スタバ 人事担当者に聞く

目に見えない価値を提供するために

2019年04月18日 (聞き手:工藤菜摘 勝島杏奈)

全国47都道府県に約1400の店舗を持つスターバックス コーヒー ジャパン。店を利用したり、アルバイトをしたり、学生にとっても身近な企業です。採用を担当する富田早紀さんが選んだマストなニュースは・・・。

幸福度ランキング 日本は58位

学生
工藤

最初は幸福度ランキングですが、どういう意図で選ばれたのですか?

1つ目に幸福度ランキングを選んだのは、純粋にスターバックスという企業ができることがまだまだあるなってすごく考えたからです。

富田さん

幸福度ランキングは、国連が、1人当たりのGDP、健康に生きられる年数、社会の自由度などを数値化しランキングにしたもの。ことしは、フィンランドが2年連続で1位になるなど福祉や教育が充実している北欧諸国が上位を占める。日本は去年より順位を4つ下げて58位。

コーヒー屋さんとかカフェを経営している企業というのが皆さんのイメージだと思うのですけども、コーヒーやカフェという空間を通して人々の日常に潤いとか活力を与えたいなって、日々そういう事を考えて仕事をしているんですね。

商品だけでなく空間も含めて提供したいと。

日本に上陸して今年の8月で23年になりますが、少しずつ規模も大きくなってきました。いまでは、47都道府県に約1400の店があり、お客様の人数も増えています。

常にお客様の事を考えて頑張ろうとか、お客様に来てよかったなという前向きな気持ちになれる瞬間をちょっとでも提供していくこと。

「Our Mission and Values」というスターバックスの企業理念と行動指針がありまして、人々の心を豊かで活力あるものにするためにというのを成し遂げたいミッションにしています。

今までも変わらなかったのですが、これからもそこだけは変えずに、また、規模が大きくなるからこそ、影響力もあるので大事だなと考えているところです。

「Espresso」(エスプレッソ)という名前の会議室で取材を受けてくださいました。

全国への出店ですが、以前、鳥取県に店舗ができた時も大きなニュースになりましたが、地方に出店される時も、コミュニティーに馴染むための工夫をされていますか?

最近は地域の象徴となるようなお店を出す事が増えてきたんですが、コミュニティーと馴染むデザインを工夫するとか、地域で作られた木材でお店をデザインするとかなど意識しています。

各地の特徴ある店舗の写真も飾ってありました。

そうした取り組みも、幸福度につながるのでしょうか?

直接的に幸せを感じるのは個人差があると思うのですよね。一概にこうするから誰かが幸せになれるってことは言えないと思うんです。

ただ、スターバックスって最近だったらどこにでもあるし、ある意味日常ですよね。でも、お店に入るとちょっと非日常を感じられる良さがあると思っているんです。

頑張った自分にご褒美あげようかなとか、明日からまた1日頑張ろうかなとか、幸せになるための活力を提供できたらいいなと考えています。

めちゃめちゃわかります。私も落ち込んだ日に、たまにはちょっとリッチにフラペチーノ飲もうかなとか考えます。

私たちが提供したいものって、目に見えるコーヒーとかお店ではなくて、それをツールとして目に見えない価値を提供したいと思っているんです。

働き方改革

4月1日から働き方改革関連法が施行された。時間外労働に上限が設けられるなど、多くの企業で働き方が大きく変わろうとしている。

学生
勝島

働き方改革といっても色んな側面があると思うのですが・・・。

そうですよね。潤いや活力を提供することが私たちのビジネスで、提供する側であるパートナー(※従業員のことをスターバックスではこう呼んでいる)が生き生きと働いて活力がないと、お客様にも活力を与えることはできないと考えています。

ただ単に、法律が変わるから残業するなというだけではなくて、働く人たちが生き生きと活力をもって働ける環境を整備していくことがすごく重要だなって考えているので、取り上げました。

活力がある環境づくりについて、どんなことを心がけているのですか?

スターバックスって社員の人数よりも圧倒的にアルバイトで働いているパートナーさんの人数が多いんです。

ここで働きたい理由を持ってもらうというか、自分が大切にしている価値観とスターバックスが大切にしている価値観がどんな関わりや共通点があるのか。

そういったことを考えていただく時間を、まず新人教育の最初の一歩として取り入れているんですね。

スターバックスは、アルバイトも含め全従業員4万人を対象にアンケートを行っていて、満足度89%という結果だそうです。

そうなんですね。

大切にしている価値観に共感できるから一緒にやっていきたい、といったつながりを深めていくことが大事だなと。

会社がやれと言うからやるのではなくて、自分がこうしてみたいからという気持ちで、主体的に動けるパートナーが増えると、お客様によりよいサービスが提供できると考えています。

それは以前からずっとやってきたものですか?

はい。シアトルから始まった会社なんですけど、そこは日本だけではなくて、スターバックスの文化のひとつかなって思っています。

今回、働き方改革の法改正で意識したわけではないんですね。

もちろん国のルールが変わるので、そこに適応していくことは企業として絶対的に必要だと思うんですよ。でも、それだけではないです。

企業が成長すると必然と従業員の数も増えるので、人数が多くなっても一人一人がしっかり企業とのつながりを持ち続けていけるような仕組みや環境を整備することが大切だと考えています。

終始、笑顔で取材に応じてくださった富田さん。素敵なマイタンブラーをお持ちでした。
学生リポーターも美味しいコーヒーを頂きました。

アメリカ生まれの企業ですよね、日本でも実力主義の文化なのですか?

アメリカで生まれた会社だから、そういう部分が色濃くあるんじゃないかというイメージですね?

これは、私の個人的な考えになってしまいますが、成果を、売上高とか、何か良いメリットを生み出せたって目に見える数値だけではなくて、それまでのプロセスも評価の指標としている会社だと思います。

トップダウンな方法でお店で売り上げを立てたとしても、そこのプロセス「Our Mission and Values」に即してないんであれば、そこは違うよねって上司からフィードバックが入ります。

逆に、例えば目に見えるような良い売り上げが出せてなかったとしても、そこのプロセスに、「Our Mission and Values」が体現できていれば評価の対象になるので、結果だけがすべてという印象を持った事はあまりないです。

そもそもなぜ、従業員をパートナーと呼ぶのですか?

多分いろいろ諸説あるんじゃないかなって思うんですけど(笑)

諸説あるんですか!?(笑)

会社は、社長や株主の持ち物ではなく、働く人たち全員でパートナーとして手を取り合って成長していくんだっていう気持ちを表しているんじゃないかなって考えています。

社内では、役職で呼ぶこともまずないですし、みんな名前で呼び合います。CEOの水口貴文さんとかも「タカさん」って呼んだりとか。

ええっ。そうなんですか!

昨日も入社式だったんですけど、「タカさんありがとうございました!」「(タカさんが)お疲れお疲れ!」みたいな感じでした。

店でも、例えば外部の人との対応では「店長に相談します」という呼び方はしますけど(ふだんは)名前やあだ名で呼ぶことが多いかなと思います。

イチロー選手引退

大リーグ マリナーズのイチロー選手が現役引退を発表しました。引退会見は1時間20分あまりに及び、様々な言葉がありました。

最後のニュースですが、私これが一番びっくりして(笑)どういう意図で選んだんですか?

(私が)新卒採用を担当しているので、就活生とお話する機会が多いんですけど、その中で感じる部分としてぴったりかなと思って選びました。

イチロー選手が会見の中で「プロとして成功した事って何ですか」って質問に「僕、成功って言葉嫌いなんですよ」みたいなことを言っていたんですよね。

成功するかどうかではなくて自分がやりたいならやればいい。成功するからやる、成功しないからやらないって判断してしまうと絶対に後から後悔すると。

人間って成功するかわからない状態でのチャレンジって勇気がいる事だと思うんですけど、自分がやりたい、なりたいという事に対して一歩踏み出す勇気を持ってチャレンジするって、本当に大切な事だなって日頃思っていて。

すごくわかるような気がします。

特に就活生って、大学のセミナーではいろんなことを言われ、ネット見ればいろんなことが書かれていて、何が正しくて何が正しくないかもわからない中で、自分で考えて行動していかなきゃいけない。

そして短い数か月の間に自分の人生で大切な決断をしなきゃいけない。だからこそ就活はすごく難しいな、大変だな、つらいなって感じる期間なんだと思うんです。

ほんとうにそうなんですよ…。

ただ、社会に出て、居心地の良い空間で現状に満足してしまうと成長は止まってしまうと思うので。

今、自分に必要なことは…、10年後の自分はどうなっていたいのか…、自分で考えて、選択していくことを大切にしてほしいなって思います。

そうですよね。考えているつもりなんですけど、迷いますよね。

例えば、大企業とか有名企業に入ることが成功じゃないだろうし、自分が本当に幸せで、生き生きと働ける環境って何なのかなって考えてほしいなって、就職活動をそういう期間にしてほしいなって。

日頃、学生さんと話しているからこそ、自分で考えていくこと、ちょっと怖いかもしれないけど、チャレンジしていくことって大切なんだよってことを、イチローさんの話の中から感じてもらえるといいなと思って選びました。

ありがとうございます。そういうことを考えられる、自分の軸をもつために、学生時代にどう過ごしてほしいですか?

どう過ごしてほしいってところはあまりないんですよね。1つ1つの経験を通して何を学ぶか、何を自分の糧にするかを大切にしてほしいなと思います。

留学、アルバイト、サークル活動って色々あると思うんですけど、何を感じ取って、何を自分の骨にして血にして肉にしてみたいなところを振り返ったりとかね。

失敗しちゃったから次はもうちょっとこうしていこうとか、どんな経験でもいいので、経験を通して何を得るかを大切にしてほしいです。

できるかできないかが問題じゃなくて、これをやってみたい、やりたいっていう意思を持った人に来てもらいたいですか?

そうですね、できるできないではなくて、自分がこうしたい、それを実現する場所がスターバックスなんだって思ってくれる人に来てほしいなとは思っています。

逆の言い方をすると、スターバックスに行けばこうしてもらえる、こう与えてもらえるんじゃないかという受動的な方よりは、自分自身でこうしていくっていう主体的な方を一緒に働く仲間として迎えたいなと思います。

あだ名でお互いを呼び合う話は、びっくりしました。そうしたことが積み重なって、お店の雰囲気を良くして、お客様の満足度アップに繋がっていると思いました!

「Our Mission and Values」に対するスターバックスグループとしての強い一体感を感じました。終始フラットな雰囲気で、この環境が数多くのトレンド商品を生み出し続けられる要因なのだなと思います。