2022年01月07日
「就職するのは大手がいいのか、ベンチャーがいいのか」。就活生なら誰しも一度は話題にしたかもしれません。最初の就職先の規模、どう考えたらいいのでしょう。若手のキャリア研究の専門家に聞きました。
学生
白賀
キャリアを考えるうえで、就活生がよく気にしているのが大手がいいのか、ベンチャーがいいのかという議論なんです。
どちらのほうがいいってありますか。
そういうふうに悩んでいる学生さん多いなと思いますね。
リクルートワークス研究所
古屋さん
でも、これって選択肢が増えたがゆえの悩みでもあります。
選択肢が増えた?
つまり10年前とか20年前だったらベンチャー企業が就職の選択肢に挙がらなくて、そんな疑問すらなかったと思います。
リクルートワークス研究所 古屋星斗さん
新卒で経済産業省に入省し、2017年から現職。労働市場の分析と若手社会人のキャリア形成を主に研究。若い社会人へのインタビューも継続して行う。
ちなみに、2人にとって大企業とベンチャー企業、それぞれいいと思う点って何ですか。
大手はいわゆる安定で、プロジェクトがより大きい傾向があって、ベンチャーは裁量があることかなと思います。
学生
佐藤
私は周りの目を気にしている部分があって、どっちがいいかって聞かれたら、大手のほうがウケはいいかなとか、両親が喜ぶかなとか考えてしまいます。
白賀さんがほぼ答えだと思いますが、私の視点で付け加えると、大きな会社というのはいろんな仕事がありますよね。
だから、「偶発的な出会い」が起こりやすいんですよ。
つまり、自分が想像しなかったけど自分に向いてる仕事とか能力との出合いが起こりやすいのは、大きな会社かもしれません。
なるほど。
例えば日本的な雇用慣行のひとつに、「ジョブローテーション」というのがあって。
「配属ガチャ」なんて言われ方をしてしまうこともありますが、逆に3年くらいで異動できるということは、いろんなものを試せるということでもあるんですよね。
「キャリアドリフト」とも言いますが、特に若いうちはそういう機会を前向きに捉えることもできます。
キャリアドリフト?
つまり、若いうちはそんなにめちゃくちゃ明確に目標を定める、キャリアデザインをするとかじゃなくて。
外部の環境とかに流されながら、自分の出会いを楽しんでいったほうが、その後のキャリアが広がりやすいという考え方があるんです。
なるほど。
一方でベンチャー企業は、そういう意味では比較的1つの具体的な仕事に取り組みやすいですよね。
職種別で具体的に採用するベンチャー企業が非常に多くなってきていますし、明確に自分のターゲット、イメージが定まっているなら、ベンチャーを選んだほうが近道になる可能性が高いです。
そうすると、専門性やスキルを身につけるという意味では、大手のジョブローテーションはあまり向いていないんですか。
専門性を身につける前に、何の専門性を掘り下げるかっていうのが、まずあると思います。
どの専門が自分に向いているかとか、どんな分野なら人よりもちょっと努力できるかとかですね。
ああ、そうですね。
そういうものが見つかると、成長スピードが速いわけですよね。
専門にすべきものを見つけるっていうところも含めると、大企業もベンチャー企業もそれぞれいいところがあるのかなと思います。
じゃあ、実際にファーストキャリアの企業で働いている時って、どういうことを意識したらいいですか。
なかなか難しい質問ですね。
絶対的にこうしろってことはないのですが、自分の掘り下げたいものが明確かどうかというのは、その人のキャリアを完全に変えてしまうので、それによっても違うと思います。
あと、マルチタスクが向いているか、シングルタスクのほうがパワーが発揮できるかというのでも、仕事の向き合い方が全然違ってくると思うんですよ。
例えばやりたいことが明確でなくて、シングルタスクのほうが自分は得意っていうことなら、大きな会社に行って、与えられた仕事に全力を尽くしながらジョブローテーションを楽しむ。
すると、どこかのタイミングで何か見つかるかも知れないので、そういう戦略もありますね。
たしかに。
一方でマルチタスクが得意だけど、やりたいことは明確でないっていう方だったら、例えば自分の会社でやってる仕事だけじゃなくて、副業とか社外の場に顔を出すのもいいですね。
ほかには、目標が明確でシングルタスク型だと、ベンチャー企業みたいなところ、もしくはプロジェクトベースで仕事ができるような企業に入るのが向いてるかもしれません。
じゃあ、マルチタスクが得意で、かつやりたいことが明確な方ってどういう環境がいいんですか。
いろんなやり方があると思うんですけど、具体的な例で言うと、残業なく帰れる本業に就きながら、アフターファイブで自分が本当にやりたいことに取り組むやり方もありますよね。
やりたいことだけでは「食べられない」から、しっかりお金がもらえる仕事と組み合わせる戦略ですね。
私はこの働き方戦略の事を、「ライフ・ライス・バランス戦略」と呼んでいます。
ライフライス・・・
ライスってご飯のことですか?
自分の人生のミッションとライス、ご飯を食べるための仕事を組み合わせてキャリアを作る。
いきなり社会的起業やNPOとかに全力投球じゃなくて、マルチにキャリアを作りながら自分のミッションも達成していこうという方もいらっしゃいますよ。
そうやってキャリアを積む中で、社会人として魅力的かどうかって、どう差がついてくるんですか。
ちょっと前までは、例えば入った企業の大きさで差がつくみたいな話もあったんですけど、正直そんなところでは全然差はつきません。
また多くの情報を集めるかどうかも大きな問題ではありません。
めちゃくちゃ大きな影響を与えているのは行動の量なんですよ。
行動・・・
今までとは違う場に出てみるとか、新しく何か企んでみるとか、そういう行動によって非常に大きな差がその後ついてくる。
小さいアクションなので、一気に大きな差がつかないんですが、積み重ねが10年後には大きな変化になるんです。
なるほど。
そういうアクションの場って今までは企業が決めてくれていて、企業が決めた仕事をこなせば出世できて、幸せになれたんですよ。
でも、そうではなくなった中でどうするか。
昔に比べれば労働時間も減ってきていて、余力があるわけです。
その時間を使って何かやってみる人と何もしない人との差が、ネットワークの多さスキルの大きさ、高さ、そういったものに直結してくるわけですよね。
なるほど、そうすると若い人のキャリア設計ってどうあればいいんでしょうか。
変化を楽しんでほしいです。
皆さん激動のさなか、コロナショックの中で就職活動されてきたわけですよね。
もう変化しない状態がないという時代に入ってきてると思うんですけど、まずは変わるということを楽しんでいただきたい。
楽しむ。
変化が多い時は若い人が有利なんですよ。
なんでかって言うと、これまでの成功の法則とか成功体験、年上の人たちが築き上げてきたようなセオリーが通用しないんです。
そういう意味では皆さんのほうが圧倒的に有利な時代に入ってきています。
次回は、転職について聞きます。「転職は当たり前」なんて言う人もいますが、キャリアのためには転職すべきなのか、本当のところを聞きます。
編集:加藤陽平 撮影:田嶋瑞貴
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