2019年05月08日
(聞き手:田嶋あいか 土井湧水)
調味料や加工食品、アミノ酸など、身近な食品をグローバルに展開している味の素。就活生の人気企業ランキングでも上位の常連です。人事部の福永貴昭さんと児玉悠輔さんが答えてくれた、マストなニュース3本は・・・。
SDGsとは、2015年の国連サミットで採択された2030年までの国際目標。「誰ひとり取り残さない、持続可能で多様性と包摂性のある社会」の実現のために、貧困問題やエネルギー問題の解決など、世界が目指すべき17のゴールが設定されている。
学生
土井
よろしくお願いします。1つめのニュース、SDGsを選ばれた理由を教えてください。
味の素は全世界の130カ国以上の国や地域で商品やサービスを展開しています。
児玉さん
人口の増加や様々な社会課題がある中で、どう地球と共存しながら、世界中の人々のウェルネス(※健康なこころとからだ)を向上させるのかということを強く意識しています。
「健康なこころとからだ」「食資源」「地球持続性」の3つにフォーカスして、事業を通じて社会課題を解決したいと思っています。
福永さん
就活生のみなさんには、ぜひ、自分が社会人になって、どういう社会課題を事業を通じて解決していきたいかを考えてほしい、自分がやり遂げたいこととつながる企業に就職してほしいなと思って選びました。
学生
田嶋
SDGsの達成に向けた具体的な取り組みを教えてください。
例えば、味の素はオリンピック、パラリンピックのスポンサーでもあって、試合前にどのような食事をしたら良いかなど、食事を通してトップアスリートをサポートしています。
その活動を通じて得た様々なデータをもとに、未来のアスリートになるような子どもや学生など生活者のみなさんに、「勝ち飯」として、提案しているんですね。
スポーツ以外でも、例えば、受験生だったら受験当日に何を食べたら良いのか。いかに、勉強の成果を発揮できるようにするか、食事を通して解決していきたいなと取り組んでいます。
そうなんですね。
企業の成長には、売り上げや利益の向上はもちろん大切ですが、中長期的に生活者から支持・信頼されるためには、SDGsに関連するようなグローバルな人類社会における課題を、商品やサービスを通じて解決していくことが重要だと私たちは考えています。
いま、ASV(※Ajinomoto Group Shared Value)と呼ぶ取り組みをグループ全体で推進しています。
例えば、先ほどお話しした「勝ち飯」や、「ラブベジ」と呼んでいる野菜摂取量をあげることで健康なこころとからだづくりをしようといった取り組みなどです。
国内だけでなく、海外でも、近年の経済発展に伴って共働き世帯が増加していることを受けて、日本でいうと生姜焼きのような現地の国のポピュラーな家庭料理を、「Cook Do」のような調味料を使って時短で簡単に作れるようにして、現地の人の食文化を守ることや食生活をより良く豊かにすることに貢献するというのも1つですね。
美味しくすると食欲も増して子供もたくさん食べてくれる、一口だったのが最後まで食べてくれるかもしれない。その結果、どんどん健康になってくれれば良いなと考えています。
世界規模で取り組みをされているんですか?
そうですね。ベトナム、インドネシアなどアジアを中心に取り組んでいます。
例えば、ベトナムでは、栄養改善に2011年から取り組んでいます。ベトナムでは、国民の栄養に対する知識や問題意識が十分ではあるといえず、栄養不足と過剰栄養が社会課題になっていたんです。
この2つの課題を解決するために、我々が持っているアミノ酸の知見を利用して、ベトナム政府関連機関と一緒に、栄養士を養成する制度や地位認定制度などを創設しました。
政府と!
大学で栄養学を学び栄養士を養成して、卒業したら栄養士としての国家資格をもらって職に就けるようにする。それで、その人たちがインフルエンサーになり、どんどん正しい栄養情報を伝達できるようになってもらう。
一方で、目の前の栄養課題を抱えた子供たちに向けては、日本の学校給食システムを応用したプロジェクトを立ち上げて、そこに我々が作っている調味料も取り入れて栄養を改善していく。また、学校給食の関係者に向けては、どうやったら栄養バランスが摂れるか、簡単に検索できる献立作成用ソフトを開発したり、メニューブックや教材を開発・提供しています。
食品業界を希望する就活生のみなさんには、SDGsのニュースをインプットしなければいけないということではなく、食と健康を通じて社会に貢献したいというマインドがあるかないかがすごく重要だと思っています。
そういうマインドがないと、入社後に事業の向かう方向性と自分の夢がマッチしないので、早期の離職や、モチベーションが上がらず成果が生み出せないなどのミスマッチにつながってしまいます。
一方で、そういうマインドがあれば、自ずとSDGs関連のニュースも耳に入ってくると思いますし、ニュースでは取り上げられないものも自分でどんどん調べていけるのではないかと思います。
https://www3.nhk.or.jp/news/special/news_seminar/jiji/jiji7/
※働き方改革について、詳しくはこちらの記事をお読みください。
知っておこう「働き方改革」
働き方改革を選んだ理由を教えてください。
味の素は日系企業の中で先進的に「働き方改革」を推進した企業のひとつだと思います。社員一人ひとりが健康に働けること、かつ社員一人ひとりが自律的に成長出来るような環境や制度を整えたいという思いからやっているんですね。
例えば、就業時間が7時間35分だったのを20分短くして7時間15分になったんですが、時間を短くすると同時に、フレックス制度(※従業員が始業時刻や終業時刻、労働時間を決められる制度)や在宅勤務制度も導入しています。
就業時間が8:15から16:30なんですが、それを前倒しして早く来るから早く帰れるという働き方を選ぶことができますし、逆に、お子さんを送ってから会社に来る人は、業務時間を後ろにずらして、10時、11時に来てその分調整して仕事をすることもできます。
社内で戸惑いはなかったですか?
最初は結構ありました。業務量は変わらないのに、1日20分短くするとなると、年間80時間くらい短くしなければならない。
今までも、いっぱいいっぱいの中で80時間をどうやって生み出せば良いんだと、特にクライアントがある営業組織を中心に戸惑った期間は1年か2年間くらいあったかなと、正直思います。
その中で、社員一人ひとりが自らの業務の棚卸を行い、生産性向上を意識しながら、「やる仕事」と「やめる仕事」を取捨選択しました。加えて、日々の細かな業務でも、PDCA(※Plan:計画 Do:実行 Check:評価 Act:改善 の頭文字を取った言葉で、業務を改善する方法)を意識しながら、取り組みを重要性・緊急性の2つの軸で可視化して、優先順位をつけながら仕事をするようにしています。
なるほど。
何にどれくらい時間がかかっているのか、本当にこれだけ時間をかけるべきなのかを見える化し、上司や先輩社員が丁寧にフォローしながら取り組んでいくことで、総労働時間が年々減っています。
それで、ワーク(仕事)以外のライフの方、趣味や自己研鑽に時間を使えている社員が増えているんです。
私は毎週水曜日16:30に会社を出て、17時には家に着いているんです。
えー!
一緒に家族とご飯を食べることもできるし、「朝昼晩」だったのが「朝昼夕晩」になって、「夕方」っていう時間帯が生まれています。その空いた時間に自己研鑽でビジネススクールに行く人も増えています。
自分が自己研鑽して、次の日からの仕事に生かしたりとか、仲間や社外の友人と飲みに行ってリフレッシュしたり、本当にワークとライフの両方が充実していて、よりイキイキと働けるような好循環になっている状況です。
ただ労働時間を削減するだけではなくて、それを自分の成長につなげるっていうことなんですね。
そうですね。それがより良い仕事・アウトプットを生み出し、イノベーションを起こすんじゃないかって私たちは思っています。
私たちは社員ひとりひとりが生産性向上を意識した自律的な働き方をして、味の素で働くことを通じて働きがいや生きがいを感じてもらうことが「働き方改革」を通じて実現したい姿です。
削減した時間を使って自己研鑽に繋げることで、実際に仕事に生かされることはありますか?
海外の売上比率が高い会社なので、将来海外で仕事をしたいと志望している社員は相対的に多いと思うんですね。英語のスキルとか、あとはマーケティングやマネジメントなどの勉強を自らしていかないと、社内のキャリア競争に勝てないので、そういうことを意識して、自分の時間にあてる社員が多くなっています。
今までの仕事に100%の力を使うのではなく、今までやっていたことを80%、90%の力で達成し、残りの10%、20%で余った力を自己研鑽に使っていくことで、日々、自律的な成長を実感しながら働くことが重要だと考えています。
就活生も、海外のニュースに対して目を向けることは大事ですか?
とても大事だと思いますね。学生のうちから世界の動向に目を向けて、その中で日本はどういうポジションにいるのか、競争優位・劣位はどこにあるのかを意識することは1年後に社会人になるにあたりアドバンテージになると思います。
また、食品業界では、先進国・発展途上国では食シーンが大きく異なるので、そういったニュースに触れることで実際に自分がどの国や地域で働きたいのかを、より具体的にイメージできると思います。
イチロー引退を選ばれた理由は何でしょうか?
イチロー選手が最後の記者会見の中で、「大谷選手や菊池雄星選手にはすごく期待をしている。彼らの成長を見守っていきたい」というような発言をしたのが、我々の会社の風土や雰囲気とマッチしているなと思い、選びました。
イチローさんご自身はもちろんスーパースターなのですが、自分だけではなく、次世代の人達を育成して、自分を超えるような選手が出てくるのがすごく楽しみだとおっしゃっていたんですね。
実は私たちもそうで、社内にも何でもできちゃうスーパーマンみたいな人がいるんです。
その人達に共通しているのが、人財育成(※共に働く社員は最も大切にしているもの、という意味で、味の素では「財」の字を使っている)という観点なんです。
もしかしたら、そのスーパーマンみたいな人が明日急にいなくなるかもしれないですよね。そうなった時に「他の人は誰もできません。分かりません。」では会社は潰れてしまいます。
そうではなくて、もし自分が急にいなくなってしまったり、今の部署から異動した後でも、自分を越える成果を出せるような次世代の人財を育成していくことも日々の業務の中にあると感じています。
そういった意味で人財育成に興味・関心がある人は多いですし、実際にOJT(※On-the-Job Trainingの略称で、実際の職場で上司や先輩が指導すること)以外でも、勉強会のような形で教えてくれる先輩や上司が多いと感じますね。
イチロー選手のような人財が欲しいということですか?
イチローさんは、味の素グループが大切にしている価値観、新しい価値の創造、開拓者精神、社会への貢献、人を大切にする、という「味の素グループWAY」をまさに体現していると思います。
あとは、引退の記者会見で「何かひとつ自分が楽しめるものを見つけてほしい、それで頑張って欲しい」ということを未来の子供たちにメッセージとして残していたんですが、私たちも自分が社会人として何をやり遂げたいのかをすごく大切にしていて、自分が楽しいと思うこと・やり遂げたいことを見つけてもらって、学生時代に培ってきた強みとかスキルとかを、プロフェッショナルな人財としてどう体現していくかを考えて欲しいと思っています。
イチローさんってルーティンを一生懸命しますよね。当たり前のことを当たり前にやるって意外に難しい。
そうですよね。
あんなに高みにある人なのにルーティンをやって、日々、野球選手としてバッターボックスだったりグラウンドに立ったりっていうのを繰り返しされていて、自分が成長していく姿もそうですし、高みを目指していくっていうのも非常に私たちには共感するし、学生のみなさんにも、イチロー選手の生き様を見て「自分は何やればいいんだろう」ということを考えてほしいと思います。
大学生の立場からすると、好きなことがあっても大学との両立が大変で、ひとつのことに集中するっていうのはリスクを感じてしまうんですけど…。
そこはやっぱり両立なんですね。社会人にとっても、ワークとライフってどっちも重要じゃないですか。
そうですよね。
24時間365日という限られた時間の中でどうやっていくか、選択しなきゃいけません。就活もまさに選択なんだと思います。
はい。
その選択をしたからには、ひとつを捨てなきゃいけないかもしれないけど、いかに両立していくかってこともすごく重要なので。
アルバイトも重要、勉強も重要、部活も重要って全部重要ですけど、自分のより良い成長のためには何をやったらいいかっていうのを常に考えてトライして失敗してまたトライしてという、それの繰り返しじゃないでしょうか。
そうですね。イチロー選手のようなプロフェッショナルな姿勢を身につけるために、就職する前の大学生時代に何かしておくべきことはありますか?
アルバイトでもサークルでも勉強でも、「なんで今自分がバイトしているだろう」とか「なんで勉強しているんだろう」っていうことを、1回、就職活動をする前にちゃんと考えることが大切だと思います。
今までの人生を振り返ると、必ず自分の中で大切にしている価値観があると思うんです。そこにしっかり立ち戻ることができれば、何気なくやっている学校に行く、バイトに行くってことも意味付けをして、ひとつひとつが自分の成長につながると思えば、取り組む態度や考え方は大きく変わると思います。
今までどういう価値観を持ってきて、ひとつひとつにどう意味付けをして生きてきたのか、自信を持って語れるエピソードを増やして、かつ深くしてほしいと思っています。
どんな人財を求めていますか?
ASVに共感していただくことと、私たちが創業以来大切にしている味の素グループWay(新しい価値の創造、開拓者精神、社会への貢献、人を大切にする)を体現している人ですね。
味の素グループが掲げるMission,Visionに共感し、周囲の人を巻き込みながら主体的に社会課題の解決に向けた活動が出来る皆さんとの出会いをとても楽しみにしています。