博報堂 人事担当者に聞く

生活者発想で心を動かせ

2019年11月08日 (聞き手:佐々木 快 伊藤 七海 西澤 沙奈 )

華やかなイメージがある広告業界。アイデアはどう生み出しているの?就活で自分という商品をどう売り込めばいいの?博報堂人事部の沼田宏光さんと西本裕紀さんが選んだ就活生に知って欲しいマストなニュース3本とは・・・。

学生
伊藤

きょうは、よろしくお願いします。

最初に質問なんですが、広告業界の仕事内容を教えてもらえますか?

広告会社の仕事ですね。最初は企業から依頼を受けて、新商品のCMなどを一緒に作るといった領域から始まりました。TV、ラジオ、雑誌、インターネット、各種イベント、色々ありますよね。

西本さん

どうやったら人に興味を持ってもらえるかが知見として備わっているので、マーケティングとかコンサルティングなど、仕事のフィールドはどんどん広がっています。

なるほど。CMだけじゃくて、仕事の領域が広がっているのですね。

オールデジタル化時代

買い物のデータや、GPSの位置情報、インターネットの検索履歴など、様々なデータが可視化される今の時代。博報堂は、多様なデータを収集し、生活者の行動をより緻密に分析する「データ ドリブン マーケティング」に力を入れているという。

学生
佐々木

データ ドリブン マーケティング?聞き慣れない言葉ですが・・・

直訳すると、データを駆使したマーケティング。今、広告会社では大きな革命が起きています。

今までのマーケティングは、人の意識のデータを取るのが一般的だったんです。例えば定量調査だと「すごく好き、けっこう好き、ふつう」などの調査手法から生活者の意識をとらえるやり方は、皆さんが大学でも見慣れた一般的なものではないかと思います。

それが、今は行動データに基づいたマーケティングが一般的になりつつあります。移動ルートや天気とか、その商品を買うまでの理由が、よりリアルに把握できるようになりました。

みんなスマホを使ってますしね。

生活者のことをリアルに想像しながら、マーケティングができるようになったんです。

データを分析して、次の世の中はこうなりますよ、こういう商品を作ったら支持されるんじゃないですかとか。データで語れるようになったのが一番のポイントかな。

どうデータを分析するかが、大事なんですね。

今はデータに強い人と、クリエイティブを生み出す人が打ち合わせしながら進めるのが当たり前になっている。

一番根底にあるのは、どうしたら人の心を動かすことができるか

就活生向けの採用メッセージも、「心を動かすことから、すべてが始まる。」です。

企業が自分たちで広告を作るのと比べて、広告会社の強みは何ですか?

多くの企業は、自社の商品を買う人のデータを集めて分析しています。

一方で、広告会社は、生活者のライフスタイルを丸ごと把握して分析しているのが大きな違いです。

博報堂はフィロソフィー、企業理念として「生活者発想」を掲げているんです。人のことを一番知っている会社になろう

いろんな世代の調査データを数十年分持っていて、生活者のことをよく知っているのが強みになっています。

生活者発想:人を「消費者」として見るのではなく、購買の全体像や、暮らしのさまざまな場面で生じる欲求や行動など、日常生活を営む「生活者」として多面的に捉えようという考え方。

具体的にはどう違ってくるんですか。

例えば、ペンを売る時に、企業はどう機能性をあげるかを考えますよね。広告会社である僕らは生活者がどんな場面でどんなペンを使いたくなるかを考えます。

沼田さん

人間を丸ごと見て、どういうストーリーなら買ってもらえるか、愛してもらえるか、そういうことを考えるのが僕らの原点ですね。

SDGs

健康やまちづくりなど、2030年までに世界が目指すべき17のゴールが設定されている。博報堂は、2016年に国連広報センターと協力し、SDGsアイコンの公式日本語版をクリエイティブボランティアの活動として制作。(詳しくは「1からわかる!SDGs」をご覧ください)

学生
西澤

次のニュースはSDGsですね。

ロコモティブシンドロームという言葉、知ってますか。

聞いたことはあります。

立ったり動いたりといった機能が低下してきて、年を取ると歩けなくなるという問題なんですが、高齢化社会にとっては切実です。そこでロコモチャレンジ」という活動をスタートしました。

みんなで防げるようスポンサーを集めて、大きな活動体を作り、啓発したんです。メタボの次はロコモですよって。

あと「絶メシリスト」

絶メシリスト:「絶やすな!絶品高崎グルメ」を目指して、店を紹介するだけでなく後継者も募集

地方の外食産業を、守るべき「絶メシ」といわれると、なんだか食べに行きたくなりません?

「絶メシリスト」って聞くと、気になりますね。

群馬県高崎市では古くから続く食堂が続けられなくなる事例が増えていて、そういう店を「絶滅危惧種です」ってリスト化して、巡ってみましょうと。

人、モノ、金が地方に集まることが難しい時代、アイデアによって地方を守っていく。これもSDGsへの貢献という見方もできるのではないかと。

これから企業は利益を追求するだけではなく、いかに社会をよくしていくのかという姿勢を評価される時代が一気に加速する

企業の存在意義を追求すると、SDGsに行き着くというのが、博報堂の名クリエイターの弁です。

私たちも、そういう企業を応援したくなりますもんね。

人の心を動かすヒントになると思うんです。博報堂の仕事ではないんですけれど、ドイツの「タンポンブック」の取り組みが世界で注目されています。

えっ、タンポンブック?

ドイツの消費税は19%。食品とか日常生活に必要なものは軽減税率の対象になるんですが、タンポンは対象外なので19%。

生活に必要品なのに高い!って怒った人が、タンポンを詰めた本を発売したんです。本は、税率が7%なので。

タンポンブック:ドイツの生理用品の販売会社が作った、タンポン15個が入った本

本にはジェンダーのギャップや、消費税のこの制度おかしくないですかっていう意見も入れたんです。

この本は大ヒットして、SNSでも拡散していきました。カンヌの広告祭のPR部門でグランプリも受賞し、この問題がちゃんと世の中で扱われるきっかけを作ったんです。

すごいアイデアですね!

SDGsは人の心を動かすアイデアを考えるためにも重要だし、就活生のみなさんが、企業を選ぶヒントになるかもしれませんね

17の目標の中で、自分にとって身近なモノって何だろうって。自分が社会に出たときに、どういう問題を解決したいかを考える参考にしてみるといいと思います。

なるほど、その観点はありませんでした。

世界でみんなが目指すべきゴールですって名前が付いた、みんなが認めたルール、目標だからね。

あと、広告会社ってどうしても激務のイメージがありますが、実際はどうですか?

激務になる時間はたしかにありますけど、ややオーバーにとらえられがちかな。働き方改革も進んでいて、みんなが帰りやすくなるような社内キャンペーンにも取り組んでます。

「朝まで頑張ろうぜ」みたいなのは、ちょっと時代感覚としては古いかな。

キャンペーンってなんですか?

“スラッシュセブン”

スラッシュ・・・セブン?

午後7時以降は打ち合わせを入れないとかね。

あとは、“サイレントテン”。夜遅くまで仕方なく働いている人がメールすることによって、他の人も全員チェックしなきゃいけなくなると精神衛生上、よくないじゃないですか。

だから、午後10時以降は連絡をやめようとか。メールが来ても、返さなくていいよとか。ルールを会社側が決めて、楽しみながら守っていこう、みたいな。

コミュニケーションのプロとして、そういうやり方がいいんじゃないかって(笑)

名付け方がスタイリッシュですね。

時間を記号にしたら、区切りが付くじゃないですか。あさってテストと言われると、まだ余裕あるなと思いません?

でも、残り36時間と言われるとカウントダウン感あって、やらないとヤバイなって。数字が基軸になると、ちゃんと守るようになるので、やっています。

ASEAN市場の発展

博報堂の生活者調査は、日本だけでなくアジアでも。2014年に「博報堂生活総研アセアン」を設立し、今年からインドネシア人の女性がトップに就任。ASEANの人々のライフスタイルを観察し、企業のマーケティングをサポートしている。

東南アジアに注目されているということですが、なぜですか?

インバウンドでも、旅行者ってASEANの人が多いじゃないですか。これからも伸びる市場ですし、ポストチャイナとして、ASEANを見ている企業も多いんです。カンボジアとかミャンマーとか、まだまだ発展するところもあるし。

ベトナムでは中間層が爆発的に増えて、これまでバイクしか買えなかった家庭が、車を買えるようになるそこに一気に市場ができるんですよ。市場として、とても面白いじゃないですか。

現地と日本とのギャップは感じますか?

めちゃくちゃ感じます。例えば、好きな味とか、色とかもそうだし。

どの範囲までを家族と見ているかも違うこともあって。インドネシアでは、親戚まで含めて11家族分まで家族と書いてきた人もいました。

インドネシアの人が書いた家族の概念図 親戚含め11世帯分も

でも、ASEANの人でも、心が動かされたら行動する。物を買うとか好きになる原理は一緒だから僕たちが現地に根を下ろし、生活者の考えていることを掘り下げているわけです。

自分を就活でPRするためには?

ニュースと離れてしまいますけど、就活生は、自分の魅力を売り出さなきゃいけないわけですが、上手な売り出し方ってありますか?

就活もマーケティングだと思うんです。自分にしかない魅力って何だろうって、自分をマーケティングする視点を持つことがすごく大事

別に「学園祭の実行委員長として、クリエイティビティーをこう発揮しました」という人である必要はないと思います。

それよりは、自分にしかない個性を持っている人のほうがいいですね。

自分の心が動いた瞬間を知っていれば、人に対して、これって面白いですよねって、共感が得られるような話し方ができると思うので。

どうすればクリエイティブな人になれますか?

クリエイティビティーは全員にあるので、それにトライしたいという気持ちを持って欲しい。アイデアの出し方とか考え方は、会社に入ってからでも鍛えられるので。

ただ、心を動かすことから、すべてが始まる。」と言っている企業なので、人のことに興味がない人は、ちょっと難しいかな

人が好きとか、コミュニケーションが上手とかサークルの代表とか、そういうことじゃなくて、暗くて無口でもいいんです。人の心を動かすってことに興味を持って欲しいな。

貴重なアドバイス。ありがとうございました。