高島屋 人事担当者に聞く

必要なのは「共感」と「アンテナ」

2019年04月26日 (聞き手:佐々木快 高橋薫)

180年以上の歴史を持つ伝統ある百貨店、高島屋。いま、仕事に欠かせないのは「トレンドに敏感になること」だと言います。人事・採用育成担当の齊藤諭さんが選んだ注目ニュース3つは…

EC市場規模が年々拡大

ECとは「イー・コマース」。ネットを通じたモノの売り買いのこと。
企業から個人消費者向けのECの市場規模は7.8兆円(2010年)→16.5兆円(2017年)と2倍に。

フリマアプリやネットオークションなど、個人対個人の市場規模も急速に拡大。フリマアプリの推定市場規模は4800億円。(2017年度経済産業省調査)

学生
佐々木

1つ目のニュースはECに関してですが、選んだ理由を教えてください。

ECの市場規模の拡大は以前から言われていましたが、最近その流れが少し変わってきていると思ってます。皆さんはネットショッピングされますか。

齊藤さん

学生
高橋

しますね。何が変化しているのですか?

何が変わってきているかというと「オンライン」と「オフライン」、オフラインというのは実店舗のことで、この「シームレス化」に注目しているので選んでみました。

「シームレス化」とはどういう意味ですか?

「垣根がなくなっている」ということです。これまではデジタルとアナログを分断して考えるのが主流でしたよね。でも今そこの垣根が無くなってきている状況です。

日本国内の通販サイトも実店舗を出すところがでてきました。

ネットショップが消費者とのリアルな接点を持つために実店舗の重要性というのを再認識しているんです。

なるほど。ECについてどんな課題があって、どういう取り組みをされていますか。

ネットショップの方が実店舗に進出しているということは、私たち実店舗を得意とする百貨店はやはりEC事業を強化していかなければいけないと思ってます。

例えば、百貨店が誇る上質な品ぞろえを武器に、実店舗とバーチャルの相互補完機能を発揮して、どこでもいつでも買えるようにする。

地方のお客様で百貨店になかなか来られない高齢のお客様でも買えるようにしたり、店の営業時間外の時間帯でも購入できるようにしたりというのが第一前提かなと思っています。

ネットショップのライバルが多い中で、強みは上質な品揃えなんですね。

まずはそこですね。特に百貨店はお中元とかお歳暮とかのギフトがものすごく強いので、日本の昔ながらの文化を、ネットを通してもいかにお客様に愛していただけるかがポイントかなと思っています。

インターネットでの販売は、今後、どんどん大きくしていきたいのですか、それとも軸足は今後も実店舗に置いていくのでしょうか。

まさにそこが重要な鍵なんですね。最終的にはどっちかに偏るわけではなくて店舗との相互補完機能にしたいと思ってます。

店舗で置けない在庫や商品に関しては、ネットで買えるようにする。ネットで確かめられない材質や詳しい商品知識は店舗で確認をしてもらう。リアルとバーチャルできちんと補える役割をするというのが当社の目標ですね。

「オムニチャネル」と言ったりもします。お客様に触れるチャネルが1つだけでなく、さまざまなチャネルを使ってお客様に価値を提供するという意味では、相互補完がキーワードになります。

オムニチャネル:実店舗だけでなく、カタログ、ECサイト、アプリ…多様な流通経路で企業が消費者に商品を届けること。どの方法で商品を購入しても受け取り方を選べるなど、複数のチャンネルを活用しアプローチする戦略のこと。

上質な品揃えがあれば、年齢層が高めの本物志向の消費者が百貨店を利用すると思うんですが、若年層はどうですか?

そうですね、どうしても5、60代のお客様が多数を占めますので、若年層へのアプローチをどんどん強化を、と思ってます。

百貨店を利用しないネットユーザーにいかにECサイトを入り口として使用してもらえるか、も目標として掲げてます。

あとは50代~70代のお客様が使用される百貨店の隣に、若者向けのブランドやセレクトショップを入れた建物を融合させることで、若い方にも買い物していただくことに取り組んでいるんですよ。

若い人向けの旬な流行、トレンドをとらえた品ぞろえも充実させて、取り込めるようにしています。

デジタルイノベーション

社会や産業において、デジタル化が進んでいくこと。人工知能(AI)など最先端の技術をビジネスや働き方改革にどう活用していくか注目が集まっている。

2つ目のデジタルイノベーション、こちらはなぜ選ばれたのでしょうか。

百貨店は接客が中心で、デジタルは程遠いイメージがあると思うんですけど、実はそうではないんです。

お客様との接点づくりや買い物の利便性向上、そして従業員の業務の効率化も含めて、デジタル技術を導入していくことに、今、取り組んでいますので、こうしたニュースに敏感な方にも来ていただきたいなと。

デジタルの流れにも敏感になってほしいと。

そうです。どういうデジタルの変革が起きてるのかにも興味を持っていただいて、百貨店で何ができるのか考える、そういったアンテナの高い方に来ていただきたいですね。

業務の効率化という点ではどんな取り組みをしていますか。

例えば皆さんもアルバイトをやっていると、シフトがあると思いますが、それを自動的に組んでくれるシステムを導入するなど、今まで人がやっていた作業をコンピューターでできる事に取り組んでいます。

デジタル化が進んだ恩恵をご自身が感じることは?

最近は離れた場所で会議する時も全部ウェブで会議をしますのでその分の移動時間がなくなります。余った時間でさらにプラスの仕事ができるようになったと思います。

店頭での接客ではどんな取り組みをされているんですか。

百貨店って各階に喫茶店があるんですけど、混雑状況が一目でわかるデジタルサイネージを建物入り口に設置した店舗もあります。

各階回らなくても、「あ、ここ空いてるから行こう」とダイレクトに行けるという利便性向上の取り組みをしています。

便利そうですね。

カメラが列の並び具合を撮影して混雑状況を自動的に判断して「〇、△、×」と表示されて、わかるようにしているんです。

お客様に、限りある時間で、効率的にお買い物して頂くということも目指さなきゃいけないと思っています。

デジタル化が進む時代であっても、高島屋が発揮できる強みというのはズバリ何でしょうか。

これは僕の意見なんですけど、やっぱり「共感」だと思ってます。

「共感」ですか。

お客様の困りごとやニーズにいかに共感できるかっていうのはどこまでいっても人にしかできない。そこがサービスや接客の基本だと思います。

「今日は寒いですね」とか試着してみて「お客様、お似合いですね」とか「そのスカートだったら、上はこんなジャケットがいいんじゃないですか」というのは、人間にしか気づけないことかなと。

お客さんもそれを人間に言われたら、「そうなんだな」と思ってくれるでしょうし、これからも貫いていきたいです。

齊藤さんは、店頭ではどんな接客業務をされていたのですか?

私は入社後3年間、横浜店で日本酒を販売していました。

共感の大事さを実感したのはどんなときですか。

お客様がおいしいと思ったお酒と私がおすすめしているお酒がマッチしていた時や、「あれおいしいですよね」、「こんな良いのを見つけたんです」みたいに共感できた時ですかね。

その後もずっとそのお酒を気に入って下さって、リピートにつながることがありました。人と人とのつながりから生まれる心の動きってやっぱり大事だと思います。

人生100年時代 変わるライフスタイル

2018年9月時点で100歳以上の高齢者は全国で6万9785人。「平均寿命」も男女とも80歳を超え、特に女性は約87歳になっている。

3つ目のニュースは人生100年時代ということですが。

よく聞くワードだと思うんですけど、皆さん何歳まで生きる予定ですか?

80歳!

80歳ですか(笑)もっと長生きできるかも。

平均寿命がのびているという事はそれに応じてライフスタイルも変わってきますよね。皆さんのように大学生だと、大学まで教育を受けて、仕事をして、老後を迎える、この3ステージがこれまで基本でした。

でも、100年生きられるとなると、もう1回教育を受ける機会が出てきたり、会社も1社だけじゃなくて2社3社が当たり前になってきたりという事があると思うんですよね。

変化にいかに対応するかというのがまず1つ。

それは、本当に大きな変化ですね。

働き方改革が進んでますよね。例えば残業を減らそうという取り組みがあると、今まで残業をしてた分、余暇になりますね。

24時間のうち、10時間仕事をしていたのが7時間になったら、3時間をどう過ごすかが大事になってきます。

そうですね。

普通の企業であれば社内で働き方改革に対応していればいいと思うのですが、百貨店はライフスタイルを提案しなきゃいけない業種ですからね。

新しいニーズに対して、百貨店としていち早くとらえて形にしていくことが求められてと思ってます。

トレンドをつかむのが大事なんですね。

インターンシップに来た就活生のみなさんの感想で「保守的な会社だと思っていたけど、革新的なんですね」とか「新しい事に取り組まれているんですね」という声があって。

百貨店って、古きよき伝統を守るだけではなく、流行を発信しなきゃいけない場所ですから、トレンドは大事だと常に思っています。

日本酒を販売されていた時も、トレンドの大事さを実感したことはありましたか。

例えば新聞や雑誌でランキングがどーんって出ると、うちで扱えるものはなるべく店頭に準備しておいて、「あ、うちで扱ってますよ」と言えるようにしたいと思っています。

齊藤さんは日本酒がお好きなんですか?

実は僕、全然お酒飲めないんですよ。

えー。そうなんですか。

でも、苦手だからこそ分かる繊細な違いもあって、利き酒はちょっとの変化でもわかるんです。日本酒担当になった当初はコンプレックスがあって、お酒が苦手でやっていけるのかなと不安でした。

でも、当時の上司に「苦手だからこそわかる違いがあるんだよ」って言われてから、お客様にも自信を持っておすすめできるようになりました。

その後、ちょっと強くなりましたけどね、さすがにね(笑)

苦手だからわかる違いって初めての気づきでした!苦手なものって避けがちになりますよね。

苦手だからこそ勉強すると意外とおもしろかったりするんですよね。お酒の深みがわかるようになったし、意外とはまっちゃうというのはあると思います。

やはり広く高くアンテナをはることが重要ですね。きょうは、ありがとうございました。