三井物産 人事担当者に聞く

つながりによって付加価値をつける

2019年04月22日 (聞き手:勝島杏奈 高橋薫)

世界各地で事業を行う総合商社。でも正直、何を仕事にしているのかわからないところも。AIやIoTなど新たな技術で世界が大きく変わっている今こそがチャンスだと言います。変革の時代に商機をつかみとるという仕事の実態とは。

取材対応してくれたのは、人事採用担当者の大倉裕史さん。2000年入社で化学部門を中心に歩んできたそうです。野球で鍛えた持ち前の体力で世界を相手にしてきました。

学生
勝島

商社って学生から人気がありますが、具体的な仕事のイメージが湧かなくて。はじめに仕事内容から教えてください。

商社というのはビジネスになる要素があるところにはどこにでも入っていける存在かなと思います。色んな業界や産業の方々と一緒に仕事をしますし、新しい付加価値を生み出したり、国や企業の役に立つこともできます。

大倉さん

学生
高橋

具体的にはどういうことでしょうか。

商社は物の売り買いだけに留まらず、我々が持ってる引き出しの中からニーズに応えられるモノがあれば、何でも提供していきます。

各種の業界と違うのは様々なジャンルにまたがるネットワークを持っているので、ある地域でお付き合いのあるパートナー企業さんと別の地域で何かやりませんかとか、繋がりを持ちやすい自由度の高い存在なのかなと思います。

よく「商社マン」っていわれると思うんですけど、「商社ウーマン」はいるんですか?商社って男の人の仕事のイメージがあって。女性ってどうなんでしょうか。

今は「商社マン」っていう言葉を使わなくなってきていて「商社パーソン」って言っています。

へ-!

「商社マン」というと性別が限られてしまいますけども、女性の担当職(いわゆる総合職)もどんどん増えてきています。

僕は2000年入社ですけど、大体、転勤がある担当職として入った女性の割合が10パーセントくらいでした。2019年4月入社の社員は女性が約30パーセントです。

インドネシアに日本支援で地下鉄開通

このニュースはどうして選ばれたのですか。

今回オールジャパン体制といってインドネシアで鉄道システムを三井物産がコンソーシアムリーダーとしてとりまとめをしました。

コンソーシアム?

コンソーシアムって複数の会社で一緒に提案をまとめることです。

たとえば神戸製鋼や東洋エンジニアリングなどの日本企業が複数いてその取りまとめをしながら、日本政府の援助資金も活用してインドネシアに日本の優れた交通システムを提案し、導入したと。

コンソーシアム

大規模な事業や開発のために企業や金融機関、組織などが連携して連合体を組むこと。国内外の枠を超えて提携することもある。

特にどういった部分に注目したらいいんでしょうか。

日本には優れたものづくりの技術がありますが、それだけではなくて、信頼性のある運行システムも大事なんです。海外では電車が1分遅れましたと謝罪をすることはまず有り得ません。

たしかにそうですね。

でも日本はそこまで正確にやる。

やりすぎなところもあるかもしれませんが、システムへの信頼が勝ち取れる日本の良いものをインドネシアに導入できたのは我々としても非常に印象深いニュースかなと思います。

日本のインフラ輸出

海外に鉄道や水道、橋や道路などのインフラ関連の設備やサービスを輸出すること。日本の高い技術力だけでなく、信頼性のある運用手法もあわせて輸出することもあり、政府の成長戦略の1つとしても位置づけられている。

そもそもなぜインドネシアなんですか?

インドネシアはものすごい人口が多い国です。
(2018年時点でおよそ2億6千万人)

まだまだ経済成長が見込めるので、日本だけではなく世界からいろいろな企業がビジネスを求めて入ってきています。

大きな市場というわけですね。

そういう成長がある裏側には必ず交通渋滞とか色んな社会的な課題が同時に出てきてしまいます。

この先の成長も支援していく上では交通面での課題を解決するのは意義があることだと考えています。

これまで複数の企業のお話を伺ってきたんですけど、外国のインフラ整備の話を聞くのは初めてでした。

もちろん日本にもチャンスはたくさんあるんですけど、海外でもビジネスをやりませんかとか声をかけてもらったり、我々から提案をしていったりが日々起こっているので、自然と海外に話がいってしまったという感じですかね。

マツダスタジアムでの飲食店経営

マツダスタジアムの経営

2009年に新たにオープンしたのをきっかけに、バーベキューができるフロアや寝そべりながら観戦できるソファー席などユニークなシートを設置。アメリカの大リーグの手法を取り入れて飲食サービスも充実させるなどユニークな取り組みでチームの売上高が6年連続で増加。飲食部門には三井物産も運営に関与している。

商社がスタジアムの経営に関わっているというのは初耳でした。このニュースを選んだ理由を教えてください。

ビジネスとして見るっていう前にやっぱりエンターテイメントですよね。マツダスタジアムには年間220万人以上の人が訪れている。

これってすごい事だと思いませんか?それだけの人が楽しめる場所とか、生活が潤える場所が増えたらいいだろうなって考えているわけです。

今は娯楽もいっぱいあるし、いろんな選択肢がある時代ですけども、楽しそうだな、行ってみようかなって思えるものを作れているとしたら嬉しいことなので、このニュースを選びました。

家のテレビでも野球を観られるのに、球場に足を運んでもらうってある意味再開発的な目線でもあるのかなと感じました。

この案件のスタートはうちの社員がメジャーリーグのスタジアムってすごい雰囲気が良いと感じたことで、それを日本でも何か実現できないかなっていう事でアプローチしたのがきっかけですね。

今やられていることも数年後には当たり前の世界になっているかもしれないと思うんですが、どういう姿勢で取り組まれていますか。

我々が主導して進めていけるものではないなと感じていて、球場であれば、やっぱり主役は選手であったりとか、チームが強くなるとかファンと一体になって皆で喜べるというものがあって、そこにどういう場を提供していますかということだと思います。

このニュースにおいて学生に特に注目してもらいたい点があれば教えてください。

もし一度もそういった場所に行ったことがない人がいれば、ぜひ一度足を運んでもらいたいですね。

こういうのは1度行ってみないと分からないし、今は本当に色んな情報が多くて、それを聞いて分かったつもりになっちゃうことがすごい多いと思うんです。

でも、一度そこに足を運んで空気であったり音を感じてみるとやみつきになっちゃうと思いますね。

百聞は一見に如かずですね!

ぜひ行きましょう(笑)

空飛ぶクルマ

出典:経済産業省ウェブサイト(https://www.meti.go.jp/press/2018/12/20181220007/20181220007.html)

空飛ぶクルマ

ドローン技術を応用し、電動で飛行と離着陸ができる機体のこと。交通渋滞の解消や物流サービスの効率化などにつながるとして世界中で開発が進められている。政府も2020年代には離島や山間部、都市部での利用を目指している。

最後は空飛ぶクルマなどの近未来の技術に関するニュースですね。

こういうものがあったらいいなというものを持ってみると、そこに向かって何をやったらいいのかを考える事ができるようになると思うんです。

よく言うのは「変化が起こっている時にチャンスがある」ということ。

例えば今はこれまでの世の中の秩序が壊れて、産業の垣根がなくなってきています。そういうときに従来の枠組みに制約を受けずに、ビジネスを提案してくとか。

たとえば、私たちにとってスマホってすごく当たり前で、必要不可欠だったりするんですけど、20年前ぐらいって今では想像できないこうあったらいいな、というものだったんですか?

20年前はiPhoneもないですし、携帯もパカパカやるものしかなかったですね。

大きな画面がついて携帯電話機能だけでなくて通信で動画も自由に滑らかにみられるというのは全く想像もしていなかったというか。

そういった新しいものができる時って商社として、「どう関われるのか」といった話になるんですか?

車自体のところでいくと今は車体の軽量化があったりとか。ボディで一番多く使われているのは鉄鋼製品ですけれども、炭素繊維を使ってもっと軽い車を作ろうとか。

電気自動車の電池をいかに安く一番最適な場所で作るためにはどうしたらいいのかというところに我々が繋ぎ役といいますか、関わっていくやり方もあります。

これまでにも新しい技術の変革期に成功したことはあるんですか。

インターネットもその一つですね。プロバイダーと契約しないとインターネットを使えない時代だったんですよ。

プロバイダーを三井物産が海外から連れてきて初めてチャレンジをしたりとか。新しい技術、新しいサービスを導入してくる所に、ビジネスチャンスありということで、関わってきた歴史はありますね。

新しいことへの挑戦って期待が大きい分リスクも伴いますよね。全部やるわけにもいかないし、その中でどうやってビジネスを見極めるんですか。

リスクは必ずあるし、リスクがなかったら誰でもやっちゃいます。我々は会社のDNAとして、「挑戦と創造」っていう言葉、これを文化として持っているんですね。

とにかく我々は新しいことに挑戦をしていかなくちゃいけない

もちろん何でも挑戦すると収集がつかなくなりますが、まずは提案を出してもらって、これをやる事によってどういう将来が生まれるんですか、どういうことに近づいていけるんですか、ということを皆で考えています。

ということはトレンドには常に敏感に情報収集されているんですか?

そうですね。情報収集は我々の生命線というか。

世の中とつながっていないと、動きの変化に疎くなっちゃうので、常にアンテナを張っているっていうのが大事かなと思います。

どうやって情報収集されてるんですか。

NHKのニュースを…(笑)だけではなくて、それだと皆と同じ情報になってしまうので、海外を含めてネットワークもそうですし、今って情報が溢れているので、その情報が本当なのかどうかを見極める力が大事になってくると思いますね。

情報の取捨選択が大切なんですね。

それを可能にするのって直接、人と会って話を聞くであったりとか、この情報を一番正しく見極められる人って誰なんだろう、という人的ネットワークしっかり持っておく事とか。

そうすることで氾濫する情報に惑わされずに自分たちがやるべき事、今実際どこまでこの動きが進んでいるんだろうってことを把握できるのかなと思います。

学生のときにこれをやっていて役に立ったとか、学生の内にこれをやっていたことが今の自分の強みになっているなということはありますか。

いつも仲良くしているグループから一歩出るってことですかね。

僕は高校時代から一緒に過ごしている心地いいグループがあるんですけど、そこから一人離れてアルバイトして。そこで貯めたお金使ってバックパッカーとして一人で旅行とかしていました。

自分が居心地が良いところは楽しいですが、もう一つ別の何かをやってみる。

自分のものの見方とか考え方を広げる意味でも役に立ちましたね。それをしてなかったら、恐らく海外に繋がる仕事したいなとか思わなかったでしょうし。

就職前と後で企業イメージのギャップってありましたか。

ここまで自由度が高いのかとか仕事を楽しくやっている社員が多いのかっていうことには驚きました。

「俺の仕事ってこうやって世の中に影響を与えているんだよね」っていう風にずっと話してしまう人が多くて。入社してみると、そういう人が予想以上に多かったなと。

私は英語が苦手なんですけど、商社の中で英語ができなくても勝ち抜いていく方はいらっしゃるんですか?

英語は話せるに越したことはないですし、仕事する時には、相手の言いたいことをしっかり理解できる、こちらは伝えたいことを伝えられるってコミュニケーションはできないといけない。

ただ、みんなが流暢な英語を話すとか抜群の英語力かといわれると、それはもともとできなくて、一生懸命努力して何とか話せるようになったという人も結構います。

大切なのはどういう表現をしたら相手に一番刺さるかなとか、伝える力、相手を理解する力

英語という語学でなくて自分を表現し、さらに相手への想像力を働かせられればコミュニケーションって成立するんじゃないのかなと思います。