2022年04月05日
不確実な時代にどうキャリアをつくればいいのか?若手社会人や学生は悩んでいますが、若手を迎える上司たちも悩んでいます。このサイトを運営するNHKの管理職自身が専門家にヒントを聞きました。
NHK
関デスク
さっそくですが、今の新入社員の世代をひと言で言い表せる特性ってありますか。
本当にいろんな人がいて、平均値で語れないんです。
リクルートワークス研究所
古屋さん
どんなメディアを見るかとか、職業生活に対してどういうイメージを持っているかとか多元化しています。
リクルートワークス研究所 古屋星斗さん
新卒で経済産業省に入省し、2017年から現職。労働市場の分析と若手社会人のキャリア形成を主に研究。若い社会人へのインタビューも継続して行う。
どうしてもマスコミは「Z世代」などと言ってしまいがちですが、ひとくくりにはできないということですね。
ざっくり例えると、平均付近に集まっているのではなく山が二つある状態なので、平均値にあたる真ん中って誰もいない状態なんです。
「Z世代」と一口に言っても、みんな全然違う当事者を指している可能性があると思います。
なるほど、とはいえ若手のキャリア研究の専門家としてどう分析されているんですか。
「行動の量」と「情報の量」で分けて分析していますが、若い人は「行動の量」によってキャリアの状態が大きく変わっていくと感じています。
キャリアを自分で選択できているかっていう指標でみると、圧倒的な差になることが分かっています。
これは性別とか、都会か地方かとか、企業の規模では偏らないんです。
行動と情報の量がいちばん多い方がダントツなんですけど。
ポイントは「行動の量だけが多い」という層が「情報の量だけが多い」層よりもスコアが高いことです。
情報があふれる社会だからこそ行動が価値を持っていると考察しています。
動く人のほうが最終的に強いっていうのはすごくわかるんですけど、どんな行動ですか。
アクションを起こせている若者を分析すると、共通するのが過去の日常にあった活動なんです。
これを「スモールステップ」って呼んでいるんです。
例えばやりたいことをみんなに話してみる「自己開示」とか、初対面の人でも積極的に会うみたいな小さな他流試合とか、友達に誘われてイベントに行くのも有効です。
はい。
LINEで目的に合わせてグループを作るのも有効で、親指1本でできる小さな1歩。
背中を押してもらう、パワーをもらうというのも大事で、応援してくれそうな場で相談するとか、よく自分を知る人と話すみたいな行動ですね。
あとは目的を持って探る、口コミサイトをググるだけじゃなくて、やっぱり自分から深掘りするということが大事です。
なるほど。
あとは社会人向けのインターンシップとかボランティアとか、情報を獲得しただけで終える人がすごく多いんですけど、まずトライです。
最後に体験を自分のものにする、スマホにメモを残すのでもいいので、振り返りをすることが大事です。
若手を育てると言う観点では、そういった項目に当てはまるような体験をさせるべきということですか。
ここからがけっこう難しい話だと思っています。
自分で能動的にキャリアを作っていく若い人たちがいる一方で、非常に受動的になっている若手がいる。
その間の層がすごい大事だと思っていて、先ほどの図で言うと、能動的でないといけないと思いながらもそれができていないという層がいちばん多い。
はい。
そういう人たちを動かすには「スモールステップ」を起こすためのきっかけづくりをいかに職場ができるか。
そのアプローチは何か若者に教えなきゃならないとか、背中で仕事のしかたを伝えるとか、そういうことじゃないんだろうなって思います。
NHK
中山デスク
具体的に言うとどういう形になるんですか。
ひとつはやっぱり「場づくり」だと思っています。
若手は焦っているんです。
新入社員にインタビューをしていますが、彼らに共通するのは、「この職場にずっといて自分は社会から取り残されないだろうか」という思いです。
そういった気持ちに対して行動を起こせていないとしても、彼らは実は「何か」を持っているんですよね。
なるほど。
だから、そういう何かを解放してあげる場が必要なんです。
「心理的安全性」ということばがありますけども、個人個人が持っているものをきたんなく、ちゅうちょなく解放できるような場が仕事にあればいいんです。
そうですよね。
何か自分がやってみたいと思うことを実際にアクションに移していける場、それを受け止めてあげる、応援してあげるようなコミュニケーションをつくる。
時には動かない人に対して言い訳を提供することだって大切ですよ。
とはいえ若手がどこか職場に対して距離を置くというか、しらけるところある気がして難しいなと。
職場に対する期待というのが、若い方それぞれでかなり違うと思っています。
成長の場として職場を選択する方もいれば、職場はコスパよく稼げればいいという方もいらっしゃるんですよね。
そうなんですよね、なかなかそこが難しい。
社員がその職場に対して何を期待しているのかをまず把握しないと、手の打ちようがない。
成長の場として職場に期待している人を動かすのは簡単だと思うんですよね。
彼らの活動を会社に還元させるような場を作ってあげれば、すごい喜んで発表してくれるわけですよ。
なるほど。
一方で、同じ給料をもらうのであれば、できるだけトラブルの少ない部署に行きたいという人もいますよね。
しかし、会社としては彼らも生産性高く活躍してほしいと思うわけじゃないですか。
はい。
そういった方々も実は9時5時で帰るんだけど、アフター5に人生かけてるみたいな人がけっこういるんですよね。
彼らのモチベーションの源泉は、そういうライフキャリアで地域をもっと元気にしたいとか、自分の目の前にいる人を明るくしたいとか。
そこに今の会社が結びつくような、ジョブアサインが必要になってくるんだと思います。
そういう意味では若手への仕事の振り方って、難しさが1段階上がっているような気がしますよね。
率直に言うと、そこまで丁寧に対応できるだろうかっていう部分もあって・・・
管理職としては、任せられたグループの成果は、トップランナーにやらせておけば見栄えは整うという感じもありますが、人材育成という観点からはそうではないですし。
全くそのとおりですね。
実は若い方が抱えているモヤモヤの源泉というのがあって、「ありのままでありたい」ということと、「何者かになりたい」っていうのが両方あるんですよ。
はい。
何者かになりたい、専門職志向といわれていて、社長になりたいという人は減っていますが、専門職的になりたいという割合がここ数年で非常に伸びているんです。
一方でありのままでいたいっていうのがあって、自分がやりたいようにワークライフバランスをとってしっかり家庭人としても生きていきたい、そういう思考なんですけど。
この2つ、実はすごい矛盾するんですよね。
そうですよね・・・
頑張らないと何も得られないけど、頑張るとありのままであり続けるのが難しいかもしれない。
そういう難しい話ですけど、彼らは就職活動を通じてその2つを同時に語ります。
今後の育成には、これを生かせるんじゃないかと私は思っているんです。
というと、どういうことですか。
すごく手間はかかりますが、「ありのままでいたい」という部分をその職場、仕事に生かしてあげるために、その人たちが何をモチベーションとして持っているのかを追求する。
確かに組織の短期的なパフォーマンスを考えると、できる人たちに任せたほうが楽ですよね、圧倒的に。
ですがそれでは、例えば10年後とか20年後に人材がスカスカになっているかもしれません。
組織を継続的に育てるという意味でも、若手をいかに育てるかっていうのは非常に重要なファクターです。
「何者かになりたい」けど「ありのままでいたい」と、思いが交錯しているような若手に対してどう接していくべきかセオリーみたいなものってあるんですか。
厳しくされるとそっぽ向いちゃうから、優しくするべきとか。
今の新入社員の方々にインタビューをしている中ですごくびっくりしたのは、彼らが職場を「ゆるい」と表現することなんですよね。
具体的に言うと、「大学生の時とあまり変わらない」とか、「上司が自分に対して配慮しすぎな気がする」とか、「かなり気を遣ってもらっているのがわかる」とか。
えっ、そうなんですか?
それって、伝達内容自体を変えちゃってるからなんですよ。
パワハラ的な修羅場のような体験を与えて育てるっていうのが過去のやり方でした。
パワハラが許されないのは当たり前ですが、その時に伝わっていたことって大事なこともあったと思うんですよ。
成長のためのコンテンツは変えないんだけど、コミュニケーションのスタイルを完全に変える。
そういう接し方が必要になってくるんじゃないかなと考えています。
われわれがどうアプローチを変えるかということなんですね。
次回はより具体的に上司はどう若手と向き合えばいいか聞きます・・・が、古屋さんの答えは「管理職はもう若手の手本にはならない!」。どういうことでしょう?
取材・編集:加藤陽平
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