2020年04月23日
(聞き手:伊藤七海 井山大我 田嶋あいか)
色鮮やかなフリース。暖かいヒートテック・・・。これまで数々のヒット商品を提供してきた「ユニクロ」などを運営する「ファーストリテイリング」。グローバルに事業を展開し、成長する中、何を見据えてどのような人材を獲得しようとしているのか。人事担当者が知ってほしいと選んだマストなニュース3本とは?(※新型コロナウイルスの感染拡大前に取材しました)
よろしくお願いします。
はい。よろしくお願いします。
“通年採用”という独特の採用を行っているとお聞きしました。ニュースの前に、これについて教えてください。
大学1年生から4年生まで、どの学年でも面接に来ていただけるシステムになっています。学生には「今はこれに集中したい」「留学に行きたい」といった時期があるはずです。
しかし、今の日本では「この時期は日本にいて、就職活動をしなければいけない」という流れが主流になっています。通年で面接に来ていただける事によって学生の自由度が上がるというか、いろんな形のチャンスを提供したいという考えに基づいてます。
どのようなメリットがありますか。
正直なところ、企業側のメリットってあまりないんですよね。我々も内定を出したからといってすぐに決断してほしいとは全く思っていません。
どのタイミングで、どのように考えるのか、それは学生の自由だよね。という考えが大前提です。それが少しでも学生の皆さんのためになればいいなと思っています。
もう一つ気になることがあって、社員の方々が普段どういったお仕事をしているのかあまりイメージがわかなくて…
いつもされている仕事内容を教えていただきたいです。
まず新卒で入社すると、基本的には店舗に配属されます。ファーストリテイリングという会社は、お客様と接する店舗が一番重要な場所だと考えています。まずは販売員として一人前になるために店頭に立って、接客する仕事から始めてもらいます。
その後はどうなるんですか?
「ヒト・モノ・カネ」のマネージメントという分野に仕事のフェーズを移していくので、“店長・責任者”としてお店を任せられるレベルに成長してもらいます。
私たちは、店長を経営者として捉えているので、まずは店長を目指していただくというのが基本的な流れです。
長くなりましたがニュースのほうに移っていきたいと思います。まず一つ目に東京オリンピック・パラリンピックを選ばれていますが理由を教えてください。
学生の皆さんに、世界がどう変わっていくのか、日本でどんな変化が起きて、そこに自分がどう関与していくのかを考えていただくいい機会なのかなと思って選びました。世界が日本を見る目がきっと変わっていくだろうと思います。
東京オリンピック・パラリンピックに対して、何か取り組んでいることはありますか?
やはりインバウンドのお客様が増えて、それによって日本の市場においてもニーズが拡大したり、多様化したりすることを想像しています。
その中でいかに私たちの商品を選んでいただけるか、チャレンジしたいと思っています。
お客様が多様化することに対して、店舗はどのように変わっていくんですか?
お客様が欲しいものが何なのか。“そもそも”をちゃんと把握する。これが一番難しいんですよね。
それを把握して、商品として具現化し、タイムラグなくお届けするのがまた難しいところなんですけれども…
最初に、お客様が“何を求めているかを把握する”ここに力を入れています。
今は新型コロナウイルスで、人の移動が制限されています。オリンピック・パラリンピックが終わったあとに果たして訪日外国人は増え続けるのか、疑問に思うんですけど?
正直なところ一寸先は何も見えない状況ですよね。ただ私たちはグローバルに商売を展開しているので、日本に来なくても商品を買える環境を整えています。
海外の店舗が増えているということですか?それとも、オンラインで買える環境が整っているっていうことですか?
どちらもですね。ユニクロは2年前に海外での売り上げが日本での売り上げを上回りました。世界中のお客様に私達の商品を届けられるような環境を作っているところです。
オリンピックやパラリンピックって、日本をアピールする場でもあると思うんですけど、衣服に関していうと、日本らしさって何だと思いますか?
機能美というか私たちの商品ってシンプルなのが特徴なんです。その中でもすごく細部にこだわっている。それってまさしく日本らしいと思うんですよ。
どういうことですか?
商品を買っていただくお客様のことを考え抜いて、微妙な色の違いや生地の違いにこだわり抜いて作るところがすごく日本らしい部分だと思います。
同じようなデザインでも細かいところがちょっと違って、色んな商品展開があるイメージなので確かに。
うん、納得。
次に選んでいただいたのがサステナビリティの問題、なぜこれを選んだのでしょうか。
サステナビリティ
「持続可能性」という意味。ファッション業界では近年、自然環境を意識した生産の動きが注目されている。
ユニクロでは、ペットボトルとか再生資源を使った商品を展開しています。でも、ただ商品を再生資源から作ればいい、という事ではありません。
着ていただくお客様に満足度の高いものをしっかり作ることと、更に安価で買って頂ける環境を作ること。どちらを強くやるとかではなくて、両輪として進めていることは強調したいですね。
その両輪ってすごく難しそうだなって思いますけど、どうやっているんですか?
もちろん簡単ではないです。永遠に着られる服ってないじゃないですか。
使っていたら、傷みますよね。
アパレルって染めたり、運んだり、それを着ていただいたりその後、処分される…
そういうサイクルを繰り返すビジネスなんですよね。
だから、ビジネスとして存在しているだけで地球に対してある程度ダメージを与えているはずなんです。
その中でも、無駄なものを作らず、運ばずということをやれば、無駄な資源を使わずに済みますし、ビジネスとしても無駄がなくなるので、利益率は上がるはずなんです。
うん、なるほど。
そうやっていく事で世の中の資源が保たれるので、調達がしやすくなるはずです。地球環境を考えて、どちらとも高いレベルで実現していけば、理論的にはどちらもうまく回るはずなんですよ。
ただ、口で言うほど、簡単なことではありません。企業としてのやる気も問われると思います。
この服は具体的にどういう再生技術が使われているんですか?
100%ではないんですけど回収されたペットボトルから作ったポリエステル繊維で作ってるんです。
えー普通だよね、普通に気持ちいい。
プラスチックって言われても分からないです。
テニスの錦織選手のユニフォームにこれを提供したんですけど、普通に売ってる商品と全く同じ素材で作っています。
えっ!錦織選手が着ているユニフォームと店舗で売っている商品は、一緒なんですか?
柄はちょっと違いますけど、素材は全く一緒です。
入社してほしい人材はサステナビリティという方向性に共感していることが大事だと思いますか?
本当にその通りだと思います。自分がこの先何十年とか、1日のうちの何時間とかを過ごす場所を選ぶときに、会社がやろうとしていることに心の底から「好きだな」「やりたいな」と思えないと息苦しくなると思います。
会社を見る時には、自分がどういう生き方をしたいか。自分は何を大事にしたいか。そういうことを考えるのが大事だと思います。
最後に選んでいただいたニュースがダイバーシティーや働き方に関してということで、こちらを選んだ理由を教えてください。
これも大学生の皆さんに知っておいていただきたいと思ったので。働き方はこれからもどんどん変わっていくと思うんですね。
今のこの会社の状態が一番いい状態ということは、きっとないと思っていて。プライベートを含めてこのあとの30年、40年をどう生きていくんだろうって、仕事も生活の一部として想像をしてみたらいいんじゃないかなと思います。
具体的な取り組みは何かされていますか。
一般的なフレックスタイム制、男女問わず育児休暇の推奨、在宅勤務とか、一通りの制度は整っています。
自分で働き方を選べる選択肢が広がっているということですね。
自分の仕事をどうやってやれば、1番パフォーマンスが上がるのかという事を、社員1人1人が自発的に考えることが出来る環境を整えるべきだろうと思います。
私はあまり気にしていませんが周りは、転勤や今後、結婚してからどうやって働くか、そういうことを気にしている学生が多いです。
藤原さん、ご自身の経験を踏まえてこういう制度を見た方がいいとか、アドバイスあれば教えてください。
これは生き方の問題になってしまうんですけど、私も結婚しています。社内結婚ですが、夫とどういう働き方をしようか話し合って、その中でお互い納得し合ってやっています。
その時その時で話しをしながら埋めていっているので、わりと柔軟にできるんじゃないかなと思っています。
私は、転勤とかもありで幅広いことをしたいなと思っていたので安心しました。
楽しいですよ、転勤も。
それも大事だと思いますよ。あまりネガティブになり過ぎずにポジティブな姿勢はとても大事だと思います。それができる時代だからこそ、それを求めていくべきかなって思ったりしますけどね。
日本にはアパレルっていっぱいあると思うんですけど、その中でユニクロの強みというか、ユニクロが目指している世界はどういうものなんですか?
私は、LifeWear(ライフウエア)というコンセプトだと思っています。
ライフウエアですか?
私たちは、お客様が「何を欲しているか」から発想して作っています。ライフウエアと言っているのは、服はそれ自体に個性がある訳ではなくて、その人の個性、それを引き立てるためのツールであると思っています。
性別とか国籍とか宗教とか、そういったさまざまなボーダーっていうところを超越した形でどんな人にとっても全てのあらゆる人によいもの、良いカジュアル、そういったコンセプトにしています。
なるほど。
そう考えるとお客様の多様性に対応していきながらも、シンプルかつ機能性を満たしているものがユニクロの差別化要因だと思います。
どんな風に服を着て欲しいですか。
「こういう人に着てほしい」などと、あえて制限しないことがわたしたちの存在価値だと思っています。結果として、全身ユニクロになったら、それはすごくありがたい状況です。それが目指せたらいいなって思いますね。
編集:松井晋太郎