映画で人や社会が変わることに感動したから自分もやりたいとか、この業界でこんなことをやりたい、という意欲があれば可能性があると思っています。詳しい人だけが入社するってわけではないんです。

お話を伺ったのは「モスラ応接室」。ほかにもキャラクターの名前がついた部屋がたくさん!

今まで全く映画や演劇に興味がなかったとしても、例えばこの記事をきっかけに『こういうものをつくってみたくなった』という人がいたら、その思いをぶつけたらいいんでしょうか。

自分の経験や自分の言葉で、その思いをぶつけてもらえればと思います。

そういう風に語って頂けたらすごく魅力的だし、その人が持っているいろんなものが、実は武器になる会社だと思うんですね。過去の経験であったり興味のあることであったり。いろんな引き出しがある人が東宝をさらに強くしてくれると思うので。

才能を熱意とビジネスで支える

新卒ではどんなところが見られているんでしょうか?

プロデュースするチカラみたいなものが欲しいですね。

絵がかけるとか映像がつくれるとか、表現手法を持っているかどうかは関係ありません。

例えばこのクリエイターのココがすごくユニークだし素敵だから、もっともっと大きくしていきたいみたいな、良さを発見できる力の方が、東宝社員としてプロデュースしていくうえではすごく重要な視点になってきます。

クリエイターさんの表現力は、ビジネスとしてマネタイズ(収益化)させられないと、いずれか行き詰まってしまいます。

自分だったらこういう風に応援できる、こういう風にビジネスとしてマネタイズさせてあげることができるっていう青写真を描ける、描くことにワクワクする学生さんは我々は非常に魅力的だな、ぜひ一緒に働きたいなって思います。

プロデュースする方の一日をHPで拝見しました。

新聞の切り抜きからはじまるということだったんですが、トレンドなどの情報はそこから得ているんですか。

そうですね。社会で何が起きているかということは、この業界ですごく重要になってきます。

しかも、私たちが考えなきゃいけないのは「社会で今何が起きているか」じゃなくて、「ちょっと先にどんな事が起きるだろうか」、「ちょっと先でみなさんはどんなことを求めるだろうか」ということです。

日々更新されていく社会のものにちゃんとついていく力は必要なのかなと思っています。なので、ニュースもちゃんと見ないと、と思いますね。

かわいいゴジラと一緒に記念撮影。ありがとうございました!

編集:阪口実香歩